日本電信電話株式会社(以下:NTT)、シダックス株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下:NTT Com)、NTTソフトウェア株式会社の4社は、2016年3月より約2カ月間、NTTが保有する「レーザガスセンシング技術(※1)」とクラウド環境を利用して食材の産地を推定し結果をリアルタイム通知できるシステムの評価実験を実施する。
同実験では、NTTが保有する「レーザガスセンシング技術」を利用して食材の産地を科学的に推定するとともに、クラウド上でのデータの蓄積・処理・結果閲覧のリアルタイム化を図り、実際の流通過程において同技術を取り入れた場合の産地推定にかかる時間や費用など、一連の流れを検証・評価することを目的とする。
今後は、産地の確実な食材データの収集を行い蓄積データの充実を図り、クラウド環境上でのデータ処理による産地推定精度を高度化し、産地推定システムの実用化を目指すという。
共同実験の取り組み背景・目的
これまでのTPP(環太平洋経済連携協定)の動向を捉え、今後、農産物の輸出入が活発化することが想定される。消費者は、海外の食材を安価に入手できる反面、生産地が保証された食材を購入したいという意識がより高まることが考えられる。食材の流通過程の中でその生産地情報をより確かなものにするために科学的検査を組み込むことは有効な手段と考えられるが、検査期間に時間を要することから難しい状況となっている。
そこで、NTTは、これまで光通信分野で培ってきた高性能なレーザ光源技術を利用した高感度で高分解能なガスのセンシング技術を食品分野へ適用し、短い時間で食材に含まれる元素の安定同位体比を測定し産地を推定する技術開発を行ってきた。
同実験では、このNTTが保有する「レーザガスセンシング技術」により、食品の産地情報を推定する時間の短縮化を図り、任意の場所からリアルタイムに産地推定の結果を閲覧できるシステムを構築し、本技術を実際の流通過程の中で組み込んだ場合の一連の流れを検証する。さらに、安定した産地の食材に対する測定を重ね収集したデータの分析を通して、産地推定精度を評価する。
また、シダックスは、この共同実験に自社で調達した食材供給を通じて協力することで、ソーシャル・ウェルネス(健全・健康な社会)の実現をめざしていく。
共同実験の概要
安定的な産地の食材を提供しているシダックスがNTT厚木研究開発センタの社員食堂で使用している食材の中から、利用頻度の高い食材である「野菜」に対して、NTTソフトウェアがレーザガスセンシング技術を用いて「安定同位体比の測定(※2)」を行い、収集データから産地推定を行う。
また、測定データを産地情報と関連づけて産地推定精度を評価すると共に、NTT Comのグローバルクラウドサービス「Enterprise Cloud」上のデータベースに検証データを蓄積する。さらに、測定データから推定した産地を、どこからでもリアルタイムに閲覧・確認できる環境を構築する。
各社の役割
NTT:レーザガスセンシング技術を利用した食材の産地推定精度の評価。
シダックス:実際の流通工程の中における安定的な産地の食材の提供。
NTT Com:食材のデータを蓄積するためのクラウド環境の提供。
NTTソフトウェア:測定および結果の統計処理とシステム全体の検証・評価。
※1:「レーザガスセンシング技術」
ガスにレーザ光を照射すると、ガスによる光吸収が生じる。吸収波長と吸収量を調べることで、ガスの種類や濃度を調べる技術。NTTが光通信分野で開発した高性能なレーザ光源を利用することで、高感度、高分解能な分析が可能。
※2:「安定同位体の測定」
水素や酸素など同じ元素でも、同位体と呼ばれる質量数(原子の重さ)の異なる原子が存在する。動植物が取り込む安定同位体の比率は、地域等によって異なることが知られており、その比率を正確に調べることで産地推定等に利用されている。
【関連リンク】
・NTT
・シダックス(SHiDAX)
・NTTコミュニケーションズ(NTT Communications)
・NTTソフトウェア(NTT Software)
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