沖電気工業株式会社(以下、OKI)のグループ会社である株式会社オキシーテック(以下、OKIシーテック)と、株式会社ビィーシステム、コデン株式会社の4社は、港湾や湖沼、河川などで深浅測量を行う小型・軽量な可搬ボート型マルチビーム測深機「CARPHIN V(カーフィン ブイ)」を開発し、4社より本日から販売を開始する。
「CARPHIN V」は、小型・軽量な無人機船体に測深装置部を一体化することにより、従来の有人測量船では深浅測量が不可能な港湾や湖沼、小規模河川などをはじめ、さまざまな場所でマルチビーム(※1)方式の深浅測量を行えるというものだ。
また、自律航行機能により測定工数を1/2に削減できるほか、わかりやすいユーザーインターフェースで誰でも簡単に深浅測量が可能だという。
背景
港湾や湖沼、河川などの深浅測量は、従来からさまざまな目的・場所で行われてきたが、とくにハザードマップ作成などの防災の基礎データとなる詳細な水量・水底地形把握のニーズが高まっている。
近年、「観測史上最大」や「50年に一度」などと形容される突発的、局地的な豪雨が増加していることもあり、このニーズは有人測量船が入れないダム湖上流などの水深が浅い河川にまで広がっている。
また、国土交通省によるマルチビームを用いた深浅測量マニュアルの整備にともない、2017年よりICTを活用した港湾の浚渫(※2)工事が行われるようになり、測量会社のみならず海洋工事会社などからも、深浅測量に必要なマルチビーム測深機が注目されるようになっている。
「CARPHIN V」概要
今回、このような社会的なニーズを背景にして、OKIの水中音響センシング技術をベースとしたOKIシーテックのマルチビーム測深機、ビィーシステムのマルチビーム測深機ナビゲーションおよびデータ解析ソフトウェア、コデンの測深機を搭載可能なリモコンボートなど、3社それぞれが得意とする技術を結集し、「CARPHIN V」が開発された。
小型・軽量を特長とする無人機船体とすることで大人1名で運搬できるため、今まで測量が困難であった渓谷のようなダム湖上流の河川や、整地されていない浚渫工事現場でも測量が可能となる。
3次元深浅測量により水中の地形を測定することで、ダムの貯水量把握や港湾浚渫工事の出来形管理など、さまざまな用途への対応が可能となる。
また、GNSS(※3)使用可能エリアであれば、設定した測線(※4)上を自律航行して測定することができ、誰でも簡単に扱えるという。
1名で測定ができるため、測定工数は当社比で1/2に削減した。さらに、従来必要であった測量船への取り付け・キャリブレーション・取り外しなどの事前・事後作業も必要なく、測量コストの削減も可能だという。
「CARPHIN V」主な特長
- 小型・軽量:
- 約25kgの小型・軽量船体で大人1名での運搬を実現。あらゆる場所で使用可能。
- オールインワンシステム:
- 深浅測量に必要な機器(GNSS・動揺計・マルチビーム測深機)すべてを船体に装備
- すべての機器が一体構造のためキャリブレーション(※5)不要であり、作業時間の短縮が可能。
- キャリブレーション誤差による測深誤差がなく、誰でも簡単に深浅測量が可能。
- すべての機器はi-Construction(※6)対応。
- リモコンボート船体:
- 自律航行・自動回帰機能搭載。ボートコントローラーによるマニュアル操作も可能。
- 万が一の事故でも無人機なので人的被害がなく安全。
- 容易にバッテリー交換可能な構造で長時間の測量が可能。
- 測深機・ソフトウェア・船体すべて国産:
- 国内3社の開発で、問い合わせ・修理・保守・整備対応。
※1 マルチビーム:
船の左右両舷方向に扇状の音波を放射し、前後方向に指向性の鋭い多数の受波ビームにより反射音を受信することで、広い範囲の水深を測定する深浅測量方式。
※2 浚渫:
港湾・河川などの底面をさらって、土砂などを取り去る土木工事。
※3 GNSS(Global Navigation Satellite System/全地球測位衛星システム):
人工衛星を使用して地上の現在位置を計測する「衛星測位システム」のうち、全地球を測位対象とすることができるシステム。「衛星測位システム」としてGPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)などがある。
※4 測線:
深浅測量を実施する線のこと。測量エリアの深度に応じ事前に長さと間隔を計画し、測量時の測量船航行の目安となる。
※5 キャリブレーション:
測深装置部の音を送信・受信する送受波器の水平面と、動揺計水平面の傾き誤差を測り補正すること。
【関連リンク】
・沖電気(OKI)
・OKIシーテック(Oki Seatec)
・ビィーシステム(Be System)
・コデン(CODEN)
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