CES2024では多くのロボットが展示されていた。
もちろん、これまでもいろいろなロボットが登場していたのだが、今年は単なる便利や機能便益の提供というよりも、人にとってどのような価値があるのか、どのような存在になろうとしているのか、というところを追求して商品化したものが増えてきた印象があった。
本稿では、CES2024で気になった、人に寄り添うロボットたちを紹介する。
サムスンの新しくなったバリー
CES2020で紹介されたBallieが新しくなって登場した。
当時のBallieはカメラセンサーの付いた可動型AIスピーカーといった印象だった。つまり、Ballieがカメラで状況を見て、必要と思われる家電操作を自動で行うロボットだった。
例えば、ヨガをしている人がいると、後ろ姿をモニターに投影することや、家の人が不在の時にペットの犬が部屋を汚すと、自動でロボット掃除機を起動するというようなデモを紹介していた。
これらの機能は継承しつつ、New Ballieはサイズが大きくなり、プロジェクターが搭載された。このプロジェクターで部屋の空間を演出することや、ペットや人とのコミュニケーションも可能となった。
LGのスマートホームAIエージェント
このロボットの特徴はディスプレイ部分でロボットが表情を見せるところにある。
例えば、家族の一員のように、帰宅すると玄関まで来て、笑顔で出迎えてくれたり、残念なことがあると一緒に悲しんでくれるロボットだ。機能としてはコネクテッドホームとつながり、家や家電の状況を把握し、異常検知や温度や湿度などの環境把握が可能だ。
また、服薬支援含めたスケジュール管理や家の人の生体データチェックもしてくれるので、いろいろと感謝したくなる存在になるかもしれない。
ちなみに今回のCESでは展示は無かったがAmazonが2021年に発表したAstroはLGのAI Agentによく似ている。時系列で言えば、AstroにLGのSmart Home AI Agentが似ているという言い方が正しいのかもしれない。Astroはまだ日本では購入はできず、北米でも招待制で価格は$1,599とのことだ。
子供の話し相手になるロボット、moxie
moxieは子供の友達として話し相手になったり、親の代わりにメンターになるコミュニケーションロボットだ。
表情豊かで感情や思いやりを学ぶことができるという。本を読んでくれたり、興味を持ったことについて質問するといろいろと教えてくれるだけでなく、子供に絵を描くことや、本を読むことを促し、その行動に対してフィードバックをするので、子供が「次は何する?」という質問をロボットであるmoxieに尋ねるようになる。
また呼吸法を教えてくれるので子供の精神状態を穏やかにすることも可能だ。
ランプだけで表情を感じさせる高齢者向けコミュニケーションロボ EllieQ
intuition roboticsのElliQは人の顔のような目や口が無いにも関わらず、ランプの動きだけで表情を感じさせる高齢者向けのコミュニケーションロボットだ。
先進国の多くで高齢者人口は増加し、同時に高齢者の孤独問題が社会課題になってきている。
ElliQはそんな孤独な高齢者の友達になることをコンセプトに開発されていて、相手の感情や好み、求めていることを推察して会話をしてくれる。
また、服薬や血圧のチェックなど、やるべきことを教えてくれる機能もあり、一人暮らしの高齢者は、一度手にしたら手放せないかもしれない。
一方、実際に自分の母親にこういったロボットを提案すると、「心配ならあなたが電話して!」と一蹴されそうなこともあり、誰がどのように提供していくかということが最初の課題かもしれない。
愛犬用ロボット、Oro
ペットのためのロボットもある。
Ogmen Roboticsの愛犬用ロボットOroは自律的にペットと遊ぶためのボールを投げる機能と、飼い主の顔をディスプレイに表示する機能を持っている。
また、外出中の飼い主のエージェントとなり、ペットとOro経由でコミュニケーションをすることや、ペットの食事を出す機械と連動し、適切なタイミングで適切な量の食事を提供することも可能だという。
ロボットとの暮らし
CESに限らず、他にも多くの家庭用ロボットが登場してきているが、便利だけでなく、一緒にいる人やペットにとってどのような存在になるかということを、しっかりと考えて開発していることがわかる。
つまり、ロボットの存在価値を機能面に留まらず情緒的にも定義し、いないと寂しい、いることで心が豊かになる、そんなロボットとの暮らしが見えてきた。
人とのやりとりが煩わしいと感じたり、人に言えないけど、誰かに聞いてほしい、ということは誰にでもある。
そして、SNSで余計なことを言ってトラブルになった人も多い。こんな状況を踏まえると、あと数年で、何かしらのコミュニケーションロボット、またはコミュニケーションAIと共に暮らす人が増える可能性は大きい。
そしてロボットとの暮らしから、せっかくなら連携できる家電を買う、ということや自宅もコネクテッド化していく、ということが加速も考えられる。共生ロボット普及による暮らしの変化は想像以上のインパクトになるかもしれない。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。