不動産業界におけるテクノロジーの取り組み、不動産テックが盛況をむかえている。人口減少が叫ばれるなか、不動産を買う人口も減少していく。不動産業界は、不動産資産の価値向上あるいは業務効率改善、またはよりシームレスな不動産手続きを取り込むため、テクノロジーを取り込み始めている。
そんななか、不動産情報基盤への取り組みを行うコンソーシアムが2018年に設立された。
ADRE(アドレ)は、異業種プレイヤー間で不動産データをブロックチェーン技術を用いて共有・連携することにより、不動産業界の抱える課題を解決することを目的とした不動産情報の異業種連携プラットフォームを目指している。
不動産業界における課題や背景
不動産を選ぶ場面において、こんな経験をしたことがある人は少なくないのではないだろうか。
物件探し中に、気になった物件について問合せるとすでに入居決定済みだった。
筆者自身も内見予定決定後に、先に内見した人が入居が決定し、内見予定1時間前にキャンセルされたことがある。ちょうど、不動産屋に向かう道中でその連絡を受けたため、再び物件探しをすることとなった。特に物件が最も増える春先にこのようなことが多く起きているのかもしれない。
または、多くの不動産ポータルサイトなどに同じ物件の情報がいくつも表示されており、掲載されている写真も稀に違うことがあるため正しい情報がわからない、といったことはなかっただろうか。アクセスして途中まで閲覧したところで、別のサイトで見た物件と同じものだったことに気づいたりする。
そして、登録されている情報もマンション名が記載されていたり、いなかったりと掲載される情報の形式も微妙に違う。よく見れば気が付くことも、膨大な不動産情報のなかから複数検討するにあたっては、非常に骨の折れる作業だ。
不動産業界において、こうした1つの不動産に関する情報が、複数の仲介会社や管理会社などにばらばらに保有されているという実態がある。そのため、このような「同じ物件なのに掲載情報が違う」といった問題が起こりやすい状況にある。ベースとなる不動産情報にばらつきがあるということは私たち、不動産を選ぶ側のユーザーにとっても、不動産業界各社にとっても不利益となりえる。
不動産業界と異業種間連携の価値とは
今回、ADREに集った8社(2019年時点11月時点)は、以下の通りだ。
株式会社LIFULL、全保連株式会社、株式会社ゼンリン、株式会社ネットプロテクションズ、株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン、三菱UFJリース株式会社、法律弁護士法人 鈴木康之法律事務所。
各企業が保有しているデータは、下記の通り。
例えば、ある部屋の入居状況がわからないという場合があったとする。
ネットプロテクションズのサービス利用状況を共有し、問い合わせ対象の物件は入居中かどうかを判断する。その情報は、建物が現存しているということも意味しているので、ゼンリンの地図情報と紐づけて、空き部屋状況の更新を行う。
このデータの最新化によって、空き家状況の把握にも役立てることが可能だ。なお、2013年時点では、国土交通省が発表したデータによると空き家は853万戸存在し、うち賃貸物件だけで429万戸も存在しており、長期放置による防災性低下によって放置による危険も伴う。そういった危険な物件把握にも役立てることができる。
さらに、ここへインフラ会社が参入すれば、電気や水道などの利用状況データをかけあわせ、より正確な居住状況を取得することができるだろう。
不動産業界における今後のデータ活用
異業種間の情報共有でのメリットは、各社が持っているこれらのデータを共有、一元管理する仕組みがあれば、物件情報の正確性が増すだけでなく、データの相互活用が可能となる点だ。現時点で、異業種間連携のプラットフォームはプロトタイプまで完成しているが、今後の課題としては、データを持ち寄った企業への貢献度に応じた使用料配分割合や、標準化ルール、セキュリティ面といった部分が残っている。
今後、参加企業が増えていく中でこのようなルールづくりとともに、ブロックチェーンの特性をどこで活かし、対応できない部分については柔軟なその他技術の導入が求められるだろう。
将来的に、不動産業界以外での共創や、新たなビジネスの可能性は、活用可能なプラットフォームが存在することで大いに広がりをみせるだろう。今後のADREの活動に期待したい。
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