先週12月13日から15日にかけて行われた第2回 住宅・都市イノベーション総合展を訪れた。
今回の印象として利便性や快適性を目指すスマートホームより、ZEB/ZEHゼロエネルギーやエネルギー管理、ビルの一元化やセキュリティといったソリューションがメインだった。さらに、電気自動車の普及に伴い、EV専用の充電器スタンドを提供しようとする企業も増えていた。
ダイワハウスのスマートホーム環境整備
ダイワハウス工業株式会社は経済産業省や三菱総合研究所から委託を受けて、「AIxIoT」取り組みを実施している。ダイワハウスは顧客に好きなIoTデバイスを繋げるため、環境整備を進め、様々な企業と積極的に連携する方針だ。それから、ライフシーンコンサルティングによってAIやIoTを活用する利便性の高いサービスを提案するという。さらに、このようなサービスのセキュリティを確保するため、専業メーカーと協業し、「情報セキュリティ仕組み」を取り入れるなどのリスクマネジメントサービスを提供していく。この取り組みでECHONET通信プロトコル、myThings API連携サービスと総合Web APIを使う方針だ。
大林組のオフィス向けサービスと街レベルのスマート化
総合建設会社大林組はIoTとAIを使ったオフィスビル向け新しいサービスを紹介した。
今年の8月に竣工したオフィスビルにスマートビルマネージメントシステム「WellnessBOX」を導入し、その取り組みを展示会で紹介した。「BIMWill(ビルウィル)」という情報統合プラットホームはビルのあらゆるセンサーデータ、空調データなどを収集し、可視化する。外部にいながら、スマートフォンを使って、快適な照明を設定できる。社員証にビーコンが付いているため、オフィスにいる時「熱い」、「寒い」などの報告をビーコンの位置情報とともに発信できる。
報告を受けて、システムは空調などを個人の好みに合わせながら、全体的に最適化と省エネを実現するという。また、同システムを使い、トイレブースの空状況や洗浄期間を確認できるという。このように歴史データを集めて、トイレブースは空いている時に洗浄を設定し、混雑を防ぐ。
また、「WellnessBOX」は各スタッフの行動を管理し、健康を促すため休憩所などに誘導できるという。
セキュリティを考慮しているため、防犯カメラは自動的に違法行動を検知し、報告することによってスタッフの見回り回数を削減できる。上記のシステムにさらにAIを導入することによって、AIは個人の好みを学習し、毎日設定をせずにいつも快適な環境で仕事することが可能になる。
大林組はビル・レベルだけでなく、街のレベルでもスマート化を目指す。2018年3月横浜にに街びらきするスマート・タウンTsunashimaSST (Sustainable Smart Town)に同社のSCIM (Smart City Information Modeling)プラットホームを導入する予定だ。SCIMはBIM概念をまち規模に拡大されたプラットホームであり、まち全体の3D モデル作成の他、情報の一元化・見える化、リアルタイムでの状況把握と最適化を実現できるという。
住宅や都市に関する総合展であるため、車両管理、スマート家電やスマート建材ソリューションの展示もあった。
センコーの建材ソリューション
センコー株式会社は独自の建材や住宅物流問題解決用のTGC-Jというソリューションを紹介していた。ドライバー所有のスマホアプリをGoogle Mapと連携し、物流センターの従業員は車両の位置情報や号車毎発送指示情報を確認できるようになった。また、ドライバーは現場の写真を撮影し、ウェブにアップすることで納品部材や現場状況を把握と記録する。簡単ながら、この取り組みによって施工現場に至るサプライチェーン全体を最適化できるという。
NTT都市開発ビルサービスの窓清掃ロボット
NTT都市開発ビルサービスは中国Ecovacs Robotics社製のWinbotという窓清掃ロボットを展示した。
同ロボットは窓の形に合わせて最も効率的な経路を選択し、静音で窓ガラスの清掃ができる。同ロボットは空気を吸収し、窓ガラスに張り付いて、窓の片面を掃除するという仕組みである(しかし、平らな表面はマストですりガラスで使用不可能だそうだ)。
もし、電源が切れた場合、ロボットは内蔵されたバッテリーで15分間ほど窓に張り付いて落ちないように設計されている。
オフィスビルでよく使われている大型窓ガラスの内側を掃除できると、一部の人件費をコストダウンができるという。
現在のバージョンは室内用であり、コードがついているが、コードなしで安定するタイプが出たら、窓掃除が飛躍的に変わる言っても良いかもしれない。
東芝のIoTアーキテクチャ SPINEX
東芝インフラシステム社と東芝デジタルソリューションはSPINEXという東芝のIoTアーキテクチャー、Smart eye sensor multiやコミュニケーションAI RECAIUSを展示した。
同社のデジタル・トランスフォーメーションに関するビジョンは、デジタル化を経て、サービス化に進歩するという。
デジタル化のメイン・ステップは見える化と最適化である。
サービス化を目指す企業がデジタルツイン作成により自動化や自律化(AIがダイナミックにルールを生成し、状況や環境変化に対して自律的に対応する)というステップを実施しなければいけないという。
このようなステップを実現するために、SPINEX上でデジタルツインを作成、エッジコンピューティング機能、アナリティクスAI(ディープラニング)とコミュニケーションAIが利用可能である。
東芝デジタルソリューションが提供している見える化と遠隔監視サービス用のIoTスタンダードパックではクイックスタート、エッジコンピューティングや直感的なインターフェースが重視された。
Smart eye sensor multiは画像認識技術を用いる人勧センサーであり、9mx9m範囲で微細な動きと照明を検知できる。
また、おおよそ人数と活動量を推定できるため、そのデータを制御に活用可能だ。例えば、空調や照明と連携し、人が多い・少ないによって適切に冷暖房と照明を調整できる。また、エレベーターホールで同センサ―を設置すると、混雑度に応じてかごを優先的に割付け、待ち時間の短縮できるという。
さらに、防犯・防災システムと連携し、火災発生エリアと警戒モードエリアで動態を検知した場合、静止画像を監視端末に表示する。
ダッソーのマルチユーザVRソリューション
AR/VRソリューションを紹介している企業もあった。Dassault SystemsはマルチユーザーVRによるバーチャル市長室での都市計画などの共同作業ができるトいうソリューションを展示した。
株式会社EoglanzはスマホでできるVR体験を住宅営業のサポートに使える「Walk in home」ソリューションを紹介した。
旭硝子のHalio スマート調光ガラスシステム
最後に紹介したいのは旭硝子株式会社のHalio「ヘイリオ」スマート調光ガラスシステムである。
ビルディングオートメーションシステムに接続できる他、キーパッド、スマートフォンアプリやIoT機器で操作できるという。
同システムは窓ガラスから入る光と熱を調整するために開発され、まぶしい日差しや日射熱を遮断できるという。
また、オフィスなどで同ガラスをパーティションとして使い、必要な時にダークステージに切り替えて、プライバシーを保護できるという。独自開発のマイクロサーキット技術を使っているため、クリアステージからダークステージの調光は3分以内で実現できる。
また、温度センサーなどのIoT機器と連携し、温度や天候の変化、時間帯に合わせて自動調光が可能だ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。