全国約3.9万学校所在する初等中等教育機関で、教育活動への利用を目的としたICT環境を整備する上で、校内LAN配線は費用面及び学校の統廃合等の計画面で大きな負担となっている。2019年6月25日に文部科学省が「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」を公表し、2025年度まで児童・生徒に対する学習用端末を1人1台利用出来る環境の整備を掲げた。
このほど、青森県弘前市教育委員会(以下、教育委員会)、丸紅情報システムズ株式会社(以下、MSYS)は、次世代Wi-Fi規格ワイヤレスメッシュ技術を活用した文教分野における実証事業を開始しており、2020年3月31日まで行う。
次世代Wi-Fi規格であるワイヤレスメッシュ技術を活用することで校内LAN配線を必要最小限に抑え、限られた予算を他のICT環境整備へ割り当てることが可能となる。また、学校の建築時期や校舎の形状によらない柔軟な無線LAN環境を整備出来ることから、地域防災等への活用も期待されている。同実証事業では、このワイヤレスメッシュの有効性を、両者が連携して検証する。
具体的には、弘前市立千年小学校を同実証事業のフィールド校として認定し、次期学習指導要領を見据えた実践を日々の授業で行う。学習者用端末や大型提示装置等の実践に必要なICT機器は、教育委員会で整備した物を利用する。ICTの活用場面ではNHK for Schoolやクラウド型デジタル教材等のインターネット上のコンテンツを利用し、同実証事業で整備する次世代Wi-Fi規格ワイヤレスメッシュ技術により提供される無線LAN環境下での活用事例を積み上げる。
教育委員会では同実証事業を踏まえて市内の小学校・中学校におけるインフラ環境の検討を行うとともに、校内LAN整備等の他自治体に展開可能な検討要素は積極的に公開する。
MSYSは、同実証事業で整備する次世代Wi-Fi規格ワイヤレスメッシュ技術を搭載した無線アクセスポイントを提供する。同社の無線LANに係る国内外の最先端事例を共有することで、潜在的又は顕在的を問わず、文教分野との親和性の高い製品やソリューションで教育ICT環境整備の展開を支援する。
併せて、同社のネットワークインフラの技術・知見を活かし、教育委員会に係るLAN/WANを俯瞰した最適化に必要な技術的な課題の抽出と解決策の検討を行う。また、同実証事業で検討した内容を広く知らしめるべく広報活動を行い、他自治体へ展開出来る内容は積極的に公開する。
同実証事業で検証する内容は以下の通り。
- 整備する機器の性能検証
Extreme NetworksのWiNG AP-7632を採用し、文教分野における高密度かつ大容量の通信に耐える性能を有するか検証する。また、次世代Wi-Fi規格ワイヤレスメッシュ技術を用いたホップ通信(アクセスポイント間の無線通信)の多段数を検証する。 - ワイヤレスメッシュ技術を用いる事による経済合理性の検証
ワイヤレスメッシュ技術により校内LAN配線の整備を最小化することで、従来の無線アクセスポイント設置に伴う整備費(校内LAN配線及び無線アクセスポイントの設置工事費)が、どの程度軽減されるか検証する。 - LAN/WANの通信技術要件の検討
ワイヤレスメッシュ技術により整備された無線アクセスポイントにより従来のLAN/WAN構成に変化があるのか、最適化されたLAN/WANネットワーク構成が何かを検討する。特に、教育用ネットワークのあり方や必要な技術要件を中心に検討する。 - 展開モデルの検討
同実証事業の結果を踏まえ、全国の初等中等教育機関等で校内LAN配線の整備を検討する自治体に対して学校数の規模や校舎の形状等により簡易な導入モデルケースの展開モデルを提供する。
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