「IoTをゼロベースで考える」の第9回、先日行われたBig Data Conference2015での松尾豊 准教授のお話から考えた。
昨今、ビッグデータが蓄積、活用されるようになってきたため、リアルタイムなアクションに伝えたいというニーズが出てきている。IBMのWatsonやPepper, Siri, 自動運転など、従来ある技術が華やかな形ででてきている。
現状のPepperなどは、一見対話できているようだが後ろで人が頑張って想定情報を与えている状況だった。これはGoogleなどに代表される、条件を人間が教え込むタイプの人工知能だと言える。
一方で、子供が成長するような自律的に成長するタイプの人工知能の分野が最近発達してきている。
人工知能による2つのイノベーションのSとD
松尾准教授によると、人工知能には2種類ある。
人工知能(Sustaining)
・Google Facebook, Amazon等がやっている、人間が教え込んでいる
・マーケターという専門家を模擬するように、人間が教え込む、設定する
人工知能(Disruptive)
・画像やロボティクスの分野、製造業の相性がよい
・子供が成長するような過程を辿る
認識や運動神経に関わるところは案外ロボティクス化されていない。
みかんをより分ける、魚をより分ける、といった部分は画像認識による部分が大きいから、人間がやっているケースが多いが、今後はこういったところが機械化されていくのだ。
また、今後の日本の産業については、
ハードウエアが作っている企業が神経系を作る方が早いはずなので、この分野では日本が強くなる可能性が強いといえる。今後、神経系がインテリジェントになることを前提としたハードウエアが今後でてくると考えられる。
建設や農業の機械は、現状人間が使うことが前提となっている。
これからの機械は人間がいらない前提で考えると形も今の形とは異なったものになると思われる。
今年カリフォルニア大学バークレー校の発表で、画像認識技術の精度がかなり上がり、人を超えたという状況となったが、向こう半年でプロダクトを投入しないと今後世界中からこの技術を応用したプロダクトが出るだろう。まずは製品を投入することでデータが取れ出すので学習するチャンスを増やすにはいち早くプロダクトを投入すべきだ。
これまで、GoogleやAmazon、Pepper得意とするようなタイプを人工知能と呼んできたが、実際に考えると人間がパターンを教え込むのには相当な労力がいることに早晩気づく。
画像認識が人を超えたということと、学習(試行錯誤)によってということで、建設、農業、食品加工のあたりの、人間がやるしかなかった分野は期待が持てる。例えば、オレンジのサイズは一つずつ違うし、形も違う。画像認識の進歩と学習によって、オレンジの選り分けすら機械ができるようになっていくだろう。
森林を見張るといった非生産な仕事は、機械によってコストが下がるため置き換えが進む。また、放射能のあるところに入るといった人ではできないことが可能になるという分野は、新しいことが起きる。
現状のAIについて内容を知っている人ほど、「人工知能」という割には自力で賢くならないものか、と思う方も多いと思うが、実際はそうではなく、自律的に賢くなるタイプもあるのだということだ。
会場のデモンストレーションでは、高得点をとれることが目的であるという点だけを教え込んだAIが、画像認識によってブロック崩しが上達し、最後は人間がやるのと同じ高得点を取る手法を覚えていくというものがあったのだが、こういうデモンストレーションを見ていると、松尾氏のいうことがよくわかる。
日本の企業が、様々な工業技術にAIをとりれて、躍進することに期待したい。
http://bcove.me/xa9lsed9
参考:nature
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。