ディズニーの21世紀Fox買収にみる、コンテンツメーカーとコンテンツアグリゲーターの戦い

CESやIFAでも、最近のテレビの変化として、コンテンツアグリゲーターの躍進が見える。

具体的には、NetflixやHuluといった、コンテンツアグリゲーションサービスを行う企業が初めからチャンネルとして登録されているという状態になっている。

つまり、テレビというデバイスの価値を付加するもの(付加価値)として、これらのサービスが乗っているというのだ。

この流れにもっとも警戒しているのは、アップルであろう。もともとApple TV(さらにいうと、iTuens Store)という、コンテンツアグリゲーションサービスの草分け的存在であった。しかし、オリジナルデバイスにこだわっていると、テレビに標準搭載されたチャネルの優位性に劣ることが明確なので、アップルとしてもテレビの標準サービスの一つにはいらざるを得ない状態だ。

結果、サムスン、ソニー、LGといった世界シェアの高いテレビの最新機種には、Apple TVもチャネルを持つことになることがすでに発表されている。

ところで、現在のコンテンツアグリゲーションサービスの差別化とは何だろう。

これらのサービスを使ったことのある方であれば、すぐにわかることだが、まず持って「網羅性」だ。世界中の映画やドラマを固定の金額で見ることができることが魅力で広まったアグリゲーションサービスなので、網羅性が低いと「これが見たいのに見れない」と捨てられる結果になるのだ。

網羅性を高めるためには、強いコンテンツフォルダーからも採算性のあるコストでコンテンツを仕入れる必要がある。しかし、現在のようにTSUTAYAのようなレンタルビデオサービスを利用する人が減っている中、いかに強いコンテンツフォルダーといえど、コンテンツアグリゲーターの集客力を利用しないわけにはいかないという状況になっている。

そして、もう一つの差別化が「独自性」だ。これは、最近のアグリゲーションサービスがどこからも「オリジナルコンテンツ」が打ち出されていることからも明確だ。

なぜ、オリジナルコンテンツを作るのが差別化となるのかと言えば、同じコンテンツを同じ条件で仕入れることができたアグリゲーター同士は、コンテンツとして差別化することが難しくなるからだ。そこで、オリジナルのコンテンツを作って、「これを見ることができるのはうちだけ!」とするのだ。

一見すると、良さそうなこのアプローチだが、実は落とし穴がある。

コンテンツのオリジナリティという側面だけでいうと、そもそも世界中にファンがいる映画の製作会社が一日の長があるからだ。

もし、大手製作会社が手を組んで、「オリジナルコンテンツ(もともとオリジナルだが)」を自分たちだけで配信するようになったら、どうなるのだろうか。

コンテンツ力の低い製作会社や、過去の作品に関してはアグリゲーションサービスで(しかも低価格で)出すことができる。

その一方で、映画配給会社、各種映像サービス事業者とのネットワークや、ノベルティ製作・販売などにもノウハウがあり、既存のファンも多い大手製作会社が独自にサービスを開始したら。ある一定の期間新作をアグリゲーションサービスに提供せず、自社の視聴サービスだけで公開するとしたら、今のディズニー連合と同じだけの製作能力を持つ企業でないと競争優位性が生まれないということになる。

製作能力というのは、一本のコンテンツのクオリティはもちろんのこと、1年間に製作することができる作品の数もそうだ。

現在、ディズニーがどういう思惑で、マーベルやルーカスフィルムを買い、そして21センチュリーフォックス社を買収したのかはわからないが、こういう戦略であればその買収もうなづけるものとなる。

IoTもデータアグリゲーションサービスを売りにするような動きがある一方で、競争社会において、特別なデータを持つ企業がその流れに乗らないという考え方も出てきている。競争優位性を保つことができるのであれば、世の中の流れと反していることが、必ずしも良くない作戦とも言えないのだ。

一度公開し、エコシステムの中に入ってしまったデータを、簡単には非公開にすることはできない。

なぜなら、映画の製作とは異なり、IoTの生み出すデータは、リアルタイムかつ時系列データとなるため、エコシステムに組み込まれてしまったデータが急になくなると、そのエコシステム自体が崩壊する可能性が高いのだ。

それにしてもIoTのデータアグリゲーションとプラットフォーム化の流れ。競争が始まったばかりなのに、先々を見越しておかないといけない。という現実が我々を苦しめる。

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