東芝は、複数の無線カメラからのフルHD映像をバケツリレー方式で遅滞なく伝送することを可能とした「無線マルチホップ映像伝送技術」を開発した。
同技術により、監視カメラの設置環境に応じて無線ネットワークを自律的に構成することができるため、監視カメラを自由に配置・移動することや複数ドローンカメラをつないだ広域な映像監視システムの構築が可能になるという。
開発の背景
防犯や防災などを目的に、建物や施設、市街地など様々な場所において監視カメラの普及が進んでいる。しかし監視カメラシステムの構築にあたっては、映像通信のための配線敷設に大きな手間がかかっていた。また、一度敷設すると、設置場所を頻繁に変えるなどの対応が容易に行えないという問題があった。
「無線マルチホップ映像伝送技術」の特徴
無線マルチホップ通信では、カメラの映像を、複数の無線機を介してバケツリレー方式で通信する。そのため、映像通信のための配線は不要となり、またアクセスポイントの通信範囲に縛られることなく無線カメラを設置することが可能だ。
一方で、変化の激しい無線通信を複数回行う無線マルチホップ映像伝送においては、通信回線の品質が大きく揺らぐため高精細な映像を遅延なく送信することが新たな課題となる。しかしこの課題に対して以下の方法で克服したという。
- 各無線機が自律的にネットワーク環境を観測し、安定した通信路を生成・維持する経路制御方式
- ネットワーク環境の確認処理の高速化手法
- 複数の経路を同時に利用する映像伝送方式
これらの技術により、5台の無線カメラを5ホップにつなぎ、フルHD映像(毎秒30フレーム)5本の1秒以内での伝送を実現。また、同技術をドローンに適用し、複数ドローンを用いた海上監視実験システムの実証実験にも成功した(国立大学法人 東京海洋大学 近藤研究室と共同で実施)。
【関連リンク】
・東芝(TOSHIBA)
・東京海洋大学(TUMSAT)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。