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人工知能が洋服選びを助けてくれる、「1人1台人工知能を持つ時代に」-SENSY

人工知能を使ったファッションアプリ『SENSY(センシー)』を運営するカラフル・ボード株式会社は、日本でSoftbankとIBMが共同展開する「人が話す言葉を理解、学習し、人の意思決定をサポートする」コンピューターIBM Watson(以下、Watson)のエコシステムパートナーに選ばれた。エコシステムパートナーは、Watsonを活用したアプリケーションやサービスの開発や提供を担う。

SENSYは、人工知能から提案される服を「好きか嫌い」か選ぶだけで、その人の好みを学習し、提案の精度をあげていく。それ以外にも好きなスタイリストを選べば、そのスタイリストが自分に合わせてセレクトしてくれるかのような提案をしてもらえるため、手のひらに「自分のスタイリスト」がいる状態で服選びができる。これまではiOSだけの対応だったが、先日Androidにも対応した。

カラフルボード SENSY
アプリ上で、好き嫌いを選ぶだけ

 

最近では資金調達も相次ぎ、AIスタートアップとして勢いのあるカラフル・ボードの渡辺祐樹CEOにお話を伺った。

 

カラフルボード SENSY
左:カラフル・ボード株式会社CEO 渡辺氏、右:IoTNEWS編集長 小泉

 

― SENSYをはじめようと思ったきっかけを教えてください。

ここ十数年で世の中が便利になってきて、情報が便利に手に入る時代になりました。生活が豊かになってきていると思うんですけど、色んなものがありふれているので、そこから選択ができないとか、うまく出会うべき商品やサービスと人が出会っていない、というところに課題意識を持っていました。

ぼくたちのミッションとしては、世の中にはいいものたくさんあるので、「出会うべき人が、出会うべきタイミングで、瞬時に出会える」というサービスを作って、もっと人の生活を「本当の意味で豊かにしていく」ことです。

そのためにどうやって実現していくのかというところなのですが、「人の内部にある感性」というところに着目しました。情報との出会いという意味だと、これまでGoogleみたいな検索エンジンが世の中の情報にタグをつけて検索しやすくした、というのは「外部にある情報」を整理したものですけど、本当の意味でピンポイントで情報を届けるためには、「内部を理解」しないといけないだろうな、と。

内部を理解できれば外部の情報を通じて、きちんと情報をマッチングできるんじゃないかと思います。たまたま人工知能自体は僕が大学の研究してたテーマでもあったので、人工知能を使って内部にある感性を理解すれば、人工知能がその人の代わりに色んな情報をピックアップしてくれる。自分のコンシェルジュみたいな人工知能を「1人1台」持つという世界をつくっていきたいです。

カラフル・ボード株式会社CEO 渡辺氏
カラフル・ボード株式会社CEO 渡辺氏

 

― 感性というと感覚的なものなので、数字で割り切れないんじゃないかと思ってしまうんですが。

そうですね、感性はすごく複雑なので、単純な数字じゃ表せないですし、自分が好きな洋服を言葉にするとか、条件で定義するって難しいと思います。でも、人工知能は複雑な物事の因果関係を紐解いていくというところに使えるので、「感性」という複雑なものがどういうメカニズムでできているのか、ということを紐解いていけると思っています。

 

― ディープラーニングの世界では、人工知能に教える情報のバリエーションがもっと増えないと、同じ傾向って見つけづらいのかなと思っています。例えば10代の女の子が好きそうなものを、人だったら「あれね」とわかると思うんですが、ロボットが「ああ、あれね」とわかるにはそれ相応数のパターン数を持たないといけないと思うんですが。

何パターンかあるんですが、SENSYでいうと2つありまして、一つは画像を解析して商品を理解する部分と、もう一つはユーザーの内部を理解する部分です。商品を理解する部分は、すごく膨大なデータ数で何十万枚、何百万枚が必要です。しかし、一個人の感性のところは、50枚くらいの商品情報を見ればその人の好みというものをある程度わかるようになります。

 

IoTNEWS編集長 小泉
IoTNEWS編集長 小泉

 

― SENSYをはじめて使ったとき、ボトムスばかり出てきたのですが、「ボトムス以外のトップスなどいろいろなパターンがないと好みはわからないのではないか?」と思ったんですが。

そこらへんはまだまだ課題はありますが、これからアルゴリズムを直すなかで精度は良くなっていきます。

― 服を好きか嫌いかで分岐して、好きだったらサイトでも買える。なぜこういうことをやろうと思ったんですか?

会社の成り立ち自体は、(人工知能ではなく)ファッションの方からきています。ぼくがIBMビジネスコンサルティングサービスにいたときに、アパレル業界の課題とか無駄というものに着目して、そこを解決できたらなと思っていました。洋服って種類が膨大にあるので、それをうまく消費者とマッチングできないというのからスタートして、そこから人工知能にいきつきました。

ファッションはその人の感性やコーディネートがセンスとなって、組み合わせが無限に実現できます。無限の中からその人にあったコーディネートを見つけてあげるのは、まさしく人工知能じゃないとできない部分かなと。スタイリストさんの頭の中で組んで考えているような思考パターンを、できるだけ人工知能で実現したいと思っています。

― 最終的には自分にピッタリの提案が出てくるとなると、スタイリストさんいらずになっていくんですね。

人工知能を育てていくうえで「元の感性」となるスタイリストさんは必要なのですが、これまで対面でないとできなかった、そのスタイリストさんの接客が人工知能を通してできるようになります。

― Watsonは、将棋やクイズ番組で勝つなどの逸話がある人工知能ですが、今回使われてみていかがですか?

Watsonはまだ日本語のAPIが公開されていないため、使っていないです。

今後は、基本的にはオリジナルで、今後一部Watsonを使っていくという形です。

僕たちが考えているのは1人1台自分の人工知能を持って、その人工知能同士がウェブ上で繋がっていくという概念なんですけど、Watsonを使おうとしているのは、「自分の人工知能と会話をする」という部分です。チャット型のインターフェイスや音声などで自分の人工知能と会話ができたり、著名人の人工知能と会話をすることができたりなどです。

カラフルボード SENSY
SENSYとWatsonの役割の違い

 

― Watsonは言語解析と、SENSYが持っている人工知能への繋ぎの部分に使うわけですね。

SENSYとWatsonは使われている部分が違って、ぼくたちは「感性を学習するSENSY」を持っています、Watsonは「言葉を学習する人工知能」、その2つが組み合わさることで可能性がうまれるんじゃないかと思っています。もともと僕たちはこの言葉の部分も自前で作ろうと思っていたんですけど、今回パートナーの話をいただいて、IBMが持っている資源を考えると、自前よりは彼らと組んだ方がいいだろうなということで提携しました。

カラフルボード SENSY
SENSYは感性、Watsonは言葉を学習する

 

― 人工知能は各分野進んでいて、そういったものを組み合わせてサービス化されていくと、最終的にはスマホに向かって「今日はデートなんだけど、どんなカッコしたらいい?」と聞いたら、自分の人工知能が好みも知ってるから「こういうのがいいんじゃない?」と教えてくれるわけですね?

そうですね。あと世の中のトレンドとか、その人が気にしてる人の現状とか把握したうえで、教えてくれます。

― デートの相手とソーシャルで繋がってれば、相手の好みもわかりますよね。そういうのがトータルで出てきたらいいですね。

モノづくりも変わってくる可能性があります。僕たちが一人ひとりの人工知能を作って、一人ひとり理解して集約していくと、モノづくりができるデータにもなるんじゃないかと。

最終的には洋服を作る前の段階で、デジタルで3Dでシミュレーションして、その人に合っているか確認して、選ぶという時代になるんじゃないかと思います。

― 今までだと、メーカーが自社商品の店頭ディスプレイとして「着替えられるアプリケーション」があったりしたんですが、SENSYみたい様々な会社の商品を見られるようなものはなかったですよね?

ビジネス的にはユニークなポジションにいるなと思います。

カラフルボード SENSY

 

― 方法は全然違いますが、WEARなどもその人の感性に近いコーディネートを参考にして買うという流れですが、競合という位置づけになるんですか?

(現在はまだアイテムだけのレコメンドだが)ファッションで最終系になるのはコーディネートだと思っていて、人工知能にコーディネートを考えさせる、ということを今年の9月の頭にリリースをする予定でいます。

コーディネート系のサービスは多く、WEAR、iQON、プロのスタイリストにチャットで相談できる、など様々あります。その中で僕たちは、提案できるコーディネートの量とどれだけのリアリティを持って、その人に提案できるかというところで、差別化ができイノベーションが起こせると思っています。

WEARやiQONは100万件ほどの情報を持っていて、それは雑誌が持っていた情報よりも1000倍と言われていますが、それでも人が作るのでそれ以上増やすことが難しい。でも僕たちはそれを人工知能で組み合わせていくのでほぼ無限の組み合わせを提供できます。

また、WEARやiQONは雑誌に近いですが、人工知能は、その無限の組み合わせの中から、その人の洋服がどのようなものを持っているか、持ってる洋服と組み合わせたらどうかとか、感性とか、予算とか含めて、その人に最適なものを提案できるということでは、リアリティと提案の幅というところが違いかなと。

そして、ひとつのサービスアプリケーションとしてグローバルに持っていきたいと思っています。

カラフルボード SENSY
人工知能が提案したコーディネート例

 

― 先が楽しみな分野ですね。

ディープラーニング、「人の脳に近い人工知能」ということをゴールに考えると、まだできているものって5~10%くらいのものなんですよ。なのでまだまだ何回かイノベーションは起こると思いますし、ぼくたちはディープラーニングに代わるもっと新しい技術の開発をスタートしています。

そういった基礎研究もしながら、どういった形でSENSYにつなげていくかに力を入れています。

― 9月にアップデートされるSENSYはコーディネートされている状態で好きか嫌いか判断できるものですか?人工知能が見ているものは、どういったところですか?

人工知能がコーディネートを提案し、人がそれを好きか嫌いか判断をし、例えばトップスだけ変えたい場合はトップスだけを変更することができます。

人工知能は、服の色、形、柄、ブランド、価格など、様々な情報を見ています。在庫や価格とも連携しているので、提供側の服の在庫がなくなったら、人工知能からも情報が落ちていきますので、今買えるものだけが登場します。価格が下がったらお知らせしてくれるとか、在庫が少なくなったらお知らせしてくれるというのを人工知能がお知らせしてくれます。

カラフルボード SENSY

 

― 様々な通販サイトからの情報を組み合わせているということは、セットで購入したいときにパンツはAというブランドから、トップスはBというブランドから購入ということですよね?

今はそうですね。最終的には決済の仕組みを作ってあげれば一括で購入できるようになると思います。

― そこまでいくと、新しい個人のエージェントサービスになりますね。

その人が必要としている情報を届けてくれるという人工知能を作っていきたいです。

体格を登録しておけば、バーチャルで試着ができるという時代もそんなに先じゃないと思います。要素技術はできているので、それを組み合わせればできると思います。人の体の3Dのデータと洋服のパターンという型紙のデータ、それを組み合わせて3D上でバーチャルに見せられれば、胸がきつそうとか袖が長そうとかすぐ伝えられます。

― 今後、店頭にも展開されていくのでしょうか?

先日、新宿のミロードでタブレットの端末にSENSYを入れて、来店したお客様の好みをヒアリングして、そのお客様の人工知能をリアルタイムで作って、人工知能がそのお店にある商品を提案するということを実施しました。今後は、デジタルサイネージやPepperにSENSYを載せて、来店したお客さんに接客をするということをやろうとしています。

― ありがとうございました。

 

人工知能は、適切な答えを導くために、人間では処理しきれない膨大な知識を蓄積し、様々な組み合わせを検討しながら論理的思考でモノゴトを考える。そして、人工知能が導き出した回答をもとに人間が判断していく。

服は全ての人に必ず必要なものだが、本当に選びきれないほどの商品数があるうえに、所持数が多い人は自分が持っている服を全て把握してないことも多いだろう。それらを、流行や気になる相手の好みなども人工知能が考慮したうえで、最適なコーディネートを提案してくれるのならばSENSYは手放せないものになるかもしれない。

「自分の人工知能」を育て、さらに人工知能同士がソーシャルで繋がっていく。

これはすごい未来になりそうだ。

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