伊那市LoRaWANハッカソン ーina-hackレポート

長野県伊那市で開かれた、LoRaWANを活用したハッカソン。ハッカソンの成果は伊那市での実用化も目指した支援を行うということで、休日にもかかわらず、45名のエンジニアが伊那市に集まった。このうち、20名程度がハードウエアエンジニアであったということで、実際にIoTを活用したサービスを立ち上げたいという機運の高まりを感じる。(しかも、熊本、広島など遠方からも参加efしているということだ)

いなあいネットの事務局長、小牧氏によると、ADSL実証実験を国内初めに行った伊那市において、ADSLの実験から20年目となる節目に新たなテクノロジーを通じた取り組みをやりたいという思いから、今回の取り組みはスタートしたのだという。

伊那市LoRaWANハッカソン

農業事業者はマンパワーが足りていない、特に圃場の管理やビニールハウスの管理、獣害の監視など、人でが必要な場面が多いが、他の地域と同じく人不足の問題が深刻なので、技術の力をつかってどうにかしたい、という思いからLoRaWANを使うことを発想したのだという。

ただ、ADSLの時とは違い、すでにインターネットが普及していて、セルラー通信も十分にできる状態にある伊那市で、なぜLoRaWANという通信を選択したのかが気になるところだ。

LoRaWANの選択はコストと飛距離

伊那市LoRaWANハッカソン

その問いに対して、小牧氏は、「コストと飛距離」と言う。実際、セルラー通信用のモジュールはそれなりの金額がするし、月額通信料金もかかる。ここを自前のLoRaWANルーターとLoRaWAN用の安いチップセットを使えばコスト削減が図れるということだ。

また、実運用のシーンにおいては、「LoRaWANにこだわる必要はなく、LoRaでも良いし、部分的にWifiやSigfoxなどを組み合わせて使うでもよいと考えている。重要なことは、同じプラットフォームで使えるデバイスを含めた仕組みを構築して、他の地域でも利用可能なものとすることだ。」と事務局を担当するウフルの八子氏は述べた。

今回の実験やハッカソンではいなあいネットもウフルも儲けを無視してやっているということだが、それだけ課題が深刻で、ハッカソンを通した課題解決策の実現に期待がかかっているということなのだろう。

先日行われたLoRaWANの実証実験

今回のハッカソンに先立って、LoRaWANの実証実験を行ったということだが、基地局(というかルータ)は、いなあいネットのビルの2F会議室窓際において、飛距離実験を行ったところ、7.5kmを計測するに至ったという。

また、いなあいネットのコンクリート壁2枚を通した側については、6km飛んだということだ。

どちらも、このビルの壁以外のところではビルなどがない見通しがよい地域であることが前提で、いなあいネットのビルから1.5km程度にある伊那市街地ではビルの中などでは通信できないという状況もあったという。

しかし、ある程度見通しがよい農地や、盆地状のエリアなどでは横展開が可能だろう。

ハッカソンの前提

伊那市LoRaWANハッカソン

今回のハッカソンは、2日にわたって行われたが、Embedボード(ARM)、LoRaWAN(ソラコム)がすでに飛んでいる、温湿度、光、音、土中の水分、水の有無、心拍、加速度、モーション、ブザー、ボタンなどのセンサーが提供され、クラウド環境としてもenebular(ウフル)、Platio(インフォテリア)が提供されている。

伊那市LoRaWANハッカソン
ARM製のチップをベースにウフル竹之下氏が各種センサー情報やGPS情報を取得可能なボードを作成、LoRa通信部はソラコム製

開発者、企画者のチーム分けはくじ引きで行ったということだ。

ハッカソンの結果

1位:チーム7

伊那市LoRaWANハッカソン
低コストで高齢者にやさしいということを主題にし、取り組みが持続することを重要視したということだ。

実施アイデアとしては、

・くくりわなにセンサーをつけて、罠にかかったところを知らせる
・高齢者が倒れた場合に動かなくなったらメッセージを発報する
・くつにセンサーをつけておき、徘徊老人がどこにいるかわかるようにする

伊那市LoRaWANハッカソン

というものだ。情報がLINE上で表示されたり、技術的にもLoRaチップだけでできる限り実現しようとしたところがポイントだ。

2位:チーム1

伊那市LoRaWANハッカソン

田んぼの水に着目したチームだ。現在、田んぼの水は人が交代でみている。そこをセンサーを活用して水位を測定し、水門も動かすということだ。
短時間で作ったデモンストレーションだが、完成度が高く、技術的な実現性が高かった。

伊那市LoRaWANハッカソン
ARM 代表取締役社長 内海氏

総評として、ARM日本代表の内海氏は、「短時間で面白いものができた。楽しいことを実現するのがよい。」と総評を述べた。

伊那市での今後の取り組み

伊那市LoRaWANハッカソン

ウフルの八子氏によると、この取り組みは、年間を通じて今回を含め3回実施を予定しているということだ。(後2回は8/26,27 10/21,22)

また、来季には、「ジツゲンソン」と名打って、金融機関をも巻き込んだ実現のための取り組みも企画されているという(伊那市LoRaWANハッカソン実行委員会メンバーの鄭氏)

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