NTT西日本と日立製作所は、長崎県五島市にICTを活用した鳥獣害対策システムを導入した。同件は総務省「平成28年度補正予算 ICTまち・ひと・しごと創生推進事業」(※)を活用している。
※ICTの一層の利活用により、農業、医療、防災など各分野で地域が直面する課題解決に貢献し、各地域の産業や行政の効率化、生産性向上を通じて地域の活性化をめざす事業
1. 背景・目的
近年、イノシシ、シカ等の野生鳥獣の生息域拡大による農作物被害が深刻化しており、平成27年度の被害金額は172億円(引用:農林水産省発表「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成28年度)」)に達するなど大きな社会問題となっている。
また、野生鳥獣との不慮の接触により人的被害をもたらすこともあり、対策は急を要する一方で、狩猟免許所持者の高齢化が進んでおり、狩猟の効率化が課題となっている。
五島市においても、近年イノシシが海を渡って急速に生息域を拡大しており、平成27年から水稲被害が発生し始めている。猟師の人数も少なく効率的な対策の実施が急務となっていたため、今回NTT西日本と日立が連携し、五島市に対してIoTセンサーとGIS(地理情報システム)等のICTを活用した鳥獣害対策システムを導入した。
2. システム概要
同システムは、調査・捕獲区域に設置した出没検知センサーおよび捕獲検知センサーをGIS(Geographic Information System:地理情報システム)と連携させ、野生鳥獣の出没や捕獲などの状況をリアルタイムで通知・可視化する。
活用している技術の具体的な特長は以下のとおりだ。
出没検知センサー/捕獲検知センサー
野生鳥獣の出没や罠の作動をセンサーが検知すると、自動的に写真撮影を行い、宛先に登録した捕獲員にメールを送信するので、捕獲員は現場の状況を迅速に把握することが可能になる。
鳥獣害対策用GIS
出没検知センサーおよび捕獲検知センサーの情報をリアルタイムに収集し、地図上に可視化。また、罠や柵など対策設備の情報を登録することで、鳥獣害対策に関わる情報を一元的に管理することができる。
3. 導入効果
平成29年11月より同システムを五島市にて運用した結果、下記の効果が得られた。
①捕獲効率の向上
- 鳥獣がよく出没するエリアを可視化したことにより重点的に罠を仕掛けることが可能となり、センサーを設置した五島市福江島において、農作物に大きな被害をもたらしていたイノシシの捕獲頭数が前年度比5倍以上に増加した。
- 捕獲員が事前に罠の状況を把握した上で効率的に見回りを行うことが可能になった。
②鳥獣被害の低減
市街地にイノシシが出没した際には、出没検知センサーを市街地に移設し、該当個体の 出没エリアを把握したことにより、迅速な捕獲に成功し人的被害を未然に防ぐことができた。
③捕獲計画立案の高度化/外部情報提供の効率化
- 野生鳥獣の出没傾向の把握や対策設備の情報管理が容易になり、実態に即した捕獲計画の立案が可能になった。
- 野生鳥獣の出没地点などを地図画像として即時出力ができるため、鳥獣害に関する住民への情報公開や長崎県への報告が容易になった。
【関連リンク】
・NTT西日本(NTT WEST)
・日立(HITACHI)
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