10/1にアステリア株式会社に名称変更したインフォテリアが、早速新しいサービスを打ち出した。
同社は、昨年6月に提供を開始したエッジコンピューティング用ミドルウェア製品「Gravio」(グラヴィオ)の機能を大幅に強化したバージョンの新Gravioを新たに「エッジウェア」というカテゴリーの製品として発表した。新Gravioは、無償貸出のセンサー機器と合わせて10月2日より提供を開始する。
同時にIoTセンサーの提供にあたり、中国 Xiaomi (シャオミ)グループ会社である中国のLumi United Technology と業務提携をしたことも発表した。Lumiは、主にスマートホームのセンサーを開発しており、今回の業務提携で日本初進出となる。
アステリアの中期経営計画における重点投資領域は「4D」。4Dとは、Data(AI、Big data)、Device(IoT、Smart devices)、Decentralized(Blockchain、DApps)、Design(Design Thinking、Digital Transformation)となり、今回発表された新Gravioはその4つの投資領域のうちDeviceとDataを強化したものとなる。
ところで、IoTは普及したのか?
平野氏によると「IoTの普及はまだ限定的」だ。普及が進まない3つのボトルネックとして、何を選んでよいかわからない「機器」、エンジニアでなければ難しい「実装」、思ったよりコストがかかる「費用」という問題があるが、その3つを新Gravioが解決するという。
今回、アステリア代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏と、副社長/CTOの北原淑行氏に、新しくなったGravioについてお話を伺った。(聞き手、株式会社アールジーン代表取締役 / IoTNEWS代表 小泉耕二)
Gravioに取り入れられた新発想、ソフトウェア・デザインドIoT

小泉: 新Gravioですが、どんなものになるのでしょうか?
平野: 新Gravioは、一般の場所、一般の人達にIoTを普及させる画期的なプロダクトになります。
一番大きいのは、月額500円の新Gravioを買うとセンサーハードウエアが無料貸し出しされる、ということです。ハードウエアがあると、すぐに使える、そして、すぐにIoTを体験できる。二つ目に、ハードウエアを操作するGravioはノン・プログラミングで利用できます。だからエンジニアでなくても使えます。三つ目に、そのプラットホームはRaspberryPiなど一般の方に馴染みがないものではなく、Windowsをはじめとして、Mac、iPhoneやiPad上でも動くのです。
小泉: なるほど、これはどういうところでつかわれるイメージなのでしょうか。
平野: オフィス、店舗、それから学校などです。
パソコンが本当の一部の方にしか普及してなかった時代、まだマイコンと言われていた頃から、オフィスにどこでもあって、それがないと使えないような、欠かせないようなものになりました。新Gravioを、そんなIoTが欠かせないものになるための、起爆剤にしていきたいと考えています。
更に技術的なところでは、「ソフトウエアセンサー」というものも提案しております。
小泉: 「ソフトウエアセンサー」というのは聞き慣れません。
平野: はい。今までセンサーというと、物理的なハード、デバイスだけでした。
しかし、ソフトウエアを活用するとハードでは取れないような情報もセンシングすることができるのです。
例えば、当初提供するのは画像からなのですが、画像データから人数を割り出すとか、男女を識別するとか、可能ですよね。
これが、簡単なセンサーだけでは取れない情報を取得する「ソフトウエアセンサー」です。
もう少し言うと、新GravioにはAI、マシンラーニングを搭載しています。ここも今までにない非常に新しいところになります。
IoTは、これまでハードウエアドリブンでしたが、今回リリースしたのが、「ソフトウエアデザインドIoT」。つまり、ソフトウエアが主導してIoTを繋いでいく、というような形を作り上げたい、というふうに考えています。
小泉: 世の中にもっとIoTを普及させるプロダクトとして成熟させたのですね。
ポイントとしては、まずハードウエアが付いてくる。今までのIoT製品は、ハードウエアは、それぞれバラバラで売っているし、クラウド事業者がいて、そのバラバラのハードウエアも簡単につなげるというけど、実際はバラバラに売っているし、つなぐのもそれなりの専門知識が必要でした。
平野: 「簡単につなげる」の意味は、エンジニアでAPIなどを理解していて、 RaspberryPiなども動かせるみたいな条件が必要で、簡単といっている前提が、一般の人達にとって実は全然簡単じゃないですよね。
小泉: エンジニアが、夜な夜な集まって、楽しくライトニングトークとかしながらやるという世界では確かに簡単だったのですけど、本当に総務の人とか人事の人が、会社でちょこっと何かやりたいとなるとできなかった。
平野: そうです。それに、クラウドをやっている人達と、デバイスをやっている人達は、全然違う人達で、「間をつなぐ口は用意しました」って、双方言うのだけど、いざ、本当につなぐとなるとコーディングをしたり、ハードウエアのところを理解してないといけない。通信規格とかも理解してないといけない。そういうとこに陥ってしまうのです。
そこで、可視化や制御は、5分でできてしまうサービスを目指しています。
Gravioは、500円で4つのセンサーをつかって、5分で課題を解決するプロダクト
小泉: 新Gravioは、どういう販売形式になるのですか
北原: 7種類のセンサーがあって、その中から4種類のセンサーを自由に選ぶことができます。
電池駆動でZigbee通信する5種類のセンサー。「ボタン」「開閉センサー」「温湿度気圧センサー」「人感センサー(170度 角度、最短距離2m, 4m, 最長 7m:センサースタンドがついている)」「ムーブメントセンサー(3軸の振動センサー:距離と加速度がわかる)」
そして、ソーラー電池でEnOceanをつかった2種類のセンサー。「温度センサー」「開閉センサー」があります。
あと、パソコンなどにUSBで接続することができて、これらのセンサーからのデータを受け取ることができる「レシーバー」デバイスになります。
小泉: サービス体系はどういう体系ですか。
北原: ソフトウェアだけ利用できる無料のサービス「Free」と、4種類のセンサーを無料貸し出しする月額500円の「Basic」があります。Basicは例えばドアが3つあるから、開閉センサーを3つという選び方も可能です。
さらに、月額20,000円のスタンダードというサービスがあります。こちらは、直接サポートがついていて、センサーを10個まで無料貸し出しします。
センサーデバイスのユースケース

小泉: それぞれのセンサーデバイスですが、どういうユースケースを想定しているのですか?
北原: まずは、「ボタン」です。これは、例えばレストランのテーブルなんかに置いておいて、スタッフの呼び出しに使えます。
「開閉センサー」は、二つの部品で構成されていて、くっついているか、離れているかを検知できます。窓が開いているかどうかということなどがわかります。
「温湿度気圧センサー」は、その名の通り温度や湿度を感知できます。
「人感センサー」は、スタンドがついています。どこかの壁に貼ることもできます。さらに角度もつけることができます。


「ムーブメントセンサー」は、振動を3軸で捉えることができるものです。モーターの振動を検知したりします。これは、左に何センチずれた、といった情報も取得可能です。
小泉: 制御ソフトは、レシーバーについているのでしょうか。
北原: はい。新Gravioをインストールしたマシンに「USBレシーバー」を挿すとドライバーも自動的にインストールされます。Macの場合は、インストール画面が開くので、ボタンだけ押していただく必要があります。
小泉: オフィスのような広い場所だと、飛距離が気になるのですが。
北原: うちの10Fのオフィスでつかってますが、端から端まで全く問題なく届いています。
ドアのところに開閉センサーが付いていて、そこから20mくらいは飛んでます。
仕様上何百メーターとなると飛ばないので、まだ今は実際に試してはいませんが、その場合はマルチホップすることができるデバイスを間に入れることになると思います。
机の下にセンサーを入れたりする場合、間にスチールの机などがあって飛ばないと懸念されるかたもいらっしゃるかもしれませんが、それも大丈夫です。ZigbeeもEnOceanもちゃんと飛んでいます。
小泉: レシーバーデバイスをパソコンに挿して、自動インストール。各種センサーは無料貸し出ししてくれて、必要なところに設置するだけ。これで、オフィスのドアの開閉がわかり、会議室を使っているかどうかや、店舗での店員呼び出しが5分で始められるのですね。
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とても簡単にIoTが始められることがわかったので、次回、新Gravioの設定がどれくらい簡単なのか、どういうことができるのか、ということについては、次回レポートする。
乞うご期待!
関連リンク:
・アステリア株式会社
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