IBMは本日1月27日、最新のIBMスタディ「IBMグローバル経営層スタディ CEOの視点:破壊者との競争と共創」を発表した。
同スタディでは、CEOは新たなテクノロジーによるビジネスの変革に焦点をあて、顧客やパートナーとの関係性の再定義に取り組んでいることを示している。これは、CEOにとって、新たなビジネスモデルの構築や、新たな「エコシステム(ビジネスの生態系)」形成の機会が広がっていることを意味している。
今後3-5年でビジネスを変革する重要テクノロジーとして、先進的なCEOの半数がコグニティブ・コンピューティングを挙げている。この割合は、マーケットフォロワーのCEOより19%多く、今回調査した経営者全体の回答に比べても35%多い結果となった。
一方で、クラウドやIoTについては、先進的なCEOは、それらを既に採用しており、今後の重要テクノロジーとしては、あまり強調していなかった。対照的にマーケットフォロワーのCEOは、その重要性をまさに強調しはじめたところだった。
今回のスタディをリードしたIBMコーポレーション グローバル・ビジネス・サービス事業本部のIBM Institute for Business Valueのリーダーであるピーター・コーステン(Peter Korsten)は次のように述べている。
「テクノロジーの進歩が創造的破壊を巻き起こし、業界という概念が消滅し、そして、新たな『エコシステム』が興隆して市場全体を変革する。多くのCEOはそう考えています。そして、今回のスタディで明らかになった先進的なCEOの考えから、このような事業環境にどう適応するかについて、示唆を得ることができます。」
2015年11月発表の「IBMグローバル経営層スタディ 全体レポート:境界線の再定義」では、ほとんどの経営者が、業界の外から参入してくる想定外の競合が、既存の業界秩序を破壊することを、重要な脅威として認識していることが分かった。今回の「CEの視点」から、CEOは、特に強くこの脅威を認識していることが示される。
CEOの60%は他業界から参入する競合との競争が激化すると認識している。これは、2013年の調査結果よりも50%増加しており、また今回調査した経営者全体の54%と比較しても高い結果となった。そして、CEOの69%が「エコシステム」の中で新たな役割を担うことを検討している。
「最大のリスクは他業種からの参入である。他業種に対抗する手段は二つある。一つめは、自社がその潮流に乗り、その中で重要な役割を担うこと、もう一つは特化した能力を磨き続けることである。」マネックスグループ株式会社代表執行役社長CEOの松本大氏はこのようにコメントしている。
先進的なCEOは、特に破壊的イノベーションに注目しており、その58%が、自社に関連する破壊的イノベーションの動向に注意していると回答した。他方、マーケットフォロワーのCEOでは44%だった。
先進的なCEOは、テクノロジーを活用して、新製品・新サービスを展開するだけではなく、自社を企業として「作りかえる(Reinvent)」ことを目指している。
先進的なCEOは、顧客層の見直し、新たな地域市場への参入、そして新たな流通チャネルの開拓といった、外部との関係性の再構築に、きわめて積極的だ。
今回のスタディから、新たなトレンドの識別、顧客との関係性の深化、新市場への浸透を実現するにあたって、予測分析(Predictive Analytics)やコグニティブ分析の有効性が示唆されている。来るべき創造的破壊の時代で勝ち残るためには、これらを活用することが求められている。
また、先進的なCEOは、その100%が、事業パイロットやプロトタイピングなどの実験的な取り組みを実行していると回答したが、マーケットフォロワーのCEOでは66%だった。
「新サービス開発のサイクルをもっと短くしたい。トレンドをキャッチしてから、すぐにプロトタイプを創り、お客様の声を活かし改良を重ねていく。そのような展開方法に見直していく」と、ヤマト運輸株式会社代表取締役社長である長尾裕氏はコメントしている。
先進的なCEOは、企業を変革するための投資は、回収に時間がかかると考えています。先進的なCEOの68%が、イノベーションへの投資が利益に貢献するまで3年以上待つ覚悟であると回答したのに対し、マーケットフォロワーのCEOでは57%だった。
イノベーションに対して長期的投資を行い、それと並行して、迅速な実験やプトタイピングを活用する。この戦略を採用するCEOが経営する企業は、他社に「さきがける」ことができるだろう。そして、CEO自身も優れたリーダーとして認知されるようになるだろう。
【関連リンク】
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