先日行われた、香港エレクトリックフェアー2019、スマートシティのエリアがあるということで、中国ではどういうスマートシティに向けた取り組みがされているのか気になって、香港まで行ってきた。
香港までは案外遠くて、東京からは約5時間かかるのだが、習近平国家主席が進める、広東省と香港、マカオで一体的経済圏をつくる「粤港澳(えつこうおう)大湾区」構想が発表されて間もない今の時期だからこそ、面白いものが見ることができれるのではないかと期待していった。
先にネタバレすると、実はこの一体的な経済圏に関するブースは見つけることができなかったのだが、杭州でのスマートシティの取り組みが大規模に進んでいるという展示があり、取材をしてきた。
杭州は上海の南西部に位置していて、南宋時代には首都であった地域だ。現在では、アリババの城下町として知られている。
この土地で、2016年4月に「City Brain」構想というものが産官連携で立ち上がったのだという。同年10月には、早くも交通系のプロジェクトが着工、2017年10月に正式リリースをしたということだ。
杭州がアリババと展開するCity Brain
2018年8月にはCity Brain Ver.2.0をリリースした。2.0では都市交通を包括的にコントロールするようになったのだという。その後、セントラルシステムを構築し、2019年になると、20ものメジャーなアプリケーションを10の分野で実装したというのだ。
このスピード感がものすごい。
実際の展示を見てみると、道路の交通状況が可視化されているのはもちろんのこと、パーキング可能なエリアがわかるようになっていたり、セントラルシステムを活用した交通監視が実現されている。
路上ライブカメラは、4000台を超えるといわれ、AI経由で報告される事故情報は多い日で500件を超えるのだという。よくコネクテッドカーの分野でも語られる、緊急車両に合わせた信号の変更に関しても実現できていて、救急車の到着時間も半減しているのだという。
また、ドローンを使って病院に血液を輸送するというようなこともすでに実現できているようだ。
すでに、水道やエネルギーなどの都市インフラもデジタル化されAIで結びつける取り組みが進んでいるといわれる杭州。
デジタルが街をコントロールしているが、実はヒトそのものの生活は大きく変わらない。
生活者が知らない間に快適になっているということを実現するために、実際に街をサンドボックス化してどんどん試していく取り組みに注目したい。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。