ヤフー株式会社は、検索やメディア・ECなどのサービスを提供しており、そこで蓄積されたユーザーのデータを統計的に分析したビッグデータとAI技術を用いて様々なサービスの改善を続けている。近年は、異なるサービスのビッグデータを横断して分析することで、より大きなサービス改善を見込めることがわかってきた。
このようなビッグデータ活用を社外に対しても広げることで、企業や自治体へ新たな価値を創出できると考え、約60の企業・自治体と実証実験を進めてきた。その結果、商品開発にビッグデータを活用した商品は、過去一番売り上げた商品と比較して初週の販売数を大きく上回るなど多くの成果を得ることができた。
このような実証実験結果をふまえてヤフーは、ヤフーの多様なサービスから得られるビッグデータを活用し、企業や自治体向けに事業の創造や成長支援、課題解決などにつなげるインサイトを提供するデータソリューションサービスを開始した。
同サービスは、ヤフーのビッグデータをブラウザー上で自身で調査・分析できるツール「DS.INSIGHT」と、個々の企業・自治体の要望に応じてDS.INSIGHTでは提供していないビッグデータも含めた分析結果の提供や、活用支援のためのコンサルティングを提供する「DS.ANALYSIS」の2種類から提供を開始し、今後ラインアップを増やしていく予定だ。
DS. INSIGHTは、ヤフーの各種ビッグデータを自身でブラウザー上で調査・分析できるダッシュボードサービスで、生活者の興味関心を可視化する「DS.INSIGHT People」と、エリア特性や人流を可視化する「DS. INSIGHT Place」の2種類から提供を開始する。利用料は10万円~(税別)/月である。
- 生活者の興味関心の可視化(DS. INSIGHT People)
- エリア特性・人流の可視化(DS. INSIGHT Place)
ヤフーのメディア事業のビッグデータなどを元に、生活者の興味関心を可視化する機能である。人気キーワードランキングといった俯瞰的な情報から、特定キーワードの「関連語」「時系列推移」「性年代などの属性分布」といった詳細情報まで分析できるツールだ。
アンケートを用いた既存の市場調査を行う場合、調査設問の設計者がイメージできる範囲に調査結果が限定されてしまうという課題がある。同ツールでは、調査設問を設計する必要がないため、生活者の顕在化しているニーズに加えて潜在的なニーズやトレンドも知ることができる。また、調査実施・集計などの時間がかからないため、リアルタイムに把握することも可能だ。商品・サービスの企画などを支援する市場調査などの利用方法を想定している。
ヤフーに蓄積された位置情報データなどを元に、特定エリアにおける生活者の実態や動きをまとめて可視化する機能である。指定したエリアにいる人々の属性・特徴や流出入人口の推移、検索傾向などをもとにした地域の方の興味関心、地域・スポット間の人流規模などを把握することができる。
エリア特性・人流いずれの情報も、性年代などの属性分布に加え興味関心もひもづけて可視化できるため、ファッションや趣味趣向などの特定テーマで区切った層の分析も可能である。街づくりやイベント運営、出店計画などを支援するツールとしての利用を想定している。
DS.ANALYSISは、ツールとして提供していないヤフーのビッグデータも含めた分析、および事業への活用支援を行うコンサルティングサービスだ。個々のニーズに合わせて様々なビッグデータを組み合わせ、データによる課題解決を目指す。
なお、ビッグデータを活用した実証実験の成果(一部)は以下の通り。
- 三越伊勢丹
- 東急不動産
- ANAセールス
- 京都市/(公社)京都市観光協会
三越伊勢丹では、ヤフーのビッグデータを活用し、子育て中の女性の服装に関するトレンドや悩みを導き出して新商品開発につなげた。具体的には「抱っこひもをするとポケットが使いにくい」「自転車に乗りにくい」といった悩みを解決するロングスカートを開発し、9月25日から販売している。過去一番売り上げたスカートと比較し初週の販売数は約2.6倍になった。
東急不動産では、新規オープン予定の商業施設における売り場づくりにヤフーのビッグデータを活用した。従来、周辺の出店動向や過去の運営経験などから売り場を検討していたところ、ビッグデータに基づいてトレンドを分析した。さらに、たとえば「腕時計ブランドAが好きな人はスポーツブランドBも好きそうだ」といった併売分析を検索ビッグデータをベースに行うことで、実際の売り場づくりに取り入れていく予定だ。
ANAセールスでは、ヤフーのビッグデータから、3週間先の週次旅客数の予測が可能となった。ANA関連データと「地名+ホテル」のようなキーワードの検索数を使った予測を複数のモデルで検証したところ、一部の路線においてベースラインより予測誤差を26%削減することに成功した。
京都市及び(公社)京都市観光協会では、昨年に紅葉時期の嵐山地域において観光需要を予測し「観光快適度」の見える化により観光客の分散化を図る実証事業を実施した。その結果を踏まえ、2019年9月よりヤフーのビッグデータを活用し、京都市全域の観光快適度を表示する取組を開始した。
さらに「祗園・清水エリア」、「嵯峨・嵐山エリア」、「伏見エリア」の3つのエリア内の各観光スポットにおける時間帯別の観光快適度の表示を開始した。
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