ダイキン工業株式会社と日本電気株式会社(以下、NEC)は、2016年より取り組んでいる知的生産性を高める空気・空間を実現するための共同研究において、オフィスなどの執務空間での知的生産性向上には空調による温度刺激が特に効果的であることを実証したと発表した。
また、眠気の兆しが見えた早期の段階で刺激を与えることが、覚醒度(※1)を保つのに効果的であることも明らかにした。
知的生産性を高めるには、眠気をおさえて覚醒度を適切に保つことが重要だと言われている(図1:Yerkes-Dodsonの法則※2)。今回、覚醒度を適切に保つにはどのような方法・タイミングの刺激がよいかを確かめるため、定期的に被験者の覚醒度を測りながら、空調(温度)・照明(照度)・アロマ(芳香)それぞれの刺激を与え、覚醒度の変化を検証した。
環境条件を所定のタイミングで変化させた際の、被験者の覚醒度変化を確認する実証実験を行った。被験者には、眠くなりやすいタスク(2桁の加算暗算)を与え、5分毎に眠気を5段階で申告してもらうとともにカメラにより眠気を推定した(図2:実証実験のプロトコル)。
環境条件として以下の4つを設定した。
- 条件1:室温設定27℃一定、芳香なし、照度700lx (環境変化は与えない)
- 条件2:室温設定27℃→24℃→27℃、芳香なし、照度700lx (室温を第2セット開始時と第5セット開始時に変更)
- 条件3:室温設定27℃一定、芳香なし、照度150lx→1500lx→150lx (照度を第2セット開始時と第5セット開始時に変更)
- 条件4:室温設定27℃一定、芳香なし→あり→なし、照度700lx (アロマを第2セット開始時~第5セット開始前の30分間噴霧)
空調による温度刺激では、環境変化を与えない場合と比較して平均の覚醒度が5段階中、最大で約2段階分上昇し、さらに45分以上眠気を抑制し続けることがわかった。
また、照明やアロマによる刺激では、環境変化を与えない場合と比較して、覚醒度が最大0.5段階分上昇することを確認した(図3:各刺激による覚醒度の変化量)。
また、既に眠い状態になってからではなく、眠気の兆しを検出した時に刺激を与えることで覚醒効果が大きくなり、その効果は温度・照度・芳香刺激など、刺激の与え方や組み合わせで、高められることもわかったという。
両社は、同検証をもとに、まぶたの開度から眠気の兆しを検知して、空調・照明を組み合わせた刺激を与えるプロトタイプの制御システムを構築。今月よりダイキン工業(40平米)・NEC(200平米)の検証用オフィスにて、執務中の覚醒度データを取得して空調・照明の環境制御を行うフィールド実験を開始している(トップ画像)。
※1 覚醒度:
脳の興奮度(リラックス-緊張)を示す指標。自動検出する方法として、自動車業界では目の動きを調べる方法などがドライバーの居眠りを検出技術として研究されている。※2:Yerkes-Dodsonの法則:
心理学者のロバート・ヤーキーズとJ.D.ドットソンが1908年に発見した、覚醒レベルとパフォーマンスには逆U字型の相関関係が成立するという心理学分野の法則。
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