京都市では、「岡崎地域公共施設間エネルギーネットワーク形成実証事業」の一環として、京都市勧業館「みやこめっせ」に、スマートシティ京都研究会(*1)のメンバーでありオスカー認定企業(*2)である株式会社アイケイエスが開発したSiC(炭化ケイ素)パワーデバイス搭載の高効率な蓄電システムを導入することを発表した。
1.岡崎地域公共施設間エネルギーネットワーク形成実証事業
京都市では、岡崎地域におけるエネルギーの効率的利用を推進するため、平成25年度から、BEMS(建物エネルギーマネジメントシステム)(*3)や蓄電池の導入、公共施設間のCEMS(地域内エネルギーマネジメントシステム)(*4)の構築に取り組んできた。
平成27年度は、この取組の一つとして太陽光パネル30kWが整備されている京都市勧業館「みやこめっせ」に、地域グリーンニューディール基金補助金(環境省)を活用して蓄電池を導入する。(平成28年3月設置予定)
2.株式会社アイケイエスによるSiCパワーデバイスを搭載した蓄電システムの開発
1) スーパークラスタープログラムによる京都地域のSiC社会実装の取組
文部科学省所管の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は、平成25年度から、これまで地域が取り組んできた研究成果を活かし、国際競争力の高い広域連携による「スーパークラスター」を形成するため、京都地域及び愛知地域において5年計画で「研究成果展開事業(スーパークラスタープログラム)」を実施している。
京都地域では、長野、福井、滋賀との広域連携のもと、SiCパワーデバイスの社会実装を目指したプロジェクトとして、「クリーン・低環境負荷社会を実現する高効率エネルギー利用システムの構築」をテーマに産学連携、産産連携により実施している。
SiCパワーデバイスは、従来のSi(ケイ素)パワーデバイスよりもエネルギー損失が少なく、低炭素社会に向け普及が求められる技術である。
2) SiCパワーデバイス搭載の高効率な蓄電システムの開発
スーパークラスタープログラムの参画企業であり、オスカー認定企業(後述)である株式会社アイケイエスは、これまで「太陽光の電力変換器」、「蓄電池の充放電器」、「電気自動車(EV)の電力取出装置」及び「系統(交流)電力接続装置」の4電力システムを一体化した蓄電システム「I_DENCON」をいち早く商品化してきた。
同社はスーパークラスタープログラムの研究成果として、従来のシステムにSiCパワーデバイスを搭載した蓄電システムを開発し、従来のシステムと比べエネルギー損失を4割程度削減することが可能となった。
3.京都市勧業館「みやこめっせ」への導入
今年度(平成27年度)、京都市勧業館「みやこめっせ」にSiCパワーデバイスを搭載した蓄電システムである「I_DENCON」(蓄電池容量10kWh)を地下駐車場に設置する。
これにより、太陽光電力との組み合わせにより非常用電源として活用することができ、また、平常時には電力のピークカットを従来のシステムよりも高効率に行うことが可能となる。
併せて、既存の電気自動車(EV)用の200V充電器(充電時間:7時間)と比べ、充電時間が短い充電装置(充電時間:2.5時間)を蓄電システムの付属機器として導入し、利便性の更なる向上につなげる。
※ ベンチャー購買新商品認定制度の活用
導入に当たっては、経営革新により持続的な成長が期待される将来性の高い中小企業を発掘・認定する「オスカー認定企業」の支援制度の一つである「京都市ベンチャー購買新商品認定制度」を活用。
この制度は、京都市が支援するオスカー認定企業等の優れた商品のうち、一定の要件を満たした物品を、優先的に調達できる「新商品」として認定し、積極的な購入と情報発信を図るものであり、ベンチャー・中小企業の販路開拓を支援するものだ。
株式会社アイケイエスは平成26年8月にオスカー認定企業に、蓄電システム「I_DENCON」は、平成27年3月に同制度の「新商品」に認定されている。
*1:スマートシティ京都研究会
情報通信技術(ICT)を活用して、エネルギーの最適化をはじめ地域の抱える諸課題を解決する京都ならではの「スマートシティ」を構築するため、産学公の連携により平成22年12月に設立。(座長:西川禕一(にしかわよしかず) 公益財団法人応用科学研究所理事長)
*2:オスカー認定企業
優れた技術や製品、サービスを持つ中小企業から、新商品の開発や経営管理の効率化、積極的な販路拡大等を通じて経営革新を図るための事業計画(パワーアッププラン)を募集・審査し、企業価値の向上により持続的に成長することが期待される中小企業をオスカー認定。(オスカー認定企業:156社(平成14年度~))
認定企業には、公益財団法人京都高度技術研究所のコーディネータ等によるサポートや、専門家の派遣など計画の実現に向けた総合的な支援を実施する。
*3:BEMS(建物エネルギーマネジメントシステム)
ビル等の建物内で使用するエネルギー消費機器をネットワーク化し、エネルギーの見える化や自動制御により、エネルギー需給を最適化するシステム
*4:CEMS(地域内エネルギーマネジメントシステム)
BEMS等のネットワークを構築し、地域全体でエネルギー制御・管理を行うことで、エネルギー需給を最適化するシステム
【関連サイト】
・株式会社アイケイエス
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