近年、地球温暖化に伴う異常気象は全国各地で洪水を発生させ、毎年のように氾濫被害をもたらしている。国土交通省や都道府県等が管理する主要な河川では、河川の氾濫による災害発生の危険性に備え、洪水予測システムを構築し、運用しているが、市町村が管理する中小河川では、洪水予測システムを構築・運用している事例はシステム開発やメンテナンスによる費用面が課題となり決して多くない状況である。
全国各地で起こりうる想定外の氾濫に対して、地域の安全・安心を確実にしていくためには、情報の少ない中小河川でも、いち早く危険性を察知し、氾濫の状況を推定できることが望まれている。
これらの実現のために、日本電気株式会社(以下、NEC)と三井共同建設コンサルタント株式会社、京都大学防災研究所は、全国版リアルタイム氾濫予測システムの研究を進め、このほど、RRI(※)モデルを用いた全国版リアルタイム氾濫予測を実現可能とした。
「全国版リアルタイム氾濫予測システム」は、地形データ等を基に日本全国を4秒メッシュの解像度(約120m×100m)に分割して、リアルタイムの雨量データを用いて河川の増水や氾濫状況を予測するシステムだ。中小河川を含む全国の河川を対象に、災害発生の危険性を察知する河川水位の予測と、越水後の氾濫状況までをリアルタイムに予測することができ、Webブラウザで情報を閲覧することができる。
同システムは、気象庁が配信する高解像度降水ナウキャストや国土地理院が提供する国土数値情報等のオープンデータを活用して演算を行っている。そのため、各河川のモデル精度を向上するために地域ごとの情報を精査し、個別に改善を図る必要があるが、リアルタイムに稼働する全国版氾濫予測のプラットフォームが整備できたという。
現在、同システムでは、大量のデータを取り扱い、高速に演算処理する必要があることから、1時間先までを予測するリアルタイム運用を行っているが、今後は、NECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を活用して、6時間先までを予測するリアルタイム稼働ができる見込みだ。
※ 降雨を入力として、河道流量から洪水氾濫までを一体で解析できるモデル(土木研究所ICHARMが開発)。
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