「Smart at robo for Pepper」は、Pepperの会話やジェスチャーが簡単に動作設定できるクラウドアプリで、 ロボットやプログラムの知識がなくても、自由に動作設定を行うことができる。
その「Smart at robo for Pepper」が、顔認証や遠隔操作に対応したということで、M-SOLUTIONS株式会社 取締役 植草学氏と、アスラテック株式会社 事業開発部 部長 羽田 卓生氏に話を伺った。(聞き手:IoTNEWS 代表 小泉耕二)
-「Smart at robo for Pepper」がアップデートしたそうですね。
植草: はい、Smart at robo for Pepperは、アップデートを2、3ヶ月に1回実施し、機能を追加しています。お客さまには月額サービスで提供しているので、その月額サービス内で機能を利用していただいており、それとは別にオプションでより付加価値の高いサービスを提供しています。
今年6月のアップデートの一つ目として、グローリーの顔認証エンジンを使ったサービス提供を開始しました。店舗のお得意さまの顔写真と名前を登録していただいて、そのお得意さまに合わせたサポートやケアをすることができます。例えば、「小泉さん、こんにちは。今日は小泉さんに紹介したいサービスがあります」と名前を呼んでくれます。

-何度かデモで見たことがありますが、全てグローリーのものなのでしょうか。
植草: グローリーのエンジンが使われているパターンもあれば、Microsoft Azure顔認証のAPIを使うパターンもあります。
これまで、グローリーの顔認証エンジンは、個別開発アプリへの組込みなどで使用されていましたので、より多くのお客さまにはすぐに使ってもらえなかった、というのが現状でした。そこで、われわれのサービスとして組み込み、商品の説明をしたり、アンケートをとったり、オプションとして組み合わせ、サービスとして提供することになりました。
-グローリーというと金融機関向けというイメージがあります。銀行に入ってるPepperはこれですか?
植草: いいえ。まだ銀行での導入事例はないようです。今後は協力し、Smart atのご紹介をしていきたいです。
今回のアップデートでは、通知機能もつけました。例えばお得意さまのスズキさんが来店され、顔認証されたときには店長に通知することができますので、スピードをあげて個別対応ができるようになりました。
顔認証は月額プラス5,000円のオプションで1,000人の顔を登録できるようになります。これにより例えば10回顔認証をしたときにはチケットクーポンを発行するといった仕組みと組み合わせることで、よりパーソナライズなコンテンツを提供できるようになりました。初期費用は5万円で、1万人までの登録だと月額2万円になります。これらは個別のアプリを作ることなく、2~3日で提供できます。
-実際に「スズキさん」をPepperに覚え込ませる瞬間は、何をするのでしょうか?
植草: Pepperのカメラで撮影して登録をします。Pepperのモニターにスズキさんの顔が出て「登録しますね」と出てきて、その後、名前の登録のために「ニックネームで入れてくださいね」とPepperが話します。その裏では撮った写真をグローリーのクラウドに投げて、顔の特徴量に変換し登録をします。
例えば、「次回、近くに寄ってきたら顔認証をする」という設定をして、Pepperが撮影した写真をグローリーのAPIに投げると、撮影した顔の特徴量と記録された顔の特徴量を照合し、「この人の写真はスズキさん」というのが返ってくるという仕組みになります。
グローリー の顔認証は、顔画像をクラウド上に保管していません。仕組み自体は、顔の特徴量がうまくクラウド上に保管されているので、Smart at roboの管理画面で登録したときでも、プレビューでただ写真がそこに出ているだけで、セキュリティとしてもしっかりしています。

-ここまでできると、来店者向けCRMをやりたくなりますよね。裏側のCRMシステムがあれば、つなげたくなる気がします。
植草: その場合は、個別カスタマイズをしていくことになると思います。ただ、そこまでのニーズは今のところありません。名前を呼んでくれるというのは嬉しいですから、お客様に呼びかけたいというところまでが現状です。
1回目の認証と2回目の認証でセリフを変えることができるので、例えば「またお会いしましたね」というセリフを言うこともできます。
お客さまだけではなく社員にも使うことができるので、社員登録をしておいて、受付で社員が前を通ったら顔認証をさせて、「スズキさん、今日も1日頑張りましょうね」みたいな声かけを、まずは弊社内で実施してみようと思っています。
以上が顔認証の説明になりますが、もう一つ、ロボット遠隔操作システムVRconの遠隔操作のオプションができました。
こちらはもともとアスラテック社と個別で ライセンスを提供していただいて、われわれがSIとしてデプロイもしていました。
「Pepperを遠隔から見てサポートとして使いたい」という要望が結構ありましたが、先ほどの顔認証と同じで、利用開始までにヒアリングなどで時間がかかり、お客さまにも待ってもらわなければいけませんでした。
その課題を解決するために、オプションというかたちで既存のSmart at roboに月額プラス1万円で遠隔操作ができる、というサービスをアスラテック社と提供させてもらうことになりました。お客さまに価値を提供することは1社だけだと大変ですが、複数社でやるとさまざまなことができますね。
-もちろん原理は分かるのですが、そこにロボットがいるのに、やってることはクラウドで不思議ですよね。VRcon自体は、もともとどんな機能があるのでしょうか。

羽田: 「VRcon for Pepper」というものがあり、Pepperのすべての機能を遠隔で操縦することができます。
VRconをつなぐとPepperの首や手を動かすこともできますし、Pepperが見ている映像も見ることもできるし、Pepperの耳で聞いてる音も聞くことができます。さらに、Pepperをしゃべらせることもできます。Pepperの声でしゃべらせることもできるし、スカイプ的にオペレーターの声を出すこともできます。
例えばPepperに「僕じゃ分からないので、専門スタッフに代わりますね」という前振りをさせてから、オペレーターの声が聞こえるので違和感がないようにしてあります。
植草: 例えば、管理ツールのChoregraphe(コレグラフ)などでカメラ画面を見る場合、これまでは同じネットワーク上じゃないと見られなかったので遠隔監視などはできませんでした。
羽田: アスラテック社は、ロボットを動かすことが専門の会社です。
ロボットを動かすことに関してはありとあらゆることをやりたい、どんなロボットでもどんなふうにも動かしたいので、その一つとしてPepperを開発しました。
Pepperを含むさまざまなロボットを2020年までに業務 ができる状態、とくにインバウンド対応をしたいと思っているはずですが、ロボットとAIでは2020年までにやれる限界が見え始めてきたと思っています。やっぱり全部の業務をロボットが対応するというのは今の段階ではなかなか難しいと感じています。
そこで、過渡期としてのこのハイブリット型があります。ロボットができるところはロボットがやる、そうじゃないところは人が代わる。その人が代わるのも、ロボット越しにやるというのも一つの解決策じゃないかなと思うのです。
自動車、オートモービルなど、名前のコンセプトの割には、だいぶ人が動かしていますので、ロボットも、人がちょっと動かしてもいいんじゃないかなと。

-なるほど、それで提携をしようという話になったわけですね。
植草: そうですね。Smart at robo はVRconと連携するパターンを2つ用意しています。
1つは、FAQの中に「問合わせ」ボタンを作っておいて、そのボタンが押されたらVRconが起動するというもので、Pepperが「今、担当者に繋げていますので、少々お待ちくださいね」と言って、担当者が登場するパターンです。裏で待機しておいて、そのままPepperの声でサポートすることもできます。
もう1つは、VRcon側から、Pepper越しにPepperの前の状況を見ることもできますので、混雑状況などがわかります。それに応じてPepperの胸に表示するメニューをいかようにも変えられるというのが、われわれのサービスの良さですので、お客さまは幅広い利用の仕方ができます。
-Pepperはよくイベントで出張に行きますよね。でも出張に行った先で、必ずしも専門家がついてるわけじゃないから、分からないことあったりしますよね。そういうのを遠隔でフォローできるということですか?
羽田: はい。どんな店舗でも、どんな商業施設でも、すべてのスタッフですべて答えられることはなかなかありません。Pepperにすべてを答えさせようとすると、膨大な作りこみが発生するので、そこはもう人に代わってしまうというのも一つのやり方です。
植草: さらに複数台動かせますので、例えば東京、大阪、名古屋でリモートワークも可能になります。例えば英語が話せるスタッフが3人必要だったのが、本社に1人いれば、3拠点の対応ができるようになります。
-現場でアンケートの内容を少し変えたいと思ったときには、東京で「Smart at robo for Pepper」の機能としてできますね。何かトラブルがあったしたときは、VRconで実際に話しかけて相談できるということですよね。
羽田: そうですね。アスラテック1社だけでこんなリッチなサービスを作ることは絶対にできませんでした。

植草: 遠隔で話すことは技術的にはすごく大変なので、われわれもプラットフォームを作りながら各社とやっていくことで、お客さまに早く良いサービスを提供することができます。
-今後はどうしていかれるのでしょうか。
植草: 今後は、社内で活用していこうと思っていますので、発表できるタイミングがきたらまたお話させていただきますね。
-本日はありがとうございました。
【関連リンク】
・Smart at robo for Pepper
・ノンエンジニアでも設定できるPepperアプリケーション(過去インタビュー)
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