IDC Japan株式会社は「国内エンタープライズインフラ市場シェア、2020年:SoR、SoE/SoI(※1)市場の競合分析」を発表した。
IDCでは、この調査でサーバーとエンタープライズストレージシステム(ExternalおよびStorage Expansionのみ)を合算した国内エンタープライズインフラ市場のベンダーシェアと競合状況の分析を行っている。
これによると、2020年の国内エンタープライズインフラ市場は、前年比5.4%減の6,701億300万円だった。同市場は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴う経済活動の停滞や移動制限などによって低迷した。
ベンダーランキングを見ると、1位が富士通、次いでNEC、デル・テクノロジーズ、HPE、日立製作所、IBMの順だった。上位6社の前年比成長率を見ると、富士通およびデル・テクノロジーズの2社がプラス成長、他の4社がマイナス成長となった。
国内エンタープライズインフラ市場の売上額構成比をシステムタイプ別に見ると、SoR(System of Record)が全体の38.1%、SoE/SoI(System of Engagement/System of Insight)が11.8%、Otherが50.2%を占めた。SoRが前年比10.5%減の2,550億1,500万円、SoE/SoIが同13.0%減の788億4,600万円、Otherが同1.1%増の3,362億4,200万円だった。なお、本文のOtherとは、システムタイプのうち「システム基盤プラットフォーム(※2)」「機器/装置制御システム(※3)」を合算した支出額を指す。
COVID-19の影響で市場全体が低迷するなかでOtherがプラス成長したのは、公的機関向け大型スーパーコンピューターの出荷が背景にある。2020年には理化学研究所向け「富岳」、宇宙航空研究開発機構向け「JSS3」、海洋研究開発機構向け「地球シミュレーター」などの大型案件があり、Otherに集計されている。
また、配備モデル別に見ると、Public Cloudが前年比4.0%減の1,219億5,400万円、Private Cloudが同6.5%減の581億7,100万円、Traditional(Non Cloud)が同5.6%減の4,899億7,900万円だった。配備モデル別の売上額構成比では、Public Cloudが上昇し、Private CloudおよびTraditional(Non Cloud)が低下した。
COVID-19がもたらした行動様式の変化はオンラインミーティングソリューションやビデオ配信などへの需要増をもたらし、Pubic Cloudサービスに対する需要が増加したとIDCではみている。
なお、上述した公的機関向け大型スーパーコンピューターの出荷はTraditional(Non Cloud)に集計されている。同スーパーコンピューターの出荷を控除すると、Traditional(Non Cloud)の前年比成長率はマイナス15.0%~マイナス16.0%程度であったとIDCでは試算している。
国内エンタープライズインフラ市場は「生産年齢人口の減少」「それに伴う自動化/省力化/効率化の推進」「COVID-19がもたらした行動様式の変化」といった要因から、システムタイプ別に見ると成長性が異なる。具体的には、SoRが弱含み、SoE/SoIおよびOtherは需要の伸びを期待できる。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ グループマネージャーの福冨里志氏は「SoE/SoI向けエンタープライズインフラビジネスでは、AIやML/DL(Machine Learning/Deep Learning)関連ソリューションを活用したITインフラ製品のポートフォリオを充実させ、導入実績や導入効果を顧客に訴求することの重要性が高まっている」と分析している。
※1 SoR(Systems of Record):法人や個人事業主の事業活動(商取引)や公的機関における公的サービス提供活動の記録や処理を行うシステム。
※1 SoE(Systems of Engagement):エンゲージメントには外部エンゲージメントと内部エンゲージメントがある。外部エンゲージメントは主に顧客および取引先との関係性である。内部エンゲージメントは社員や従業員との関係性である。ここでは顧客エンゲージメントに関わるシステムのみをSoEとして扱う。
※1 SoI(Systems of Insight):収集したさまざまなデータの分析を通して、洞察(インサイト)を得るためのシステム。
※2 システム基盤プラットフォーム(SIP:System Infrastructure Platform):システムを安全かつ安定的に連携して運用するためのシステムや、コミュニケーションや共通ファンクションを提供するためのシステム。なお、科学技術計算やアプリケーション開発などの用途も同システムタイプに含める。
※3 機器/装置制御システム(A/DCS:Apparatus/Device Control Systems):医療機器、キオスク端末、ビルファシリティ管理、自動倉庫システム、ファクトリーオートメーションにおける産業用ロボットや工作機械などの制御を主目的とするシステム。
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