株式会社ispaceとジグソー株式会社(以下JIG-SAW)は、月や小惑星など地球近傍天体(NEO:Near Earth Object)を軸にした宇宙空間での資源探査を目的とした、1000台規模の超小型ロボットで構成される『宇宙群ロボット(※)』の共同研究開発を開始した。
これまでの宇宙探査では、大型探査機による探査のため投資コストと時間が膨大であること、機会が少ないため探査場所が限定的であること、点あるいは線の探査であることが課題だった。
それらの課題を解決する新しいアプローチとして、月面など宇宙空間における小型探査ロボットの開発技術を持ち、民間組織による月面無人探査レースGoogle Lunar XPRIZEに参加する日本チームHAKUTOを運営し、JAXAとの共同研究も行うispaceと、自律協調制御技術(リアルタイムロボットOS含む)、センシング技術、信号処理技術、データコントロール技術及び分散型ネットワーク技術を保有するJIG-SAWは、両社それぞれの特徴を活かして、1000台規模の超小型ロボットを分散させて協調制御を行う宇宙探査システム『宇宙群ロボット』の開発に取り組む。
大型探査ロボット1台の場合と比較して、複数の小型探査ロボットを分散させて協調制御を行う分散協調型の宇宙探査システムは、複数ロボットの分散による“探査領域の広域化”、センシング、通信、運搬、マッピング、カメラなどの機能分散による“探査システムの多機能化”、個体トラブルなどの際の“探査システムのリスク分散化”といった特長がある。
この特長を活かした『宇宙群ロボット』による探査の実現によって、水資源の存在が示唆されている月の極地点にある永久影クレーター内部や月面の縦孔など、これまでの探査ロボットでは探査しきれなかった未踏破領域の広範囲かつ高密度の探査が可能になる。
両社が開発する『宇宙群ロボット』は、特に月面での水資源探査を重要視している。月で大量の水資源の存在が発見できれば、地球から水を運搬することなく、月面上で飲用や植物の育成へ利用ができるほか、水素と酸素に分解することで呼吸用の酸素やロケット燃料が確保できる。これにより、将来の火星探査をはじめ、月を拠点とした宇宙開発が地球規模で加速するため、科学的発見という意義を超えて、新たな宇宙開発の幕開けとなる。
『宇宙群ロボット』は、ispaceが2018年~2023年にかけて繰り返し実施予定の月面資源探査で実運用を予定している。また同時に国内外の様々な研究機関・関連団体とも密接に連携しながら開発を進め、2017年初頭までに初期稼働モデルを完成させ、実用に向けた様々な試験・実験を行っていく予定だという。
※ 群(ぐん)ロボット
自律的に動く多数のロボットから構成されるロボットシステム。ロボット自身が、他のロボットとの距離や速度を判断しながら移動し、ロボット同士や障害物と も衝突せず、資源探査などの目的を達成できる機能を保有。魚や蜂のような生物システムの自然回路を指向し、中央コンピュータ指示ではなく、個々がミッショ ン完遂のために自律分散的に相互制御する、Swarm Robot(群制御ロボット)。
【関連リンク】
・ispace
・ジグソー(JIG-SAW)
・宇宙航空研究開発機構(JAXA)
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