内田洋行ビジネスITフェア2024

小売に特化した「インストア・アナリティクス」で、店舗売上6%アップを実現 -リテールネクスト 関根正浩氏インタビュー

ECサイトの分析に欠かせないツールとして、GoogleアナリティクスやSiteCatalystなどを利用している企業は多いが、IoTの進化により、小売り店舗内をECサイト同様に分析できる「インストア・アナリティクス」という店内分析ソリューションを提供する企業も増えてきている。

先日、下着メーカーのピーチ・ジョンに「インストア・アナリティクス」サービスを提供したことが話題になった、リテールネクスト・ジャパン ダイレクター 関根正浩氏に話を伺った。

 
-御社のサービス概要について教えてください。

基本的なコンセプトは、Eコマースの分析手法を物理店舗に適用するというものです。どういう属性の人が、どういうタイミングで来店し、店内のどの商品を見て、結局買った、買わなかった、という分析ができます。

なぜそれが必要かというと、通常、お店に来て買い物をされる方というのは、来店客のうちの10~20%です。ですのでPOSデータ分析でわかるのは来店客の10-20%についてのみなのです。しかし売上をアップするためのポテンシャルはどちらかというと80%-90%の非購入客層にありますので、POSデータの外側にある状況を理解することが重要になるのです。

 
—貴社について教えてください。

当社は、2007年に3人のファウンダーにより、シリコンバレーで設立されました。インストア・アナリティクスという分野を作ってリードしてきましたので、同分野が大きくなるにしたがい、当社のビジネスも年間200%超のペースで一緒に大きくなってきました。日本では昨年9月に法人を設立しビジネスを開始しました。

現在、リテールネクストは世界60カ国以上、300以上のブランドで利用されています。毎月世界のどこかで500店舗以上にリテールネクストが導入されている、そんなペースで伸びています。小売り特化のソフトウェアの研究開発に100億円以上の投資をしていますので、小売り店舗用の分析に関しては他に例を見ない優れた統合型ソリューションであると自負しております。

リテールネクストという名前の通り、フォーカスエリアは小売です。業態としては、アパレル等のスペシャリティショップやセレクトショップ、スーパー、ドラッグストア、量販店、デパート、モールなどに対応しており、全ての業態でお客様にご利用いただいています。日本でも、プレスリリースを出していただいたTSIホールディングス様やピーチ・ジョン様をはじめ、設立から1年間ですでに20社以上にご導入いただき、日々お客様の数が増えております。

小売に特化した「インストア・アナリティクス」で、店舗売上6%アップを実現 -リテールネクスト 関根正浩氏インタビュー
左:IoTNEWS代表 小泉耕二/右:リテールネクスト・ジャパン ダイレクター 関根正浩氏

 
—分析対象データを教えてください。

リテールネクストの分析対象は、店舗に関するほぼ全てに渡ります。例えば、店外通行量、入店数、入店率、店内の棚の配置、ヒートマップ、導線、POSデータ連携、リアルタイムアラート、レジ待ち分析、試着室利用分析など。また、性別・年齢などの属性分析、来店客の新規・リピーター分析、モバイルと連携した商圏分析などです。

小売に特化した「インストア・アナリティクス」で、店舗売上6%アップを実現 -リテールネクスト 関根正浩氏インタビュー
インストア・アナリティクス デモ画面

 
—分析データをどのように活用するのでしょうか?

店舗開発や運営担当の方でしたら、店内の最適な棚配置のシミュレーション、利用頻度の低い通路やセールスエリアの洗い出し、試着室数の妥当性分析などです。マーケティング担当の方なら、マーケティングターゲットが来店客の属性と合っているかどうか、各種キャンペーンやサイネージのうちのどれが効果的だったか。もちろん、防犯ビデオとしても利用されています。

例えば、平日・週末、午前・午後、お昼や夕方、ゴールデンウィーク、セール時期などの様々なタイミングでお店の前を通っている人の数、入ってきた人の割合、新規、リピーターの分析、来店頻度、店内滞在時間などを把握することで、店舗売上アップのための土台ができます。現状把握の上で、それぞれのKPIを伸ばすためのアクションプランを考えていくことになります。

 
-カメラを使っているのですね。どんなカメラでも良いのでしょうか?

リテールネクストはソフトウエア企業ですので、データ取得用のハードウエアにはこだわっていません。様々な種類のカメラ、赤外線センサー、WIFI、ビーコンなどの外部ハードウエアを使ってデータ収集を行います。

しかし例えば入店数を取るときに、精度90%ではあまり意味がありません。90%ということは、上振れを入れると20%のズレがでるということです。20%ズレたデータを元に、コンバージョン等の分析してもあまり意味がないからです。

そのため、リテールネクストは例外的に一つだけ、Auroraセンサーというデバイスを開発・提供しています。Auroraセンサーはステレオカメラ機能を使ってほぼ100%の精度でデータ取得を行い、来店客とスタッフのカウントや動きを区別することができます。区別を行うことで、正確な顧客来店数や店内の動線を把握できたり、スタッフシフトの妥当性判断も行うことができるようになります。Auroraセンサーには、その他に通常のビデオ機能、計算機能、録画機能、WIFI機能、Bluetooth機能もあります。

小売に特化した「インストア・アナリティクス」で、店舗売上6%アップを実現 -リテールネクスト 関根正浩氏インタビュー
Auroraセンサー

 
—カメラ映像をどのように分析するのでしょうか?

カメラ映像の上にソフトウエア的に分析ゾーンを設定します。そのゾーンを入り口近くに設定して入店数や退店数を計測したり、ゾーンを店内の特定エリアに設定することでそこの通過人数・立ち止まり人数・立ち止まり秒数などを計測することもできます。

そうすると、あるタイミングでお店の前を何人通り、そのうちの何%あるいは何人が入店し、かつ、そのうちの何%の人が特定の棚前に辿り着いたかなどがわかります。例えば、あるカテゴリの商品が他に比べて売り上げが悪いときに、そこにお客様が来て「見たけど買っていない」のと来ていなくて「見ていないから買っていない」のは全然違いますよね。そういったことがわかることによって、ユーザーエクスペリエンスを高めるためのアクションが取れるようになるのです。

小売に特化した「インストア・アナリティクス」で、店舗売上6%アップを実現 -リテールネクスト 関根正浩氏インタビュー
IoTNEWS代表 小泉耕二

 
—分析結果はどのように表示されるのでしょうか?

カメラなどの映像は、Auroraセンサー内のコンピュータ(Auroraセンサー以外のカメラを使用する場合は店舗に置かれたサーバー)でデータ化され、個人情報等を省いたデータのみがクラウドに送られます。クラウドに送られたデータは、あらかじめ用意されている小売専用のKPIに反映されます。ですので、ほぼリアルタイムで店舗からのデータをブラウザ上の各種KPIで参照することができるようになります。

また、一旦データ化されたデータを元にヒートマップや歩行進行方向なども、ブラウザ上に表示できます。例えば、来店客ヒートマップ、店員ヒートマップを平日・週末、VMD変更時に応じて表示させることができます。

小売に特化した「インストア・アナリティクス」で、店舗売上6%アップを実現 -リテールネクスト 関根正浩氏インタビュー
インストア・アナリティクス ヒートマップ

 
—どういったKPIがあらかじめ用意されていますか。

一般的に小売り店舗分析に必要とされるKPIは全て揃っていると考えています。例えば、入店数、入店率、コンバージョン率、棚前通過人数、立ち止まり人数、滞留コンバージョン率、購入客単価、来店客単価、トランザクションあたり商品数、来店客男女比、年齢層、スタッフシフト、来店頻度などです。

そういったKPIを、店舗別・エリア別・SV別でカテゴリー化したり、1日の中の時間帯別に分析したり、ということで店舗を理解することができます。

次ページ:分析の効果などについて

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