2020年2月14日、竹中工務店はBIMデータを活用した建設業向けロボットプラットフォーム「建設ロボットプラットフォーム」の開発を発表した。
現在、ビル建設の現場では、BIM(Bulding Information Modeling)と呼ばれるツールが使われるケースがある。これを使うことで、建設前に立体情報だけでなく、構造情報や部品の情報、設備の品番や価格など、ビルを構成する様々な情報について3D空間の設計情報として設定することができるので、実際のビル建設時や保守時の無駄を省くことが可能となる。
つまり、ビル建設におけるデジタルツインを構成することができるのだ。
BIMを地図情報として利用し、ロボットの最適な経路をシミュレーションする
今回、竹中工務店が開発した「建設ロボットプラットフォーム」は、BIMが作るデータをビル内の地図情報として利用する。そして、ビル内でロボットを使う際に、ロボットの走行の経路設定を行い、走行シミュレーションを行うものだ。
「建設ロボットプラットフォーム」は、以下のような流れで、ロボットの走行シミュレーションと経路設定を行う。
「AWS RoboMaker」を利用し、クラウド上で経路をシミュレーション
まず、ユーザーは施工対象のBIMデータをAWSのクラウドにアップロードする。BIMデータの中には、建物の3Dモデルが含まれている。この3Dモデルを地図情報として利用し、その地図上でロボットの経路シミュレーションを行う。
ロボットの経路シミュレーションについては、クラウド上のロボット開発向けサービス「AWS RoboMaker」のシミュレーション機能を利用して行う。
ユーザーはロボットの最適な走行コースをシミュレーションし、実際の現場での走行経路を設定するのだ。
デジタルツインを活用することで、ロボット利用時のコストを削減する
BIMデータを利用し、ロボットの経路のシミュレーションを、クラウド上で行うメリットは何か。
それについて、竹中工務店 機械化施工推進グループ 永田幸平氏は以下の2点を挙げた。
ロボットの経路設定に、マーカーを設置する必要がなくなる
竹中工務店は、以前から建設現場用の自動搬送ロボット・清掃ロボットの提供を行っていたという。その際、ロボットが走行する経路については、カラーコーンを利用して経路の設定を行っていた。つまり、実際の建設現場にロボットが現実世界における経路を認識することができるためのマーカーとして、カラーコーンを置き、それを目印にしてロボットは走行していたのだ。
しかし、今回の対応で、カラーコーンをわざわざ現場に設置し、経路を設定する必要が無くなるという。
現場にカラーコーンを1つずつ設置しながらロボットの経路を決めることは、非常に手間のかかる作業だ。
また、建築現場はレイアウトの変更が頻繁に行われるため、それに伴ってロボットの走行ルートを変更する必要が多く生じる。そのような場合、現場にカラーコーンを置き直して、ロボットの経路を再設定しなければいけない。これもまた、手間のかかる作業である。
そこで、ロボットの経路設定をクラウド上で行うことによって、わざわざ実際の現場に赴いて経路を決める必要が無くなるのだ。
ロボットの走行経路を柔軟に設定することが可能になる
カラーコーンを利用したロボットの経路設定は、コーンを設置できる範囲内でしかロボットは走行することが出来なかった。例えば、障害物の周りにカラーコーンが設置しにくい場合は、わざわざ遠回りするような形でコーンを配置し、ロボットを走行させなければいけない。
しかし、クラウド上でのシミュレーションを利用すれば、ロボットの経路を柔軟に設定できる。例えば、現場に障害物がある場合、ロボットがその障害物を避けて、最短のルートで目的地へ辿り着くように設定できるのだ。
竹中工務店 永田氏は、シミュレーションによって経路を設定すること以外のメリットとして、「建設ロボットプラットフォーム」の特徴を2つ挙げた。
1点目は、ロボットの稼働状態を、クラウドを通じて遠隔で監視できること。
そして、2点目は、ロボットが収集した現場の映像データや点群データと、BIMデータを比較できること。これによって、建設作業の進捗状況を把握できる。また、BIMデータ上の設計図と、実際の現場の整合性を確認する事が出来るということだ。
「AWS RoboMaker」を利用する理由
記者会見では、「建設ロボットプラットフォーム」のシステム開発を委託されたブレインズテクノロジー CTO 中澤宣貴氏が登壇した。
中澤氏は、「建設ロボットプラットフォーム」において「AWS RoboMaker」を利用した理由を「「AWS RoboMaker」はアプリケーション開発からクラウド上でのシミュレーション、そしてロボットの端末管理まで行う事が出来る、唯一のマネージドサービスだ。クラウド上でロボットの経路のシミュレーションを行いたい、という竹中工務店のニーズに応えるものが揃っていた」と述べた。
また、会見では、AWS RoboticsおよびAutonomous Services担当ゼネラルマネージャー Roger Barge氏が登壇した。
Barge氏は「「AWS RoboMaker」は、複数のシミュレーションを並列で実行できる。例えば、1つの場所でも天候条件の違う、複数の異なるシミュレーションを同時に実行し、比較する事が出来る」と、クラウド上のシミュレーションを活用するメリットを語った。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。