コロナ(COVID-19)ショックによって、人々の生活は大きな変化を余儀なくされた。ロックダウンやソーシャル・ディスタンシングといった行動制限により、キャッシュレスの意識や行動にも大きな変化が出てきている。
そうした中、「電通キャッシュレス・プロジェクト」は、2020年12月末に「コロナ禍でのキャッシュレス意識に関する調査」を実施した。
長引くコロナ禍での生活者の決済手段がどのように変化し、今後どのようなトレンドになっていくのか、生活者とキャッシュレスを取り扱う中小事業者(店舗)の両方のキャッシュレスに対する意識について、見ていきたいと思う。
コロナ禍で進む生活者のキャッシュレスシフト
まず、「コロナショック以降、人々の支払いや買い物の決済手段でキャッシュレスが増えているか」について聞いてみた(トップ画)。その結果、緊急事態宣言が発令されて以降、「支払いや買い物でキャッシュレス決済の比率が増えた」という生活者は47.6%、おおよそ二人に一人は、キャッシュレス決済の利用割合は高まっていることがわかった。新型コロナウイルスによる影響が長引く中、ソーシャルディスタンシングなどを背景に、生活者のキャッシュレスシフトが進んでいることが伺える。
キャッシュレスの重視点は、「ポイント」「使える場所」に加え、「スピード」や「小銭など面倒さの回避」が上位に
では、キャッシュレス決済が増えた主な理由は何か。
キャッシュレス決済利用の重視点として、「ポイント特典」(58.5%)、「使える場所が多い」(45.5%)、「支払いのやりとりが速くすむ」(43.3%)、「小銭など現金での支払いに面倒を感じなくて済む」(39.5%)といった回答が上位となった。「ポイント特典」や「使える場所が多い」といった項目は、過去の調査結果でも常に上位に来ていたが、それらに次いで、生活者がスピードや小銭などの面倒さの回避でキャッシュレスを活用していることが伺える。
日常の生活導線上の身近な場所での利用が増加
では、コロナ禍でキャッシュレス決済が増えた場所はどこか。
キャッシュレス決済の支払い回数が増えた場所を聞くと、
スーパー・ショッピングモール 40.0%
コンビニエンスストア 38.4%
ドラッグストア 30.0%
が上位3トップとなった。
キャッシュレス決済が、日常の生活導線上の身近な場所で増えていることがわかる。
キャッシュレスが増えた場所と増えていない場所では、「電子マネー」「モバイル決済」の利用にギャップが
また、「キャッシュレス決済が増えた場所」で利用している決済手段について聞くと、場所によって利用している決済手段に違いがあることがわかる。
増えた場所のトップ「スーパー・ショッピングモール」では、「カード」(58.3%)が最も多く、「現金」(55.7%)を上回っている。
しかし「コンビニエンスストア」では、依然として「現金」 (47.1%)が最も多い一方、「電子マネー」(37.3%)「モバイル決済」(37.1%)が「カード」(27.3%)より高くなっている。このように、場所によって利用する決済手段に特徴があるのがわかる。
さらに、「キャッシュレス決済が増えた場所」と「キャッシュレス決済が増えていない場所」で、それぞれ利用している決済手段を聞いた場合、特に「電子マネー」と「モバイル決済」の利用に、ギャップがあることがわかる。
キャッシュレスの小額化が進展
キャッシュレス決済が増えた金額帯について聞いたところ、キャッシュレス決済が増えた金額帯は「1,000円超~5,000円以下」(48.0%)、「500円超~1,000円以下」(41.0%)、「300円超~500以下」(25.8%)の順で高く、1,000円以下の小額決済においてもキャッシュレス化の進展がうかがえる。
こうした小額決済の伸びは、「スーパー」「コンビニ」「ドラッグストア」といった日常導線上のキャッシュレス利用の増加と相まって、今後のキャッシュレス促進の追い風になると考えられる。
コロナ禍で着実に進むキャッシュレスの「日常使い」
今回「コロナ禍での生活者のキャッシュレス・インサイト」として、下記4つのキャッシュレスインサイトが見えてきた。
- キャッシュレスの重視点として、「お得さ」「使える場所」に次いで、「スピード」 「小銭などの面倒さの回避」が上位に
- 「スーパー」「コンビニ」「ドラッグストア」といった日常の生活導線上での利用が増加
- 「電子マネー」「モバイル決済」の利用が増えるかが鍵
- 1000円以下の「小額決済」でのキャッシュレス化が進展
このように、コロナ禍でキャッシュレスの「日常使い」が着実に進んでおり、生活者のキャッシュレスは今後もますます拡がっていくことが伺える。
次回は、キャッシュレスを取り扱う中小事業者(店舗)側のキャッシュレス意識ということで、 「コロナ禍で進む店舗のキャッシュレスシフト」を取り上げていく。
【調査概要】
調査手法:インターネット調査
調査時期:2020年12月24~25日
調査エリア:全国
調査対象 :(1) 一般生活者、(2)中小企業※経営者
(1)20~69歳男女500人(人口構成に基づきウェイトバック集計を実施)
(2)20~69歳男女200人
※従業員数100名以下、資本金5000万円以下の飲食もしくは小売業の中小企業
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株式会社電通 事業共創局 新産業開発部
「電通キャッシュレスプロジェクト」 主宰
米系コンサルティングファーム、欧州系投資銀行を経て、電通入社。金融(銀行、証券、保険など)、通信、自動車、飲料、トイレタリー、医薬品などのクライアントの新事業開発、マーケティング・ブランド戦略、PRに従事。 共著として、「金融破壊者達の野望」(東洋経済新報社)など。寄稿として、「コーポレート・レピュテーション」(ADVERTISING)、「CSRとコーポレート・レピュテーション」(日経ブランディング)など。 日本証券アナリスト協会検定会員。