現在、雑誌の編集作業では編集者等が記事の内容や文字数、画像サイズ等を検討し、毎号新たにページレイアウトを制作している。固有の「雑誌らしさ」を出していくため、各雑誌のデザインポリシーやブランドイメージに合致したレイアウトにすることが重要であり、その制作ノウハウや暗黙知を複数の編集者で共有して、継承していく必要がある。また、伝統を維持するだけでなく、今までにない新たな誌面の追求も重要である。
そこで、大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、株式会社エー・アンド・ユーおよび株式会社新建築社と共同で、雑誌の原稿となる画像とテキストを入力すると、その内容や雑誌の持つブランドイメージにあった誌面レイアウトを、AIを活用して自動生成する技術を開発した。なお、同技術は7月27日発売の雑誌「a+u」(エー・アンド・ユー、Architecture and Urbanism、建築と都市)8月号のレイアウト制作の一部に活用されている。
今回DNPは、多様な印刷物の制作・製造で培ってきた画像処理や自然言語処理、データ解析などの技術とAIを掛け合わせて活用することで、「雑誌らしさ」に合致した複数のレイアウトを自動で生成し、提示できる同技術を開発した。同技術の主な特長は以下の通り。
- 雑誌の特長に合ったレイアウトを自動生成し、創造的な編集制作と業務の効率化を実現
- 自由度の高いレイアウトにも対応が可能
- AIが雑誌のデザインイメージを数値化して、より良いレイアウトを提示
DNPは「a+u」の過去15年分の誌面データをAIに学習させることで、「雑誌らしさ」をスコア化するモデルを開発した。このモデルを活用し、テキストと画像のデータを入力することで、雑誌のブランドイメージに合った誌面レイアウトが自動的に提示されるようになる。提示されたレイアウトを参考に、編集者、カメラマン、ライター等が活発な議論を行うことで、新しいアイデアが引き出され、誌面の質の向上につながる。また、編集者が毎回レイアウトを一から検討して制作する必要がなくなり、業務効率の改善につながる。
同技術は、写真の配置や文字組などが非定型で自由度の高い雑誌レイアウトにも対応できる。あらかじめ定められたテンプレートに、画像や文章を流し込む自動組版技術とは異なり、多様なレイアウトを生成することができる。
蓄積した雑誌レイアウトのデータから「雑誌らしさ」を評価スコア化するとともに、AIがどの部分に着目したかを色で表示する「ヒートマップ」が提示される。これを客観的指標として活用することで、制作者間のコミュニケーションを促し「雑誌らしさ」の共有を図ることができる。
3社は今後、同技術を「a+u」の編集に本格的に活用するなかで、誌面レイアウト自動生成システムの実用化を図る。また、DNPは雑誌・書籍に限らず、パンフレットやカタログ、広告などへの利用も想定した、AIによる出版・編集支援サービスの構築を目指す。
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