IDC Japan株式会社は、世界全体の3Dプリンティング市場の支出額予測を発表した。最新のIDC Worldwide Semiannual 3D Printing Spending Guideでは、2019年全世界の3Dプリンティング(ハードウェア、造形材料、ソフトウェア、サービス)の支出額は前年比21.2%増、約138億ドルに達するとしている。そして、5年間の年間平均成長率(以下、CAGR)を19.1%、2022年には支出額が全世界で約227億ドルとなると予測している。
3Dプリンティング支出額の大部分は3Dプリンターハードウェアおよび造形材料の支出で、2019年の支出額はそれぞれ53億ドルおよび42億ドル。この2つのセグメントを合算した支出額は、5年間の予測期間を通じて全支出額の3分の2以上を占める見通しだ。
次に大きいのは、38億ドルの3Dプリンティングサービスである。そして、オンデマンドパーツサービスおよびシステムインテグレーションサービスが続く。成長率が高いのは、造形材料およびソフトウェアのセグメントで、5年間のCAGRは、それぞれ20.3%および17.1%で、市場全体の成長率を上回る。
3Dプリンティングへの支出額が最も多い産業分野は組立製造業で、予測期間を通じて全支出額の半分以上を占める。2番目は医療サービス関連で、2019年の支出額は約18億ドルだ。そして、教育(12億ドル)、専門サービス(8億9,800万ドル)が続く。
一般消費者の支出額は6億4,700万ドルで、総支出額の5%未満である。なお、2022年にはプロセス製造分野が一般消費者セグメントを追い抜き、全体の5番目になるとIDCは予測している。予測期間中に最も急成長する産業分野は、医療(29.8%のCAGR)および交通運輸(28.3%のCAGR)だという。
3Dプリンティングの主なユースケースは、プロトタイプ、補修用パーツ、新製品用パーツだ。この3つは、組立製造業における上位ユースケースであり、2019年時点では、これらのユースケースが全世界の支出額の43%を占めている。
今後、医療サービス分野の支出増加に伴い、2022年には歯科用造形物および医療補助用造形物がそれぞれ4番目と5番目に大きいユースケースになる。その次は僅差で専門工具だ。今後最も急成長が見込まれるのは、医療サービス分野のユースケースで、人工細胞/人工臓器/人工骨(42.9%のCAGR)および歯科用造形物(33.1%のCAGR)だ。
米国IDC Customer Insights & Analysisリサーチマネージャーであるマリアン・ディーアクィラ氏は「3Dプリンティングのユースケースが、製造業のプロトタイプ製作に限られていた初期の時代を過ぎ、多くの産業分野で急速に普及し始めている。そして、3Dプリンティングの費用対効果や、カスタマイズ造形物の利点が、様々な形で実感されるようになってきた。こうしたことが、製造業における補修用パーツ、医療における外科用モデル、専門サービスにおける建築設計支援といったユースケースの支出増加につながっている」と述べている。
また、米国IDC Hardcopy Peripherals & 3D Printing リサーチディレクターのティム・グリーン氏は「2018年、3Dプリンティング技術には進展が数多く見られた。急速な高速化に加え、造形材料の進歩によって、製造業の幅広い分野で3Dプリンティングを応用することが可能になりつつある。こうした利点を認識するユーザーが増えるにつれて、プロトタイプ製造やツール製造だけでなく、最終製品の製造といった新しい分野への3Dプリンティングの利用が広がってきている」と述べている。
2019年、合計支出額が最も多い地域は米国(約50億ドル)となる見通しだ。そして、次が西ヨーロッパ(36億ドル)、中国(約20億ドル)の順である。5年の予測期間で、最も急成長が見込まれる地域は、中南米(25.3%のCAGR)および中国(21.6%のCAGR)。なお、世界全体9つの地域のうち5つは、20%以上のCAGRとなるとIDCは予測している。
Worldwide Semiannual 3D Printing Spending Guideでは、世界9つの地域の20の産業分野で、15のユースケースに基づく3Dプリンティングの支出額データが提供されている。また、支出額を3Dプリンティング用ハードウェア、造形材料、ソフトウェア、サービス等に分割して分析することが可能だ。
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