今なお新型コロナウイルスの感染の第三波が猛威を振るう中、「電通キャッシュレス・プロジェクト」は、2020年12月末、「コロナ禍でのキャッシュレス意識に関する調査」を実施した。
長引くコロナ禍での生活者の決済手段がどのように変化し、今後どのようなトレンドになっていくのか、今回は店舗編として、中小事業者(店舗)のキャッシュレス利用実態について見ていきたいと思う。
着実に伸びるキャッシュレス決済の導入
まず、これまで実施してきた過去調査と同様に、「あなたのお店では、お客様の支払手段に現金以外に、クレジットカードや電子マネー等の「キャッシュレス決済」を導入していますか。」と、聞いてみた(トップ画)。その結果、「キャッシュレス決済を導入している」という店舗は55.5%と、約半数以上が導入済みという状況がわかった。過去の調査結果と比較すると、34.6%(2018年10月)→49.6%(2019年11月)→55.5%(2020年12月)と、順調に伸びてきている。
直近で最も増えた決済手段は、スマホ決済
では、どのようなキャッシュレス決済手段が増えているのか。キャッシュレス決済を使って支払うお客様は増えた」と回答した店舗に、最も増えた決済手段について聞いた。その結果、スマホ決済が最も高く62.7%を占めました。スマホ決済が、コロナ禍でのキャッシュレスの進展を大きく支えている状況が伺える。
「レジ作業短縮」「釣り銭不要」「客層の広がり」「衛生的」がキャッシュレス 導入効果の上位に
また、店舗側のキャッシュレス決済導入のメリットは何だろうか。
キャッシュレス決済導入で感じられる効果を聞くと、
- レジ作業の時間が短縮できた 21.6%
- 釣り銭を用意する手間が減った 20.7%
- 客層が広がった 18.9%
- 衛生的に支払いを受け付けられる 17.1%
が上位項目となった。
「レジ作業短縮」「釣り銭不要」など「効率性」などのコスト削減要因の方が、「客層が広がる」といった売上向上要因よりも強く出ているのは、長引くコロナ禍の影響と言えるかもしれない。また、「衛生的」という項目が次いで上位に挙げられるのも、コロナショック後の特色だ。
今後のキャッシュレスに対する期待は、「早期入金」「決済アプリによる送客」「決済データ分析」が上位に
さらに、今後のキャッシュレス決済に対する期待について聞いたところ、「売上の早期入金」(55.0%)、「決済アプリでの顧客への店舗紹介」(21.6%)、「決済アプリでの特別特典(クーポンなど)の提供」(21.6%)、「決済データの分析機能」(18.9%)の順で高く、決済から入金までの期間短縮とキャッシュレス決済によるトップライン(売上)向上への期待が伺える。
日本のキャッシュレスは、生活者の「日常使い」と店舗のキャッシュレス決済導入の進展で、今後も益々拡がっていく
今回は、「コロナ禍で進むキャッシュレスシフト」というテーマで、コロナ禍での生活者と店舗のキャッシュレス利用実態を見てきた。
その結果、
- 生活者の間では、キャッシュレスが日常生活導線上の身近な場所や小額決済での活用が進む中、「日常使い」が着実に進展している。
- 長引くコロナ禍にも関わらず、スマホ決済の躍進を背景に、店舗のキャッシュレス導入は約半数以上の水準まで伸びてきており、「レジ作業短縮」など効率性向上への効果が見られる中、今後は「アプリ決済による送客」など売上向上の仕組みとして、キャッシュレス決済に期待が高まりつつある。
といったことがわかった。
電通キャッシュレスプロジェクトでは、生活者のキャッシュレスの「日常使い」と店舗のキャッシュレス導入の進展を背景に、日本のキャッシュレスが今後もますます拡がっていくと見ている。
【調査概要】
調査手法:インターネット調査
調査時期:2020年12月24~25日
調査エリア:全国
調査対象 :(1) 一般生活者、(2)中小企業※経営者
(1)20~69歳男女500人(人口構成に基づきウェイトバック集計を実施)
(2)20~69歳男女200人
※従業員数100名以下、資本金5000万円以下の飲食もしくは小売業の中小企業
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株式会社電通 事業共創局 新産業開発部
「電通キャッシュレスプロジェクト」 主宰
米系コンサルティングファーム、欧州系投資銀行を経て、電通入社。金融(銀行、証券、保険など)、通信、自動車、飲料、トイレタリー、医薬品などのクライアントの新事業開発、マーケティング・ブランド戦略、PRに従事。 共著として、「金融破壊者達の野望」(東洋経済新報社)など。寄稿として、「コーポレート・レピュテーション」(ADVERTISING)、「CSRとコーポレート・レピュテーション」(日経ブランディング)など。 日本証券アナリスト協会検定会員。