身に着けられるIoT、ウェアラブルデバイスがたくさん登場している。
頭からつま先まで上から順に見ていくと、ヘッドマウントディスプレイ、スマートヘアバンド、スマートグラス、スマートイヤホン、スマートネックレス、スマートウェア、スマートウォッチ、スマートリストバンド、スマートシューズなど、体のありとあらゆる場所につけられるものがある。
ここでは、ウェアラブルデバイスの中でも一番ポピュラーであろう、腕につけるタイプのリストバンド型と時計型の活動量計の「米国と日本の温度差」と、それぞれの特徴を見ていく。
米国と日本の温度差
まず、多くの方が感じておられると思うが、日本ではAppleWatchやFitbitなどの活動量計はまだあまり普及していない。実際に活動量計をつけたことがある方でも「最近は使っていない」という方が多いのではないだろうか。現在では、ライフログを蓄積することに興味がある方や、スポーツに熱心な方がメインで愛用しているように感じる。
この活動量計のブーム(といってもまだ一部だが)はアメリカからやってきた。
アメリカで活動量計が大ヒットした理由のひとつは、日本とは比べものにならない高額な医療費だろう。外務省発表の情報によると、ニューヨーク市マンハッタンでは一般の初診料が150~300ドル、入院した場合は室料だけで1日数千ドル、貧血による治療と2日の入院で2万ドル、急性虫垂炎で入院し手術後腹膜炎を併発したケース(8日入院)は7万ドルとなっている。
高額な医療費のせいで自己破産するケースもあるというから、数千円~数万円で購入できる活動量計で自分の健康管理ができるなら、多くのアメリカ人が欲しがるというのもうなずける。このように活動量計はアメリカで大ヒットし日本でも話題になったのだが、既出のようなアメリカの医療費の背景をよく観察したうえで話題になったわけではなさそうだ。
日本に活動量計という概念がなかったわけではなく、古くは歩数計いわゆるおなじみの歩数計(インターネットには繋がらないが)があり、それが進化しオムロンやタニタからスマートフォンのアプリと連動するものも登場している。
国産の身に着けられるウェアラブルとして登場したデバイスは、NTTドコモとオムロン ヘルスケアの合弁会社であるドコモ・ヘルスケアが開発・販売しているドコモ・ヘルスケア「ムーヴバンド」(2014年1月発売)、ソニーのSmartBand SWR10(2014年5月)などがある。
米国ナンバー1人気 Fitbit
Fitbitは、運動している状況や睡眠の状態などを計測する活動量計で、米FitFit社は製品だけではなくオープンAPIも提供している。
2007年にサービスを開始し、フィットネス分野の新たな市場を開拓した。NPDグループの調査によると2014年には米国フィットネスアクティビティトラッカー市場の64%を占めるまでにいたり、2015年3月の時点で2080万のデバイスを販売している。
Fitbitの公表によると、アクティブユーザーは、2012年60万人、2013年260万人、2014年670万。売上げは2011年1450万ドル、2012年7640万ドル、2013年2億7110万ドル、2014年7億4540ドルとなっており、すさまじい成長となっている。
Fitbitが日本に上陸したのは、2013年。米Fitbit社とソフトバンクBBが共同で、日本国内販売をスタートした。そして、2015年6月にニューヨーク証券取引場(NYSE)に上場し、50%以上の急騰を見せたことが世界中の話題になった。2013年には、ナイキのNIKE+ FUELBANDも国内で販売されている。
Fitbitは大きく3つのターゲットに分けて販売している。一般ユーザー向けの「スタンダード」、ライトなスポーツをする人用の「アクティブ」、しっかりトレーニングをする人向けの「パフォーマンス」だ。
スタンダードユーザー向けでは、歩数、カロリー、距離のデータ蓄積、時計機能、睡眠管理、目覚まし、アクティブな時間を主にライフログして残すことができる。これらの機能は他のリストバンドタイプのウェアラブルデバイスでも標準的な機能だ。
アクティブ、パフォーマンスユーザー向けでは、上記に加え、心肺継続測定が追加され、日常生活で常に使い続けられるような、着信通知、テキスト通知、ミュージックコントロール、、GPS追跡などがついている。
ファッションブランドFossil Groupが買収したMisfit
Fitbitの後発で、2011年に創業したMisfit社。カジュアルでファッショナブルとうたう活動量計『MISFIT FLASH』(ミスフィット フラッシュ)が、2015年7月30日に日本に上陸した。完全防水で、充電不要で4か月間持つという手軽さだ。
Misfitは、1983年にAppleの最高経営責任者(CEO)に就任した、John Sculley(ジョンスカリー)らが立ち上げた(その後、1985年にスカリーがあのスティーブジョブズを追い出す形になったことは、ご存じの方も多いだろう)。そのMisfitが先日米国時間11月12日に、Fossil Groupに2億6000万ドルで買収されるという計画が発表された。
Fossil Groupは、Adidas、Emporio Armani、DKNY、Dieselの時計も作っており、10月には「Fossil Q」シリーズとして、Android Wear搭載のスマートリストバンドとスマートウォッチ4モデルを発表している。
FossilでCEOを務めるKosta Kartsoti氏は、「Misfitの買収により、Fossil Groupはスタイルとテクノロジーをリードする存在になる」と語っており、ファッション業界もテクノロジーを取り入れていくことがトレンドになることを伺える。
新商品のMISFIT SHINE 2(12,800円)は、2016年1月に発売される。MISFIT SHINE 2は、航空機に使用される物と同グレードの陽極処理アルミニウムが使用され、水深50mまでの防水対応。3軸加速度センサーと3軸デジタルコンパスによって、より正確な活動量と睡眠を記録することができる。充電は不要で、電池を利用し最大約6ヶ月使用可能。
測定できる内容は、歩数、消費カロリー、距離、睡眠の質と時間。時計機能や、非活動的な時間が続いた時に適度な運動をするようにお知らせしてくれる「MISFIT MOVE」というバイブレーション機能や、電話の着信・テキストメッセージ受信を振動で教えてくれる機能も搭載。
IBMのコグニティブ・コンピューティングWatsonが予想する今年最も望まれているホリデーギフト、AppleWatch
IBMが18日に、ホリデーシーズンに生活者がどんなプレゼントを欲しがっているか予想するアプリ(iOS)「Watson Trend」を公開し、そのランキングでApple Watchが1位を獲得した。
ちなみに、このWatson Trendは、ソーシャルメディア、ブログ、評価とレビューなど、数千万人の感情から結果を導き出す。静的ランキングを提供する他のアプリケーションやリストとは異なり、Watson Trendは消費者が検討しているか、購入した製品についてどのように感じているかを明らかにし、自然言語の機械学習技術を使用して特定しているという。
機能としては、FitbitやMisfitのように活動量計とは違い、電話やメール、SNSからの通知の受け取り、簡単なメールの返信、Siriに話しかけること、ウォレット機能により飛行機の搭乗券やクーポンなどの利用、AppleWatch用に開発されたマップやミュージックコントロール、AppleTVやMacのリモートコントロール、文字盤の変更など、できることが多い。
もちろん活動量計としての性能も十分だ。心拍センサー、加速度センサー、GPSが搭載され、アクティブカロリー測定、消費カロリー計算、歩数カウント、移動距離、移動速度など全ての活動の履歴がライフログとして残すことができる。さらに自分の最近の履歴にもとづき、1日当たりに消費するアクティブカロリーを1日のムーブゴールとして提案してくれる。
「Strava GPS ランニング&サイクリング」「Pocket Yoga」「Runtastic Six Pack」などの運動に合わせた専用ワークアウト用アプリもある。例えば、Pocket YogaならヨガをしているときにApple Watch上に現在のポーズの絵、ポーズの名前、残り時間、消費カロリーを表示させることができる。
今後の活動量計はどうなるのか
上記のブランド以外にも多くの活動量計が登場しているが、身につけるモノはもっとデザインや使い勝手を考える段階にきていると思っている。
普段アナログな腕時計をしている人が、リストバンド型や時計型の活動量計をつけるのは抵抗があるだろう。また、Misfitのようにデザイン性をうたっていても、カッチリスーツを着ている社会人の腕にはチープに見えるだろう。しかしやっと最近、タグ・ホイヤーやHUAWEIがこれまでのアナログ時計のデザインをしたコネクテッドウォッチを発売し、大人が腕につけるのに抵抗がないデザインのものも登場してきた。
さらに、AppleWatchのようにデザイン性が高く多機能だとしても、充電が1日持たないとなると毎日つけるのは億劫になってくる。活動量計がこれまでの時計の代わりだと位置づけるならば、充電については最優先で、生活者の身になって考える必要がある。
ただし、そもそも考えてみてほしい。
アメリカで大ヒットした理由は、医療費が高額で病気が原因で自己破産してしまうこともあるという切羽詰まった状況があるからで、アメリカに住む人にとって活動量計は、どうしても手に入れたいものなのだ。
では日本ではどうだろうか。
ヒントはたくさんあるが、ひとつはクルマの保険にあるかもしれない。IoTの進化で、安全運転をするクルマは保険料が安くなるという取り組みが始まっている。
生命保険は住宅ローンの次に大きな買い物と言われるくらい、一生でみると大きな金額だ。もしあなたが健康そのものだとしたら、もっと保険料は安くてもいいのではないか、と思ってもおかしくはないだろう。しかし保険会社は、あなたの一生の健康状態をリアルタイムで知る術は現状ない。ここに活動量計が役に立つ可能性がありそうな気がする。
毎月の健康状態が良いなら保険料が安くなるとしたら?
保険会社としては生活者から選んでもらう差別化になるだろうし(今すぐなら)、生活者から見たら健康でいることをもっと頑張り、保険会社へアピールするために活動量計をつける人が増えるのではないだろうか。
生活者が欲しいと思っているものを作らないと、一過性のモノで終わってしまう気がしている。着眼点を変えて、日本向けにマーケティングをした、魅力的な活動量計の登場を期待したい。
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