マーケティングを目的として画像解析を活用したソリューションを展開している事業者(以下、ベンダー)は、スタートアップ系専業事業者を中心として、2016年頃から増加傾向にあるが、その事業規模は大きいとは言えない。
ECサイトでは、アクセス解析が当たり前となる中、リアル店舗での店舗内分析の必要性を小売事業者は感じ始めている。既に、ビーコンやWi-Fiなどを活用した店舗内での顧客分析を導入する小売事業者もいるが、カメラで撮影した画像を解析することで、来店客数のカウントや属性分析、動線分析なども可能な画像解析技術を使った店舗内ソリューションの導入事例はまだ少ない。
一方で、徐々にファッション業態や商品単価の高い小売業態を中心に、店舗向け画像解析ソリューションの導入が進みつつあり、2019年度の店舗向け画像解析ソリューション市場(事業者売上高ベース)は、16億2,000万円に達する見込みである。
株式会社矢野経済研究所では、画像解析技術を活用した店舗向けソリューション市場を調査し、事業モデル、普及課題、将来展望を明らかにした。
同調査での画像解析ソリューションとは、主に小売業の店舗内に設置したカメラ画像解析やAI技術を活用して、来店客の人数をカウントしたり、年代・性別等の属性を把握したり、店内での客の動線を把握したり、行動(人流)を分析したりする画像解析ソフトウェアや分析結果を可視化する店内分析プラットフォーム、コンサルティングサービスなどを指す。
店舗向け画像解析ソリューションを展開するベンダーの事業モデルは、大きく以下の4つの事業領域に分類できる。
- データを収集する端末であるカメラなどの「デバイス」
- 収集したデータを特徴情報等のデータにする「画像解析ソフトウェア」
- 得られたデータから属性分析やリピート率分析、導線分析等を担うAIなどの分析アルゴリズムを含む、分析結果を可視化する「店内分析プラットフォーム」
- 分析結果をもとに実際の施策まで提案する「コンサルティング」
各事業者の事業形態の調査では、以下の5つのケースに分類された。
- 「デバイス」と「画像解析ソフトウェア」と「店内分析プラットフォーム」
- 「画像解析ソフトウェア」と「店内分析プラットフォーム」
- 「画像解析ソフトウェア」と「店内分析プラットフォーム」と「コンサルティングサービス」
- 「店内分析プラットフォーム」
- 「店内分析プラットフォーム」と「コンサルティングサービス」
基本的には、顧客が店舗向け画像解析ソリューションのベンダーに依頼すると、カメラなどのデバイスから可視化プラットフォーム、分析までワンストップで利用できる。なお、全ての事業者が全ての領域の製品や技術、サービスを自社で提供しているものではない。
現状では、店舗向け画像解析ソリューションの導入はファッション分野を中心に進んでいるが、その普及に伴い、他分野へも拡大していくことが想定される。
また、現段階では、小売事業者側・ベンダー側においても、収集したデータを分析したアウトプットを具体的にどのように顧客に向けた施策等に活用するかという点を把握している企業が少ないことが、最大の阻害要因となっている。しかし、このような要因は、今後、導入を進めているベンダーやユーザーが成功事例を積み重なることによって、実店舗でのデータ活用がより一般化されると解決し、普及は更に進むと考えられる。
こうした状況から画像解析技術を活用したソリューションの導入は引き続き拡大し、店舗向け画像解析ソリューション市場(事業者売上高ベース)は2023年度には2019年度比5.5倍となる89憶1,000万円に達すると、矢野経済研究所は予測している。
以下、同調査の要綱である。
調査期間: 2019年7月~9月
調査対象: 画像解析をマーケティング目的で活用するソリューション展開事業者
調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材
出典:矢野経済研究所ホームページ
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。