IDC Japan株式会社は、国内ERM(Enterprise Resource Management)について2018年のベンダーシェアを発表した。IDCでは、ERM市場を以下の8種類の機能市場で定義している。
- 財務
- 人事管理
- 給与計算
- 販売管理
- 購買管理
- EPM(Enterprise Performance Management)
- EAM(Enterprise Asset Management)
- PPM(Project and Portfolio Management)
2018年の同市場全体のシェア首位はSAP、2位は富士通、3位はオービックとなった。2018年9月に経済産業省が発行した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」による企業へのDX変革の圧力が高まっているが、2018年時点ではレポートの直接的な影響は見られず、2018年の国内ERM市場は前年比3.0%増、市場規模(売上額)は2,140億9,700万円となった。
同市場は2019年10月の消費税増税と、インバウンドで活況を呈する流通/小売業界の需要増に加えて、パブリッククラウド製品の成長率が前年比32.0%増となり市場の成長に影響したとIDCでは分析している。
従業員規模別では、従業員1,000人以上の大企業での成長率が1.7%増、同100人~999人の中堅企業が同3.2%増、同100人未満の中小企業が同7.1%増、と企業規模が小さくなるほど成長率が高くなった。パブリッククラウド製品による影響を最も受けたのは中小企業で、新興ベンダーによる競合状況が激しくなっている。
従業員規模別でのシェア首位は大企業がSAP、中堅企業がオービック、中小企業がオービックビジネスコンサルタントとなった。また、前年比成長率が高かったベンダーは大企業がオービック、中堅企業がオラクル、中小企業がオービックであった。
現在基幹業務システムはヒト、モノ、カネの企業の経営資源データの管理から、リアルタイム意思決定による経営を支えるためのデータ活用で得られるインサイトを提供する総合デジタルツールへの価値の変わり目にあり、DXの実現シナリオの1つとして期待されている。
しかし、IDCの調査によると、ユーザー企業のIT投資は、セキュリティ対策や機械学習/AIを優先する傾向があり、基幹業務システムへの投資優先度が低いことが示されている。このことは、ユーザー企業のIT投資が最適配置されず、部門間で予算を取り合う「DXデッドロック」の状況を引き起こす可能性があるとIDCではみている。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの飯坂 暢子氏は「ユーザー企業はDXの実現に向けて同時期に複数のシナリオを実行する必要がある。ITサプライヤーは、ユーザー企業がビジネスに業務プロセスを適用させる変革をリードし、イノベーションアクセラレーターである機械学習/AIなどによる業務自動化の導入シナリオに必要なサポート、および人材不足解消のための早急なエコシステム構築が求められる」と述べている。
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