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Web3とは何か、デストピアか、ユートピアか?

企業:

Web3は、「インターネットの次の時代」として期待されるものだ。

流行りの「メタバース」や「仮想通貨」「NFT」など、キーワードが多すぎて、混乱する人も多いので、一つずつ丁寧に解説していく。

そして、「Web3はユートピアなのか、それともデストピアなのか」について、みなさんと一緒に考えていきたい。

既存のインターネット産業への不満

まず、「インターネットの次の時代」として期待されるWeb3、期待があるくらいだから、現状に不満もあるわけだ。

どんな不満なのかというと、よく言われているのは、いわゆる「GAFAによるネットの支配構造」。

GAFAは、インターネット黎明期から急速に成長し、我々の生活になくてはならないサービスを次々立ち上げている。気づけば、

  • 検索はGoogle
  • メールもGoogle
  • スマホはアップル
  • SNSはInstagram
  • ECはAmazon

と、我々のインターネットライフは、一部の企業の作ったプラットフォームの上で実現されている。

私などは、すごく便利だし、いろんなサービスが出てくるより、一個にまとまっていた方が、「めんどくさくなくて楽」と考える性格なのだが、独占的な状況が起きると、振り子のように、「民主化」への声が上がるようになるものだ。

近代の絶対君主時代、君主と結託した貴族と僧侶を支柱とする体制が確立。一般庶民は政治上の発言権すらなかったという。しかし、17世紀の啓蒙思想や自由主義の考え方をうけ、また、産業が発展する中で、一般庶民の中から高い教養を持ち、裕福な人が生まれた結果、政治的自由を求めて民主主義運動が始まったのだ。

この歴史になぞらえて、インターネットプラットフォームを一部の企業が独占する状態から、解放を望む人が登場しているというわけだ。

しかし、この考え方には、2つの重要な視点がある。

1つ目が、「嫌なら使わなくていい」という視点。Googleでなくても検索サービスはたくさんあるわけなので、無理に使う必要はない。つまり、実際は絶対君主時代のような強制力は働いていないということだ。

なので、解放というけど、「そもそも支配されていない」という実態がある。Amazonを使わなくてもECサービスはたくさんあるし、FacebookやInstagramも無理に使う必要もない。

そして、2つ目が、「ネットの力学は勝ち組と負け組をくっきりわける」という視点。

ネットビジネスは、皆さんがネット上での「行動履歴データ」を活用して大きくなっているというところがある。

その結果、重要なデータをたくさん持っている企業が、相対的にクールで、便利なサービスを作りやすい、という状況を生み出すわけだ。

クールで便利なサービスに人は集まり、結果、人が集まらない負け組のサービスはデータも集まらないので使いづらい、便利さに欠ける。となり、勝敗がくっきりわかれる。

web3とはなんなのか?

「無理に現状を変える必要はない」ということも分かった上で、あえてGAFAによる独占的な状況を崩壊させるには、何が起きたら良いというのだろうか?

この一つの解として、期待されるのがWeb3なのだ。

インターネットの登場前後で、社会全体の構造が大きく変わり、その流れの中で力をつけたGAFA。この状況を変えるのも、やはり「社会全体の構造改革」しか有り得ないのだ。

インターネットは世界中にあるサーバをネットワークで繋いで、実現されるもの。
大量のデータは、世界のどこかに集められ、AIが分析し、活用されている。

しかし、社会インフラとなったインターネットにおいては、個人のプライベートな情報、例えば

  • どこに住んでいるか?
  • 何を買ったか?
  • どこに行ったか?
  • 誰と友達か?

といったさまざまな情報を、「誰かが管理している」と思うのが「気持ち悪い」と考える人にとっては、このインターネットの便利さが生み出す、管理社会のようなデータの一極集中を嫌がるワケだ。

一方で、Web3という概念の場合、あらゆるデータを分散管理する。つまり、自分の手元に置くという考え方になる。

プライベートな情報は、それぞれ個人が管理して、サービスを受けるのに必要な情報だけを、一部公開してプライバシーを守るのだ。

web3を提唱したGavin Woodによる定義でも

web3提唱者、Gavin Woodによるweb3の定義(抜粋)
  • 公開されると想定される情報は、公開される
  • 合意されたと思われる情報は、合意記録簿に記録する
  • 非公開と想定される情報は、秘密にし、決して公開しない

としている。

Web1.0が「読むインターネット」Web2.0が「読み書き可能なインターネット」とされるのだが、Web3では、Web2.0で発展したインターネットの便利さの恩恵は受けつつも、自分のデータは自分が守るという、分散型の社会を実現しようとする考え方なのだ。

実は、技術的に見ると、こういう発想は間違っていて、web2.0まではいわゆるインターネット技術がベースとなっているのだが、web3はブロックチェーン技術を基にしていることが重要だと私は考える。

この技術的視点の重要さは後ででてくる。

本当に、web3はデータの管理を個人に取り戻せるのか?

まずは、Web3の基本的な考え方をお話しした。

Web3によって、誰か絶対君主が中央集権的に集めた我々のデータを、あたかも我々個人が取り戻したような感覚が持てることが重要ということだが、この考え方、本当にそうなのだろうか?

ネット上で、「何かをしたい」と思ったら、結局サービス事業者のプラットフォームに、「ユーザ登録」をせざるを得ないので、ユーザ登録をしたアカウントを使えば、サービス提供者は、いくらでも我々の行動は追うことができる。

できることがあるとすれば、氏名や住所など、匿名性を担保することぐらいだ。しかし、サービス提供企業からすれば、「名前がなんであるか」などは特に意味がなく、すでに、「住所ですら物を運ぶ企業以外には興味がない」こととなってきているし、年齢によってセグメントされることもなく、性別は意識されなくなりつつある。

例えば、Googleは、「あなたがどこに住んでいる誰なのか?」という視点ではなく、「あるGoogleアカウントやブラウザを持っている人が、インターネット上でどういう行動をしたか」が重要だと思っているのだ。名前や居住地を取得されるじゃないか、と思う人もいるかもしれないが、それもあるアカウントの行動を追うという意味で必要なだけだ。

正直、現実世界のような距離や空間に縛られた考え方を基に、個人情報を詳細に欲しいと考えること自体が「古い」と言わざるを得ない。

web3の価値

しかし、Web3によって実現できる価値について、Gavin Woodは、2018年のブログでこう言っています。

「例えば、オンライン決済の現状を考えてみてほしい」
「私たちは、自分で対価を払う権限さえない」
「金融機関に連絡し、決済代行をしてもらわなければ、自分で水道料金を払うことすらできない」

金融機関に連絡し、決済代行をしてもらわなければ、自分で水道料金を払うことすらできない
金融機関に連絡し、決済代行をしてもらわなければ、自分で水道料金を払うことすらできない現状

しかし、仮想通貨が使えるWeb3の世界では、「ウオレット」という考え方がある。

ウォレットは、財布のことだが、仮想通貨をオンライントレード企業などにあづけている場合は「ホットウォレット」。インターネットに接続できない環境に持っている場合は「コールドウォレット」と呼ぶ。

いずれにせよ、ウォレットというと、自分の仮想通貨が入っているお財布だと思ってほしい。

さて、金融機関の決済代行サービスを使わないと水道代も払えないという話に戻す。web3の世界では、

「金融機関を介さずとも、ウオレットから、別のウオレットに送金できる」

となる。

金融機関を介さずとも、ウオレットから、別のウオレットに送金できる
金融機関を介さずとも、ウオレットから、別のウオレットに送金できる状態

水道会社からすれば、住民一人ひとりを契約により管理しているにもかかわらず、水道会社にみんなが車や徒歩でお金を払いにくることは現実的ではないので、金融機関やその先にあるコンビニに支払い代行を頼むのだけど、これが、web3になると、個人のウオレット、水道会社のウオレットを直接結ぶことができるので、ウオレット間でダイレクトに支払うことができるということだ。

もう少し言うと、web3では、契約もデジタル的に行い、契約の実行はプログラムが行う。

そして、契約する際に、我々個人が、自分のウオレットを登録し、支払い日や支払額がメーターによって変動することを了承することで、あとは、その契約に従って自動的にお金が移動する。

もし、残高が不足していた場合は、自動的に契約が破棄され、自動的に水が止まる、となる。

全てがデジタルで取り交わされた契約(ルール)に基づいて、自動的に条件分岐を行い、行動をするというシンプルな状況が生まれることがわかるだろう。

web3的に企業を作る

他の例についても紹介する。

会社は自社の発展のため、元手となる資金を集めようと考えるのが、現在であれば株式上場をすることで、広く出資を募ることができる。

Web3の社会では、ある一定の契約(ルール)を作り、ウオレット間の送金で資金を集め経営することができる。

業況がよくなってきたら契約に従って、自動的に利益を配分する。ということが可能になるのだ。

これは、株式上場の概念も必要がなくなるし、本当に応援したい企業に個人や企業がウオレットから直接資金提供を行い、契約に従ったメリットを享受すればよいということになる。

つまり、「100万円の仮想通貨を投資するので、業績が3%上がったら、利益の0.1%を私のウオレットに入れてください。」といったプログラムが仕込まれている契約を結べば良いだけなのだ。

ここまで聞くと、勘の良い人は、「今でもこれに近いことって実現できているんじゃない?」と思うかもしれない。

確かに、web2.0でも契約書はあるし、長い利用規約にチェックして会員登録をする。その利用規約に従ってサービス提供される。となる。

規約に従ってサービスが止まることだってあるはずだ。

web3はデストピアか、それともユートピアなのか

しかし、web3を実現する上で、欠くことのできない技術がある。

これが、ブロックチェーンという技術だ。

これは、デジタルを使うことで、さまざまなやり取りの正当性を担保し、履歴を残す技術で、仮想通貨やNFTなど現在話題になっているキーワードはすべてこの技術の上で成り立っている。

現在ある、Web3的発想のサービスは、その多くにおいて「実際の仕組みは中央集権的である」と言える。

なぜなら、先ほどの水道局の例で言うと、どこかの企業が中心となって、水道局の契約決済システムをつくる。そして、利用者はインターネット上で契約を結ぶ、支払いについては、登録したクレジットカードから自動的に引き落とされる。引き落としがなければ、水道が止まる。

これは、Web2.0的なサービスといえるが、利用者からするとこれで困ることはほとんどないはずだ。

実際は、決済をする際、クレジットカード会社が水道局から決済手数料を引いているので、水道局からすると利益が減ることになる。そこで、水道局は手数料分を水道料金に上乗せして、我々に割高なお金を払わせることで、水道局の利益は確保しようとするかもしれない。

一方で、Web3の場合、ウオレット間でデータとなったお金が、契約に従って移動するだけなので、手数料は一切必要がなくなる。

こういう、なんらかのサービスの中間に入って、ピンハネしている業者はWeb3により完全に駆逐されるのだ。

これは、とても良いことだと言い切れるだろうか?

水道局から見ると、これまで集金トラブル対応や、クレジットカードの期限切れなどの水道局からみたら本業とは違うところは、決済代行をしている金融機関がやってくれてた。

しかし、Web3になると、すべて水道局がやる必要がでてくる。

もちろん、ドライに、契約が守られなければ、即水道を止める、ということも可能で、これであれば、Web3はメリットしかないわけなのですが、本当にそれでいいのだろうか。

すでに、Web3に対し、大手のベンチャーキャピタルは巨額の投資をしている。

Twitterの創業者であるJack Dorsey氏らは、「結局巨大企業が業界を支配することになる」のではないかと言っている。

また、Web3の根幹となるブロックチェーンのソリューションは、現状維持コストがかなりかかる状況で、現状のような中央集権型の方が、データをネットワーク上で物理的にも効率的に配置できるので、我々生活者にとっては、現状のやり方の方が有利ではないか、という考えもある。

みなさんは、どう考えるだろうか。

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