2014年に話題となった、アイス・バケツ・チャレンジを覚えているだろうか。
マークザッカーバーグ、ビルゲイツなど多くの著名人が、バケツに入った氷水をかぶる動画が世界中で流れた。
指名された人物は、バケツに入った氷水を被るか、ALS協会に100ドル寄付をする、もしくは両方を行うというものだ。
そもそも、このALSという難病だが、脳から筋肉に出す命令が伝わらなくなり、例えばコップが持てなくなったり、立てなくなったりしていく。さらには、呼吸するための筋肉も動かせなくなっていく恐ろしい病気だ。
今回、インタビューした武藤 将胤(まさたね)氏は、2013年に難病ALSを発症し、2014年に宣告を受けた。
そして、どんどん体が動かなくなってきているのだが、目が動かなくなるのは後の方だ、ということを知り、目線を使って様々なデバイスを動かすことで、自分の生活を変えようとしていたのだという。
その後、JINS MEMEと出会い、2年の歳月をかけて、目だけで、スマートフォンのアプリを動かすということを実現したのだ。

「JINS MEME BRIDGE」と呼ばれるアンドロイド用に作られたこのアプリ、JINS MEMEを装着すると、目の動きだけでアプリを操作することができ、瞬きで写真撮影をすることができる。さらには、Hueなどの家電を操作し、Spotifyを操作したり、DJやVJになることができるのだという。
さらに、6/19(火)、このVJ/DJ機能を使って、豊洲PITで実際にVJ/DJプレイをやるのだという。
■名称:MOVE FES. 2018 Supported by Hard Rock Experience
■開催日時:2018年6月19日(火) 18:00(開場)/19:00(開演)〜22:00(閉演)
■会場:豊洲PIT(東京都江東区豊洲6-1-23)
http://toyosu-pit.team-smile.org/
■販売チケット価格:前売り券¥4,000/当日券¥4,500■イープラス(MOVE FES.)
http://eplus.jp/sys/T1U89P0101P006001P0050001P002261763P0030001P0006
■ローソンチケット(MOVE FES.)
https://goo.gl/wfqY6H■主催:一般社団法人WITH ALS ■共催:株式会社REBORN
■Fundraising partner:一般社団法人せりか基金
■協賛:Hard Rock Experience
■後援:株式会社J-WAVE 一般社団法人チームスマイル
■お問い合わせ:move.fes@gmail.com
インタビュー

小泉: なぜ、JINS MEMEを使ったVJやDJ(クラブなどで、映像や音楽を流す人)をやろうと思ったのですか?
武藤: 実は、2年前にJINS MEMEを活用してVJとDJをやるアプリを作りたいという自主提案から始まりました。ALSの患者は、眼球の動きは最後まで残るといわれていて、それを使って日常生活の意思伝達を行っているケースが多いのです。そこで、テクノロジーを新たにデザインをすることで、日常生活は当たり前として、もっといろんなことができるだろうと思いました。
そして、すべての人に表現の自由があるだろうということでVJとDJにチャレンジをしました。
小泉: 目を使った文字入力の操作を行うものもたくさんありますよね?
武藤: 他にもいろんな目で操作ができるものを試したのですが、障がい者用というイメージを払拭したかったというのと、PCありきではなくスマートフォンありきの方が利便性が広がるのではないかと思ったのです。そこで、JINS MEMEを使ったアプリケーションの開発を行うことになりました。

例えば、瞬きでカメラの撮影をできるようにしたり、自分でアウトカメラとインカメラを切り替えられるようにしました。ほかにもHUEを使えば、目で照明のオンオフ、カラーリングの変更や、Spotyfyでも再生・停止・送りなどができるのです。他にも、赤外線を記録させることでエアコンやテレビのリモコンなども自分の目の動きでできるようになりました。

障がい者用アプリという見せ方をしたくなくて、ボーダレスに誰でも使えるものを作りたいという気持ちでつくりました。
このご時世、使えるテクノロジーはたくさんありますが、大事なことは、「使い方のデザイン」だと思っています。
私であれば、障がい者という視点で、どういうモノが必要かを考えられるのです。
また、このシステムのソースコードも公開しています。JINSと共同でワークショップを行ったりもしていて、エンジニアにはどんどん新しい機能を作ってほしいという思いがあります。
小泉: いつごろからこのDJ/VJ機能を使い始めたのですか?
武藤: 2016年9月にALSの啓発を目的にした音楽フェスである、MOVE FESというイベントで、一番初めにこれを使ってPLAYをしました。
今年は、6/21の世界ALS DAYを前にして、6/19に同じMOVE FESでPLAYします。また、この場で、EYE VDJというコンセプトから始まったミュージックビデオを世界ALS DAYで公開するという取り組みも行っています。
具体的には、「目で奏でるミュージックビデオ」、という位置づけのクラウドファンディングをCAMPFIREで行っているのです。
小泉:実際の操作を見せていただけますか?
武藤: 例えば、カメラモード。目で切り替えることができたり、撮影したりすることができます。
DJ/VJでは、目の左右がフリック、瞬きが決定ボタンになります。首を傾けるとJINS MEMEのジャイロセンサーが働いて一個前の画面に戻したり、長尾氏のように少し長めに首をかしげることで一時停止したりできます。
実態の音楽はPCに入っているので、スマートフォンとJINS MEMEで操作をすることになります。
いわゆるIoTデバイスの「ブリッジ(橋渡し)」になるアプリケーションなので、「JINS MEME BRIDGE」という名前のアプリにしました。
小泉: 以前J-WAVEの収録でお会いした時、いろんなことをやられているとおっしゃってましたが、こんなことまでやられていたのですね。
武藤: どんどん精度を上げると同時に、活用できる幅を広げるということをやっています。

小泉: この実際のPLAYが6/19に観れるわけですね。
武藤: そうです。実際の映像をより多い人に見ていただくために、世界ALS DAYでも公開される予定です。
小泉: 私も伺おうと思います。今日は、ありがとうございました。
実際の必要性から生まれたウエアラブルデバイスの活用。専門家にも入ってもらいチームを編成し、ここまで実現したという。ディスプレイありきでのスマートフォンのタップが当たり前の昨今、音声認識だけでなく、こういった目の動きを活用して新たな可能性が見えてくる。
例えば、保守要員のサポートに使うウエアラブルグラスなどの操作にもこういったユーザインタフェースが応用できるだろう。
難病といわれるALS。そんな境遇に負けず、テクノロジーを活かして自分の生活を変えていく、そのエネルギーを直接見るために、豊洲PITに足を運んでほしい。

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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。