海外では、街のいたるところにゴミ箱があり、多くの自治体でスマートシティの一環として「スマートゴミ箱」が導入されている。
日本国内の場合、ゴミ箱を置いていない街が多いため、大学やテーマパーク、大型商業施設などの私有地での利用を想定した「スマートゴミ箱」の利用が始まっている。
目次
スマートゴミ箱とは
「スマートゴミ箱」とは、ゴミ箱をIoTやクラウドソリューションなどを活用してスマート化し、ゴミの回収業務を効率的に行う、スマートシティを実現する際によく登場するソリューションだ。
スマートゴミ箱が必要となる理由
2025年までには、43 億人の都市居住者が毎日排出する一般廃棄物は、1人あたり3ポンド(1.5 kg)、年間 22 億トンに上ると見積もられている。
当初話題になった、スペイン バルセロナ市での取り組みでは、巨大なゴミ箱が道路に設置されていて、それを定期的に大型トラックが収集してる状態であった。
しかし、回収作業をしている間中、道路を塞いでしまうこと、また、人が多く住むエリアほどゴミ箱が点在していることもあり、収集業務負荷の向上と、渋滞が大きな社会問題となっていた。
そこで、ゴミ箱にセンサーを搭載し、回収タイミングを定時から、ゴミの溜まった時に変更することで、ゴミの収集タイミングを減らすことに成功した。
その結果、回収業務負荷が軽減され、渋滞緩和にもつながった。
スマートゴミ箱のメリット
ゴミの蓄積状況センシングし、IoTを活用してクラウド上のサービスなどを経由して、リアルタイムで可視化することができる。
これによって、ゴミの収集タイミングを定時から溜まったタイミングに減らすことができるようになるのだ。
その結果、ゴミ収集のための人員を減らすことができ、ゴミ箱配置の最適化を実現することができる。
コスト削減にもつながるのだ。
スマートゴミ箱のデメリット
スマートゴミ箱は、ただのゴミ箱と比べて高額になるケースが多い。
もちろんただの箱ではなく、データ取得の仕組みや、通信、ゴミの溜まっている状態を可視化したり、アラートを飛ばす機能があるわけなので、同じ金額になることはない。
そこで、コスト要素をどのように賄っていくかが大きなポイントとなる。
また、屋外での設置をイメージしている場合は、ゴミ箱そのものに防水防塵性などの対応が必要になる。
スマートごみ箱の仕組み
上図のように、一般的には、スマートごみ箱にはセンサーが内蔵されていて、センサーがごみの蓄積状況を把握。回収が必要なタイミングで情報が管理者や現場担当者に通知されるというものがほとんどだ。
メーカーによって、
- ごみ箱を提供している
- ごみ箱のセンサーを提供している
- クラウドプラットフォームを提供している
など、部分的にサービスを実現している場合と、全体を提供している場合に分かれる。
他にもサービス単位で特徴があるので、それぞれのサービス内容を確認してほしい。
スマートゴミ箱比較のポイント
スマートゴミ箱を比較する際には、以下のような点に注意すると良い。
自然エネルギーの利用
まず、スマートゴミ箱は、センシングやデータ通信をする必要性があるにもかかわらず、設置場所には大抵の場合電源がない。そこで、ソーラー発電など自然エネルギーで駆動することが重要だ。
ゴミの収集頻度を減らそうとした場合、溜まったゴミを上から圧縮するような機構を持っている方がより多くのゴミを蓄積することができるわけだが、そういう機構を実現するには、モーターを動かす電力も必要となる。
一方、こういった機構を実現すると、当然コスト高になる。
また、ゴミの溜まり具合をセンシングするだけでなく、適切な可視化とアラートの発報が必要だ。
可視化とアラート機能
例えば、ゴミ箱の配置が地図上にプロットされ今収集しなければならないゴミ箱が一目でわかるようになっていれば、収集担当者もスマートフォンなどですぐに作業に取り掛かれる。
適切なタイミングで権限に応じたアラートが発砲されるようになっていれば、収集担当者だけでなく管理者にとっても状況を把握しやすい。
分析と状態監視
また、日別、曜日別、月別などでゴミの蓄積状況をレポートする機能があれば、何曜日がゴミが溜まりやすいなど傾向を把握することができるので、今後の設置案策定の際にも役立つはずだ。
一方で、複雑な機構が実現されている場合は、その状態監視も必要になるだろう。例えば、ゴミ箱の状態をきちんとセンシングできていないということが起きた際、センサーがおかしいのか、電力不足なのか、といったことが把握できなければ広範囲な設置は難しい。
コスト
さらに、コストの問題も大きい。
導入費用と運用費用の両方のコストに対して、現状以下を目指す必要があるので、例えば、ゴミ箱の周囲を広告でラッピングするなどの対応も必要になるだろう。
一般ゴミとする場合は、分別の問題もでてくる。
こういった様々な問題について、どういう対応ができているかを調査し、導入に進むことが重要だ。
おすすめスマートゴミ箱比較
「SmaGO」(フォーステック)
株式会社フォーステックが、米国BigBelly Solarと独占的販売代理店契約を結んで販売しているスマートごみ箱「SmaGO(スマゴ)」。
「SmaGO」は、ごみの蓄積状況を携帯電話網を介して発信するごみ箱と、ごみ箱個々の情報を随時集計して最適な収集ルートを算出する管理コンソールで構成されたスマートごみ箱ソリューションだ。
ごみ箱は、内部の蓄積状況を知らせる機能を持つ非圧縮型と、通信機能に加えて内部のごみを自動的に約5倍に圧縮する機能を持つ圧縮型の2タイプがある。いずれのタイプも箱上部のソーラーパネルで発電・蓄電する。
特徴・仕組み
- 自動圧縮
- センサーが容量を検知して、いっぱいになると自動圧縮する
- ゴミ箱内部容量は約125L、圧縮後は約600L
- 発電/蓄電
- ソーラーパネルで必要な電力を発電し、蓄電して利用する
- 本体上部に制御基盤、蓄電池、通信モジュールを搭載
- 管理/通知
- クラウドと連携して容量管理や通知、統計などの情報を提供する
- ダッシュボード画面では、スマートゴミ箱の位置情報や収集状態を表示
- 詳細確認画面では、発電状況、システムログ、圧縮回数、ドア開閉回数なども表示
導入事例
米国ではフィラデルフィア市(500台以上)やボストン市(600台以上)などの自治体など、世界45か国以上で利用されている。
フィラデルフィア市は導入前、市内のゴミ箱700個のゴミ回収を33人のスタッフで週17回実施していた。その700個のうち500個を「BigBelly」に置き換えた結果、下記のコスト削減となった。
- ゴミ回収頻度を週17回から週3回に削減(70%OFF)
- ゴミ収集担当者の人数を33人から9人に削減(73%OFF)
- ゴミ収集担当者のシフト数を3シフトから1シフトに削減(67%OFF)
- 年間コストを230万ドルから72万ドルに削減(70%OFF)
国内では、東海大学やハウステンボス、表参道などと実証実験を行っている。
表参道の事例では、「スマートゴミ箱・SmaGO」として株式会社フォーステックが日本への輸入を行い、保守・クラウド管理をNSWが行っている。
費用
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Smart LEVEL(積水マテリアルソリューションズ)
積水マテリアルソリューションズは、ゴミ容器に取り付けることで、ゴミの量を遠隔監視できるセンサー製品「Smart LEVEL(スマートレベル)」を提供している。
「Smart LEVEL」は、光学式センサーと比較して検知範囲が広く、汚れ等にも強い超音波センサーを搭載している。
ゴミ容器の内側・天面に設置することで、ゴミ容器天面からゴミまでの距離を測定し、低消費電力・低ランニングコスト・長距離伝送が特長のIoTネットワークにより、管理者のスマートフォンやパソコンなどに通知する。
慢性的な労働力不足の環境下、Smart LEVELは、定時巡回から必要時(オンデマンド)回収方式への変更を可能とし、ムダ巡回の削減による作業軽減やゴミ容器周りの美観維持に貢献する。
特徴・仕組み
- 導入が簡単な省エネシステム
- 電気工事は不要で、簡単に設置ができる
- 取り付けが容易で、各種ゴミ容器に対応可能(既設容器に後付け可能)
- 面倒な通信ネットワーク、クラウドの設定は不要
- ゴミの量を検知し、データを蓄積する
- 超音波センサーで、ゴミまでの距離を測定して堆積ゴミ量を検知する
- 満杯をお知らせするアラート機能で、ゴミ容器のあふれを防止できる
- 様々な場面、用途での活用が可能
- 商業施設、公共施設、高速道路、空港、駅、レジャー施設等、幅広く活用できる
導入事例
富士急行株式会社~河口湖~富士山パノラマロープウェイに設置
費用
標準品で約40,000円(製品単体価格、その他通信・システム・サービス費用等が別途かかる)
Cisco Kinetic for Cities 廃棄物管理(シスコ)
シスコの「Cisco Kinetic for Cities 廃棄物管理」は、都市でのごみ管理を最適化する。
ごみ箱の状況をリアルタイムに可視化することにより、事業者と行政に重要な情報が提供される。
オペレータおよび収集管理者向けに最適化されたルート機能により、ゴミ容器の充満レベルと現在の交通状況に基づいて、収集と整備を行えるようにすることで、必要なごみ収集車の数を削減できるため、汚染と騒音を軽減し、運用コストを削減する。
ベンダーに依存しないプラットフォームのため、さまざななセンサーから情報を集約することができる。
特徴・仕組み
- ルートの最適化
- ごみ箱のリアルタイムの状態を、満杯度レベルとオーバーフローのアラートで取得
- 車両の状態を確認し、マウスクリックでルートを変更できる
- データの収集
- ベンダーに依存せず、多数のセンサーからデータを集約
- 管理/通知
- ゴミ容器の状態に関するアラートをリアルタイムに提供
- 回収車の状態をリアルタイムに提供
- 天候、交通量、公的イベントなど、サービスの品質に影響を与える外部要因に関するアラートを通知する
導入事例、バルセロナ
バルセロナでは、道路わきに置かれたごみ収集箱に、近隣の住民がごみを捨てていくのだが、このごみを回収するクルマが回収作業中道路をふさいでしまい、渋滞が起きるという問題が起きていた。
そこで、ごみ収集箱にセンサーを付け、収集箱のなかのゴミの量を検出、回収すべきタイミングを教えてくれることで、無駄なごみ回収を減らし、渋滞も解消する、CO2と削減にも貢献する、という取り組みを行った。その結果、市のゴミ収集の経費節減につながった。
費用
要問い合わせ
スマートシティプロジェクト(NEC)
NECは、スマートプロジェクトの一環で、ゴミ収集容器にセンサーを取り付け、容器内に溜まったゴミの量や容器の設置場所などの情報を一元管理する「廃棄物管理システム」を提供している。
さらに、自治体が所有・管理するゴミ箱やCCTVカメラなどの設備・資産の位置情報や可動状況を、Webポータルとモバイルアプリで見える化している。
各システムからのデータをリアルタイムに収集・分析するシステムは、EUno次世代インターネット官民連携プログラムで開発・実装されたデータ利活用基盤ソフトウェア「FIWARE(ファイウェア)」を利用している。
特徴・仕組み
- ルートの最適化
- 収集ゴミ箱をセンサーでモニタリング
- IoTセンサーで駐車場の空きをモニタリング
- データの収集
- 街中にセンサーを20,000個設置
- IoTプラットフォーム「FIWARE」を活用
- 管理/通知
- ゴミ収集容器に設置したM2Mセンサーで集積したゴミの量をデータ化し、モバイルネットワークを介して管理センターに送信、管理センターで大型スクリーンを用いたマップにより一元管理できる
- 管理センターに集められたデータを分析し、最適なゴミ収集ルートやタイミングをゴミ収集事業者に提供
導入事例、スペイン
NECは、スペインのゴミ収集サービス事業者ASCAN(アスカン)と共同で、センサやビックデータ分析を用いて、スペイン サンタンデール市のゴミ収集管理サービスをスマート化する事業に参画している。
本事業では、市内のゴミ収集容器にセンサーを取り付け、容器内に溜まったゴミの量や容器の設置場所などの大量の情報(ビッグデータ)を、ネットワークを通じてリアルタイムに収集。さらに、集まった情報を市内の管理センターで分析し、最適な収集ルートやタイミングをゴミ収集車に搭載されたモニタに表示する。
その結果、下記のとおりとなった。
- 人件費コスト15%削減
- 交通渋滞80%削減
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「TERAS BOX」(テラモト)
テラモトが手がけるスマートゴミ箱「TERAS BOX」は、『ゴミ箱がきたなくて近づきたくない』『ゴミが溢れていて景観が悪くなる』『みんなが捨てているから私も捨てよう』といった悩みを解決する。
いつでも、PC・スマホでゴミ箱の状況を確認できるので、必要なときだけ回収ができ作業効率がアップ。
同社が販売している、「トラッシュボックスFT」「ニートLG」のゴミ箱にも対応し、ゴミ箱のオーダーメイドも可能なため、オリジナルデザインのゴミ箱を制作することができる。
特徴・仕組み
- ルートの最適化
- 効率の良い収集ルートの分析
- データの収集
- ゴミ箱にセットしたセンサーで堆積(たいせき)状況を監視
- 上記をWi-Fiなどを通じてクラウドに送り、データを収集・蓄積
- 内部にセンサーの取り付けスペースを確保した特殊な形状により、センサーの計測精度を高める
- 臭気や熱を感知するセンサーなど、目的に合わせたシステムの拡張プランも
- 管理/通知
- 管理画面で見える化し、スタッフに通知
- PCでもスマホでも確認可能
費用
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まとめ・比較表
以上のスマートゴミ箱について比較すると以下の通りだ。
企業 | NSW | 積水 | シスコ | NEC | テラモト |
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自然エネルギー | ○ | ○ | △ | △ | – |
可視化 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
分析 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
プラットフォーム | △ | – | ○ | ○ | – |
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