2020年1月9日、世界76カ国で旅行保険などを提供しているアリアンツ・パートナーズグループが「THE FUTURE TRAVEL EXPERIENCE」と題したレポートを発表した。
そのまま日本語訳すると「未来の旅行体験」となる通り、同レポートは、今から20年後となる2040年までに旅行業界全体にどのような革新がもたらされるか、その展望を示している。
「THE FUTURE TRAVEL EXPERIENCE」の抜粋
- 仮想現実、拡張現実による旅行体験
- スムーズなチェックイン
- ホテルのソフトウェアアシスタント
- 旅先の3Dプリンターで印刷される洋服
- 列車の高速化
- 持続可能なクルーズ
- 通常の目的地として選択される宇宙
2040年には、バーチャルリアリティ技術により、自宅の部屋からでも、バーチャル上のホテルに足を踏み入れることができるようになる。また、ホテルだけでなく、街のお祭り、博物館、レストランを歩き回ることもできるようになる。そうなると、バーチャル上での体験に満足してしまい、実際に旅行に出かけることの足かせになりそうだが、同レポートは、あくまでも旅行への欲求を刺激すると予想している。
2040年には、顔認証により、旅行者は顔をパスポートや搭乗券として利用できるようになる。もっとも、現在既に顔認証を導入している空港はあるが、今後は空港だけでなく、駅など、広範にわたって利用されるようになるという。
2040年には、高級ホテルを除いて、ビジネスホテルのような割安なホテルはチェックインが自動化され、部屋の案内もソフトウェアアシスタントによって行われるようになる。一部のホテルでは、宿泊客の荷物を運ぶロボットも提供される。
2040年には、宿泊客はホテルに到着する前に、自身の体の寸法をホテルへ送信することができるようになり、到着と同時に、重たい、かさばる衣服やレインコード、靴などが「印刷」されているようになる。宿泊客は衣服を持ち運ぶ必要がなくなる。また、3Dプリンターで印刷された衣服などは、低コストで作成されたものであるため、宿泊客は持ち帰らない。置いてかれた衣服などは地元でリサイクルされるようだ。
2040年には、国境を超えた列車の旅が改善され、世界の多くの地域でスムーズな移動が実現する。コンピューターネットワークとIoTが、国内および国際的な鉄道網を管理し、列車をより速く運行できるようにするようだ。なお、高速列車のほとんどが時速200キロを超える速度で走行するようになる。
2040年には、クルーズ船は温室効果ガスをほとんど排出しない液化天然ガスを動力源とするようになる。そのため、世界を旅するには、クルーズ旅行が最も環境に優しい方法となる。くわえて、クルーズ旅行の目的地の範囲がさらに拡大していくようだ。特にアジアが「肥沃の土地」であるとされている。
2040年には、裕福で恐れ知らずな旅行者にとって、旅行の目的地を探すのに、世界は充分な選択肢を持たないとったことが考えられる。その時までには、彼らは宇宙から地球を眺める体験を求めて、月に定期的に出入りするようになっている。場合によっては火星も旅行の選択肢となりうるようだ。
既にある仮想現実などを用いた旅行体験の取り組み
2040年の未来の旅行体験レポートに記載されていることのいくつかは、それを実現するような事例が出てきている。たとえば、「仮想現実、拡張現実による旅行体験」については、JALが既に取り組んでいる。
JALは2019年3月に「Try on trips」をコンセプトに、xR(VR、AR、MRの総称)技術を活用したバーチャルツアー体験を実施することを発表した。プロダクトの名前を「JAL xR Traveler」と言って、視覚、聴覚に加えて、嗅覚(現地の匂い)や触覚(送風装置や歩行器を活用)を刺激し、没入感のある体験を実現する。
なお、同プロダクトは、2019年3月末~12月末の各イベントで出展された。
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。特にロジスティクスに興味あり。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。