先進国では、少子・高齢化が進んでいる。2055年には日本の人口は1億人を割り込むといわれており、さらにその10年後は40%が65歳以上となると予測がされている。こういった、人口減少に伴う、人手不足の問題が顕在化するなか、流通業でも新しい動きが登場してきている。
例えば、メーカーがこれまで独自物流網を構築していたが、同業者でシェアしていくという動きがあるという。さらに一歩進んで、食品流通でジョイントベンチャーをつくるという動きもでている。
また、「御用聞きサービス」として、なにかをご家庭に配達した時に、次の注文を取り付ける、ペットの散歩や電球の取り替えなどを家主の代わりにやるなどといった、お年寄り向けのサービスも始まっているというのだ。
そんな中、世界的にもディスラプター(Disrupter:業界構造を破壊し、新しい動きをつくる企業)が出現していると言われている。
ディスラプターに共通する傾向としては、「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」「クラウド」「AI」「IoT」といったデジタルの力を活用して、「デジタルトランスフォーメーション」を行っているということだ。
例えば、流通業界では、アマゾンがいろんなところに登場している。スーパーのホールフーズの買収などにも見られるような、オンラインと店舗の融合の動きなども起きている。
他にも、Amazon Goと名付けられた無人店舗化によって、今後はレジに並ぶことなく店舗を出る時に、自動的に決済される、というような動きもある。
さらに、Amazon Airはドローンで配達をする。Amazon Keyはスマートロックを使って外出先の自宅に入って配達物を置いてくるなど、人手不足に対応するサービスがどんどん企画・検証されている。
こんなご時世において、マイクロソフトではいくつかの先進的な事例が登場しているのだという。
目次
インテリジェントシェルフ SBクリエイティブ
棚の前にセンサーを付けて、棚の前に人が立ったら商品の訴求をする。訴求の手段としては商品棚の前にデジタルサイネージ設置することだ。
さらに、商品を手に取った時は、その状態をカメラでハンドリングして、その商品の深い情報をサイネージに表示するのだ。
これによって、プロモーションがうまくいっているのか、棚の位置が最適か、といいった今まで取得できなかった情報が取れる。
家のリフォーム企業のバーチャルショールーム LOWE’S
家のリフォームは、実際にやってみないとわからないことが多い。一方で、リフォームをした後で「イメージと違った」ということも起き得るのだ。
こういった課題に対応するために、マイクロソフトではHololenz(ホロレンズ)を使って、実際にリフォームをした後に、現実の部屋と重ね合わせると、どうなるのかということを見ることができるのだ。
実際にリフォーム企業で実施したところ、これによって、顧客満足度が向上しているという事例だ。
日本でも、野村不動産が、マンション販売時に同様のソリューションを使っていて、建築中の建物について、建った後のイメージを体験することができるサービスを行っている。
顔認識認証システムの導入による、タクシーの乗客の安全確保の実現 UBER
UBERは非常に便利だが、実際に乗った乗客へのアンケートによると、「安全面での不安がある」というのだ。
そこで、画像認識AIを使ったソリューションを採用しているという。
具体的には、リアルタイムIDチェックサービスで、ドライバーに対して定期的にスマートフォンアプリから顔写真をとることを義務付けているというのだ。
ドライバーを顔認証して、正しく登録されているドライバーかどうかを識別するのだという。
メガネを付けてないドライバーがサングラスを付けていたりする場合は、メガネを取って撮影するようにアプリケーションが要求する。
こういった顔認識の技術を応用すると、お店にロイヤルカスタマーが入店した際に、顔認識し、該当顧客に対してハイレベルな接客を行うといった利用法も考えられるのだ。
時間帯別来場者数カウント 東京サマーラーンド
これまで、東京サマーランドでは来場者数は取得できていたが、来場する顧客の属性情報についてはあいまいだった。
そこで、「アロバビューコーロ」というカメラを利用して、顔認識を実施し、来場者数をカウント、属性情報も取得したという。
その結果、人力による集計作業をコスト圧縮し、プロモーション実施時の効果測定や、MS AzureのEmotion APIによって顧客が楽しんでいたかどうかの評価も同時に行うことに成功したということだ。
ドイツのホテル、顧客の要望にタイムリーに答える STEIGENBERGERホテル
このホテルでは、Azure IoTと、ウェアラブルデバイスを使ったサービスを行っているという。例えば、ウエアラブルデバイスに、902合室の掃除が終わったよ、といった情報をタイムリーに通知することができるのだ。
また、この基盤を通して、お客様同士の好みを従業員同士でやりとりができるので、例えばレストランにおいて、お客様の好みを事前に伝えるなどということもできるのだ。
こういったサービスは、小売業の接客のシーンでも活用することができる。
マイクロソフトのIoTの特徴
ここまで見てきたように、多くのIoTを活用した事例がでてきているのだが、「肝心なことは、IoTそのものではなく、デジタルで得られたデータを効果的に活用し、リアルのエクスペリエンスを向上させていく。その結果売り上げを向上させていくという、デジタルトランスフォーメーションこそが重要なのだ。」と窪田氏は言う。
デジタルトランスフォーメーションを支援するために、マイクロソフトのIoTの特徴としては、以下の4つがあるということだ。
シンプル
Azure IoT Suite:始めるのが大変と考えられる企業に、よくある機能をパッケージングしているSaaSのソリューション
Microsoft IoT Central:中小企業で技術者がいないような企業、小さくすぐはじめたいという時に使うSaaSのソリューション(プレビュー提供中)
Azure IoT Edge:リアルタイム性がもとめられる環境でもエッジ側に(プレビュー提供中)
エンドツーエンド
ものがインターネットにつながるところから、データを収集、データを活用し自動化・分析する、そしてアクションを起こす、といった一覧の活用の流れをソリューションがフォローをしている。
オープン
iOSやアンドロイド、LinuxなどのOSやSAP, Oraleなどといった、様々なベンダーの製品を利用することができるオープンなアプローチを取っている。
スケーラビリティ
世界42の地域で展開しているので、グローバルビジネスにおけるカバレッジが広い。
窪田氏はこれらのMicrosoft Azureの特徴を活かして、流通業のデジタルトランスフォーメーションを加速したいと述べた。
関連リンク:マイクロソフト
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。