経産省、「第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会」の報告書を発表

経済産業省は、第四次産業革命に対応した企業の戦略とそれを支える知財制度・運用の在り方について、「データの利活用」、「産業財産権システム」、「国際標準化」の3つの観点から総合的に検討し、報告書を取りまとめた。

センサ等から集積されるビッグデータや、人工知能(AI)による創作物などの新たな情報財について、利活用の促進と保護とのバランスがとれた知財制度の構築が求められている。また、「知財」と「標準」に、新たな競争力の源泉として加わった「データ」を合わせた、三次元の複合戦略の立案も求められている。これに対応した制度・運用の在り方を検討するため、平成28年10月に学識経験者、産業界等の有識者からなる「第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会」を立ち上げ、検討を進めてきた。

これを踏まえ、現状と課題を整理し、今後の対応等をまとめた報告書を取りまとめた。同報告書で示された今後実施することが適当な取組のポイントは以下のとおり。

  1. データの利活用について
    • 不正な手段によりデータを取得する行為等に対し損害賠償や差止請求を行えるようにすることなど、不正競争防止法の改正も視野に入れて引き続き検討を行い、方向性を取りまとめること
    • データの種類に応じ、企業間におけるデータの利活用や契約の実態に即し、保護の在り方や契約等のルールについて検討し、契約で利用権限を適正かつ公平に取決め、明確化するための契約ガイドライン等を策定すること
  2. 産業財産権システムについて
    • 特許の対象となるデータ構造について、権利取得の予見性を高めること
    • IoTを活用したビジネスモデルを支える知財システムの整備の観点から、ソフトウェア関連発明の審査基準の点検、ビジネス関連特許の活用方法の整理、新設した特許分類の活用及び分野横断的な審査体制の整備を行うこと
    • 国境をまたいだ侵害行為に対する権利保護については、裁判例の蓄積等を注視しつつ、引き続き検討をすること
    • 将来的なAIによる発明等の産業財産権上の取扱いや、3Dプリンティング用データの産業財産権上の取扱いについては、現時点では、現行法による保護を行い、今後の動向を注視すること
    • 標準必須特許をめぐる紛争を対象とし、特許法の改正も視野に入れ、行政が適正なライセンス料を決定するADR制度(標準必須特許裁定)の導入を検討すること
    • ライセンス契約や特許権侵害紛争を対象とし、中小企業等が使いやすいADR制度(あっせん)について検討すること
  3. 国際標準化について
    • 「新市場創造型標準化制度」の活用や国立研究開発法人の更なる活用による業種横断プロジェクト組成の検討等により、官民の標準化体制を強化すること
    • 「標準化人材を育成する3つのアクションプラン」等に基づき、経営層の標準化に対する理解の増進や標準化専門家及び標準化を支える弁理士等の専門人材の育成等の標準化人材育成の取組を強化すること
    • 標準関連業務に関与する知財に関する専門家としての弁理士の役割を明確化すること

上記の他、個別産業分野及び中小・ベンチャー企業等の視点からの現状と課題、今後実施することが適当な取組が示されている。詳細は、こちらの検討会報告書の概要PDFを参照。

今後は検討会で得られた成果を踏まえ、産業構造審議会等で、有識者や産業界等と更に意見交換を進め、政策の具体化に向けて検討を進めていくとしている。

出典:経済産業省ウェブサイト

【関連リンク】
経済産業省

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