日本の産業構造は、複雑なバリューチェーンにまたがるため、個々の企業の改革努力だけでは解決困難な課題が多いという特徴がある。
三菱商事株式会社と日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、DX企画・プロジェクト支援事業、およびDXソリューション開発・提供事業を展開する共同出資会社「株式会社インダストリー・ワン」(以下、Industry One)を2021年度に設立することを発表した。資本金は9億円としており、持ち株の比率は、三菱商事が51%、NTTが49%となっている。
Industry Oneでは、三菱商事及びNTTの強みである産業知見とICT技術を集約し、広くパートナー企業とも連携していきながらDXの土台づくり(企業個社のDX加速化、デジタルを活用した企業間プロセスの最適化)からデジタルビジネスの創造までを一貫して実行支援していく。
また、両社は食品流通分野における食品卸の在庫最適化ソリューションの開発を進めている。具体的には、小売、卸、メーカーの在庫、受発注、需要予測等、企業内や企業間に散在するデータと、気象予測情報等の外部データをデジタル技術でシームレスかつセキュアに連携する基盤を株式会社NTTデータと共同開発した。
さらに、エムシーデジタル株式会社と共に開発した独自AIエンジンを用いた約10,000商品を対象とした実証実験において、物流センターの在庫を平均約3割(一部カテゴリでは最大4割)削減し、トレードオフの関係にある欠品率も総じて低下させることに成功したという。
2021年度より、三菱食品株式会社が運営する株式会社ローソン向け物流センターを対象に同ソリューションの提供をめざしており、同社と共に他企業向けに順次展開する予定とのことだ。
また、両社はIndustry Oneと共に、ブロックチェーン等の先端技術を活用した企業間のスマートコントラクト(※)についても、2021年度より実証実験を開始する予定である。在庫最適化ソリューションの提供と併せて、食品流通業界における食品ロスや人手不足等の課題を解決することで、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた食品流通産業の持続的な発展に寄与することをめざす。
加えて、三菱商事は産業DX推進に向け、積極的に外部企業とも連携してDXサービスを共同で開発・提供していく方針であり、東芝テック株式会社、富士通株式会社、株式会社ラキールと協業を検討することに合意した。各社の専門知見とDXサービスを掛け合わせることで、対面する各産業の課題解決や事業構造の変革を支援していく。同取組みにつき、将来的にはIndustry Oneも連携を図っていく方針とのこと。
なお、両社は、2019年12月に産業DX推進に関する業務提携について発表しているが、Industry Oneの設立はその取組みの一環である。
※ スマートコントラクト:ブロックチェーン等のデジタル技術を用い、契約の条件確認や履行までを自動的に実行するソリューション。
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