物流をとりまく課題は様々あるが、根本的には荷物を運ぶ担い手が足りていないというのが主な課題だ。
鉄道貨物協会「平成30年度本部委員会報告書」によると、ドライバーは2017年度時点で約10万人が不足していると報告されている。また、同報告書によると、2017年度から11年後が経過した2028年度では、約28万人が不足するという試算もある。
荷物を運ぶ担い手が足りなくなると、例えば小売店では、売り切れになった商品をすぐに買い足したいというようなときに、すぐには届かないといったことが起きる。いわゆる欠品という状態になる。
しかし、もし適切なタイミングで商品を買い足すことができていれば、消費者がその商品を購入していて、お店の利益につながったかもしれない。荷物を運ぶ担い手が減少することで、物流機能が鈍化し、機会損失が生じる例だ。
では、荷物を運ぶ担い手が減少するのが問題なのであれば担い手を増やせばよいではないか、と思う。ただ、生産年齢人口が減少していく中で、人的なリソースに頼るというのはリスクがある。
考えられるアプローチとしては、荷物を運ぶ担い手の輸送効率を上昇させて、ドライバー1人あたりが運ぶ量を増やす、というものだ。
例えば、国土交通省の「自動車輸送統計調査」では2000年に50%だった積載率が、2018年には40%に落ちている。つまり60%は空気を運んでしまっている状態となっている。
このような非効率な輸送効率を、最大化していく方法としては様々あるが、本稿では共同配送について取り上げる。
共同配送とは
共同配送とは荷物を運びたいと考えている企業、いわゆる荷主が協力しあって、それぞれの商品を同じトラックやコンテナに積んで配送するというものだ。
ビール業界の共同配送は進んでいて、2017年9月からアサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリービール4社がJR貨物、日本通運と連携し、北海道・道東エリア向けの共同配送を開始している。
北海道エリアは1社だと物量がまとまりづらいので、共同での物流が進めやすいのだ。なお、この共同配送による効果は、1年間で、ドライバーの運転時間は約5,300時間、トラックの運行台数は80台、さらにCO2排出量は約330t削減される見通しだ。
2018年4月には北海道エリアだけでなく関西・岡山~九州方面もカバーするようになったようだ。IoTNEWSでは、以前、サッポロホールディングス ロジスティクス部長 松崎氏の講演をまとめているので、詳細は下記記事を参照されたい。
[参考記事] 物流課題に3つの軸から様々な対策を講じる ーオラクル主催サプライチェーン変革セミナー①共同配送のメリット
共同配送のメリットとデメリットを整理する。
メリット
- ドライバー不足の解消につながる。
- 輸送費が減少する。
- 排気ガスが減少する。
例えばこれまで2台で運んでいたものが1台に集約化されるとなると、1台分のドライバーが不要となる。
運行する車の数が減ることで、ドライバーの人件費や燃料費といったコストがかからなくなる。
最近よく耳にするSDGs(持続可能な開発目標)でも掲げられているCO2排出削減ができる。
デメリット
- 荷物の把握が難しくなる。
- 納品時間が固定化してしまう。
- 責任の所在がわからなくなってしまう。
2社以上の企業で共同配送するとなると、荷物の管理が難しくなる。物流システムを共有したり、新たな管理システムを構築する必要が出てくる場合もある。
1社単独であれば、融通をきかせられたが、2社以上となると調整が必要となってしまうため、午前着や午後着といった指定が難しい場合がある。
複数の拠点で荷物を積んだり、降ろしたりする必要があるので、荷物が汚れたり、壊れていたりする場合、登場人物が多く、責任の所在を明確にするのが難しい場合がある。
AIを用いた共同配送の取り組みもはじまる
日本パレットレンタル、群馬大学、明治大学は「業界横断型共同輸送マッチングサービス」に取り組んでいる。
日本パレットレンタルは異業種企業を結びつけ、共同輸送を実現することで、高い積載率を達成してきたが、物流機器に直面している昨今、これらの事例を個別の事例としてとどめておくのではなく、システマティックに物流業界全体に展開していく必要があると考えた。
そこで、AI技術を活用し、連携・協働するメリットが高い企業同士を結びつけるマッチングシステムを構築する。
なお、明治大学は輸送コストを算出するモデルの開発を行い、群馬大学は共同輸送マッチングシステムのコアエンジン(AI)の開発を支援するようだ。
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。特にロジスティクスに興味あり。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。