10月19、20日、虎ノ門ヒルズで都市の未来を考える国際会議「Innovative City Forum(イノベーティブ・シティ・フォーラム、以下ICF)2016」が開催された。
20日に行われた「未来東京セッション」では、Future Living、Future Work、Future Mobility、Future Entertainmentの4つのテーマに分かれて、リソースパーソンの議論に参加者も加わりながら、20年後(2035年)の東京に住む人々のライフスタイルについて議論した。
モデレーターの東洋大学教授 / 慶應義塾大学名誉教授 / 森記念財団都市戦略研究所所長 / アカデミーヒルズ理事長 竹中平蔵氏は、「ブレインストーミング型のセッションははじめてだが、ダボス会議などでは非常に行われる形式。よりインタラクティブに皆さんに参加してもらいたい。」と、同セッションの説明をした。さらに、アインシュタインの言葉を引用し「想像力は、知識よりも大切だ。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む」と述べ、セッションがスタートした。
Future Living
「人は誰と、どこで、どのように暮らすのか?」についてのブレインストーミングには、株式会社レスポンスアビリティ 代表取締役 足立直樹氏がファシリテーターとなり、リソースパーソンには、株式会社ストラタシス・ジャパン 代表取締役社長 片山浩晶氏、楽天株式会社 執行役員 市原敬介氏、株式会社リバネス 代表取締役CEO 丸幸弘氏が参加した。
ブレインストーミングの結果として足立氏は、「将来の予測は難しいが、時間や空間が自由になり、働くことと遊ぶことの垣根がなくなる。人の生活は多様性が求められることになるため、社会全体としてそれを許容できる枠組みを変える必要がある。」とコメントした。
来場者からの「東京の魅力を保持することができるのか」という質問に対して「必ずしも東京にいる必要はない、それも多様性。東京の価値は、その独自性を発揮していくこと、そこにイノベーションが必要」と回答した。
Future Work
「人はなぜ、どこで、どのように働くのか?」というテーマのブレインストーミングには、電通総研所長の大越いづみ氏をファシリテーターに迎え、リソースパーソンとして、株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO 吉田浩一郎氏、株式会社ココナラ 代表取締役社長 南章行氏、早稲田大学ビジネススクール教授 / 早稲田大学IT戦略研究所所長 根来龍之が参加した。
ブレインストーミングの結果として大越氏は、「AIやロボットが人の仕事に代替するものになる、と言われているが、それは代替されていくだろうという結論が出た。しかし非連続的、非線形型な仕事は代替されない。これがホワイトカラーに襲いかかるのは共通の認識だった。正規雇用と非正規雇用については、どんどん非正規雇用が増えていく。企業と個人の関係は、色んなグラデーションになっていくだろう。」と発表した。
来場者の「ベーシックインカムが与えられると仕事の本質が変わるのでは?」という質問に対しては「個人のエンパワーメントにも見え、一見自由一見安定のように見えるが、厳しいのではないか」と回答した。
Future Mobility
「人はなぜ、どのように移動するのか?」についてのブレインストーミングには、IoT News代表 小泉耕二がファシリテータを務め、リソースパーソンとして、インテル 事業開発・政策推進ダイレクター、チーフ・アドバンストサービス・アーキテクト 兼 名古屋大学 客員准教授 野辺継雄氏、akippa 株式会社 代表取締役社⻑ 金谷元気氏、株式会社ZMP 代表取締役社長 谷口恒氏が参加した。
米国運輸省道路交通安全局 (NHTSA) がレベル0~4で定義している自動運転化について、野辺氏によると「世界的なトレンドとしては、コンピューターが判断したり、ヒトが判断したりするレベル3は難しい。ディープラーニングの発達により、完全に人間が運転しないレベル4の実現性が高まっている。」という。すでにロボットタクシーなどの実証実験で、自動運転車によく乗っているという谷口氏は「ヒトが運転するクルマよりも、自動運転の方が安心できる。」とコメントした。
全国の空いている月極や個人の駐車場をかんたんにシェアできるサービスを提供しているakippa社の金谷氏は、「今後はAIで料金設定をし、例えばスタジアムで試合がある時は料金が上がるなど、需要に応じて価格を変動させることを検討している。」と述べた。

ブレインストーミングの結果として小泉は、「自動運転、シェアリングエコノミー、土地の有効活用、ライフスタイルがどう変わるかなどを議論した。自動運転の日本と世界を見たときに、日本はクルマを作っている会社が単独でやろうとしているが、海外は得意分野を持っている会社が協調して作っているため、後者の方が伸びていくのでは。」と発表した。
Future Entertainment
「人はなぜ、どこで、どのように遊ぶのか?」という最後のテーマでは、ファシリテーターに明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授 / 森記念財団理事 市川宏雄氏を迎え、リソースパーソンとして、ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長 北野宏明氏、東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 廣瀬通孝氏、株式会社佐々木設計事務所 代表取締役 佐々木龍郎氏、株式会社 大林組 テクノ事業創成本部PPP事業部 担当部長 葛西秀樹氏が参加した。
ブレインストーミングの結果として市川氏は、「技術革新で形態が変わっているものに焦点を当て、その結果、人々の意識や都市はどう変わるのか、という議論をした。室内におけるゲームや映画館における映画など、いきつくところはバーチャルなものがどのくらいリアルに近づけるか、そこに20年後のキーワードがあるのではないか。」とコメントした。
来場者の「エンターテイメントという観点から都市の力をつけていくに当たって、民と官がどういう関わり方をしていけばいいのか」という質問について、市川氏は「例えば、プロジェクションマッピングを東京駅で開催し、多くの人が集まったが、禁止された。各々の管理がバラバラになっていて、人々がどう楽しめるかという観点で運営されていない。両方の理解が必要と感じる。」と答えた。
「未来東京セッション」が行われる前と、行われた後のリアルタイムアンケート結果は以下のとおり。
-テクノロジーの進展や価値観の変化にともなって、東京において次の4つのどの分野が最も大きく変わると思うか?
-4つの分野で最も大きく変わってもらいたいのはどの分野?
セッション前後で数字は変化しているものの、「働く」ことに一番関心が集まった結果となった。
【関連リンク】
・Innovative City Forum 2016
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