株式会社ispaceは、本年12月13日、株式会社産業革新機構、株式会社日本政策投資銀行、株式会社東京放送ホールディングスなどの新規株主を引受先とする第三者割当増資を完了した。資金調達総額は、今後新規株主による追加投資と合わせて、12月末時点で総額101.5億円となる。
今回の資金調達により、ispaceは月着陸船による「月周回」と「月面着陸」の2つの月探査ミッションを始動させる。
ispaceが開発する月着陸船を2020年末までを目途に2回打ち上げ、Mission1として2019年末頃に月周回軌道へ投入して軌道上からの月探査を、Mission 2として2020年末頃に月面に軟着陸して月面探査ローバーで月面探査を行う予定だ。
2040年には、月に1,000人の人が住み、年間10,000人が訪れ、建設、エネルギー、鉄鋼、通信、運輸、農業、医療、そして月旅行など、月の「水資源」を軸とした宇宙インフラが構築されることが見込まれている。
ispaceは、その宇宙インフラが地球で住む人々の生活を支え、地球も月も含めて宇宙全体がエコシステムとなる持続的な世界の実現を目指している。
水資源は、生物の生命維持や植物の植生に必要不可欠な要素であることに加えて、水素と酸素に分解すればロケットの燃料になる。
月で水資源を確保することができれば、将来月面で人間が暮らすための重要な資源になるほか、月でロケットの燃料を補給してから火星や小惑星などのさらに遠い天体に向かうこともできる。
月が燃料補給基地として機能することで、地球から打ち上げられるロケットの燃料量が削減され、莫大な打ち上げコスト削減や燃料重量分のペイロード(貨物)の搭載が可能になる。
ispaceは、月の水資源が宇宙へのヒト・モノの輸送の在り方を変え、人類が宇宙で生活する未来を速める重要な鍵と考えているという。
今回発表された2つのミッションは、月の水資源を軸とした宇宙インフラの構築に必要となる物資の月輸送と、資源を含めた月面探査の技術を確立する出発点となるものだという。
月面への着陸は、人類の歴史でも未だアメリカ、ロシア、中国の3つの国による国主導のミッションでしか実現されていない高度な技術だ。
ispaceは、Mission1&2を新しい技術に挑戦する研究開発と位置付けており、同じ設計の月着陸船で、2019年末に「月周回軌道への投入」と、2020年末に「月面への軟着陸」の2段階に分けて実行。
Mission1では月の周回軌道に確実に投入することを確認し、そこで得られたデータや経験をMission2の月着陸船の設計にフィードバックすることで、月面軟着陸に必要な技術を着実に確立していく計画だ。
また、この月着陸船には総重量30kgのペイロードが搭載可能。30kgのペイロードには、ispaceが新たに開発する小型軽量な月面探査ローバー2台も含まれ、この月面探査ローバーにもそれぞれ最大5kgのペイロードを搭載可能とする予定だ。
これらの月着陸船と月面探査ローバーのペイロードスペースを活用して、各国の宇宙機関や研究機関、大学、民間企業などに向けて月への物資輸送サービスを提供。
月着陸船または月面探査ローバーにペイロードを搭載できることで、サイエンスのための研究機器や技術開発のための試験機器などを実際に月周回軌道上または月面で試験することができるという。
さらに、月周回と月面着陸ミッションで撮影する月周回軌道上や月面上の画像や映像をはじめ、放射線量・月資源・月環境の観測データ、地形・実験・技術などの研究開発データの提供を含め、企業のマーケティング活動でも活用できる月面データ提供サービスも行うとしている。
同社は、これらのサービスを提供していくことで、既存の宇宙機関や大学、宇宙関連企業のほか、これまで宇宙に直接関わりのない企業や組織が、月を舞台に新しい取り組みを始めるきっかけを創り出す狙いがあるという。
出資会社は以下の通りだ。
・株式会社産業革新機構(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:勝又幹英)
・株式会社日本政策投資銀行(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳正憲)
・株式会社東京放送ホールディングス(本社:東京都港区、代表取締役社長:武田信二)
・コニカミノルタ株式会社(本社:東京都千代田区、代表執行役社長 兼 CEO:山名昌衛)
・清水建設株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:井上和幸)
・スズキ株式会社(本社:静岡県浜松市、代表取締役 社長:鈴木俊宏)
・株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:山本敏博)
・リアルテックファンド(本社:東京都港区、代表:永田暁彦)
・KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:田中孝司)
・日本航空株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:植木義晴)
・凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾)
・スパークス・グループ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:阿部修平)※追加投資
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。