エネルギーの安定供給や効率化による環境負荷低減などの観点から、スマートガスメーター市場は大きな伸張が予測されている。特に欧州では、2008年にEUが掲げた環境目標20-20-20(トリプル20)の導入をきっかけに、生活インフラのスマート化が義務づけられるなど各国で導入が進んでおり、業務の効率化、計測データの活用による新たなサービス提供などが期待されている。
スマートガスメーターには、電池のみで長期駆動できる低消費電力性能と高信頼性の両立が求められる。近年、通信キャリアの基地局を用いたNB-IoT(※)など省電力に配慮した通信ネットワークの採用が加速しているが、通信キャリアとメーターごとに契約しなければならないなど、運用面での煩雑さや負担増といった問題も表面化している。
パナソニック株式会社は、日本国内で培ったガスメーターデバイス技術を生かし、スマートガスメーターの導入が進む欧州において、2021年秋からガスユーティリティサービスの提供を開始する。詳しい特長は以下の通り。
- アドバンスドガスサービス
- 通信状態
- 電池の寿命予測
- ガス管の異常検知
- ガスの遮断復旧サポート
- コネクティビティサービス
- 遠隔検針サービス
同サービスは、169MHz帯通信/NB-IoT通信機能一体型コントローラー、独自のガスメーターデバイス(弁、圧力センサー、感震器)、そしてスマートメーターから送られてくるログデータを解析・活用した各種サービスを、ワンストップで提供する。
各家庭に設置したメーターの通信状態のモニタリングにより、通信障害発生時の原因特定と早急な復帰をサポートする。また、最適な電波強度に個別制御することで、電池を長持ちさせる。
コントローラーに内蔵する電池の電圧、電流および温度をモニタリングすることで劣化状態を診断。寿命予測により計画的に電池交換を実施できるほか、地図上に残量を表示することで、地域毎の傾向や課題の把握が容易になる。
ガスメーターの計測データとガス管情報を組み合わせることで、地域全体のガスインフラの状態を把握することができる。供給圧力データの変動から供給圧の低下地点を導出し、ガス漏れなどガス管の異常をいち早く検知する。
地震発生時、ガスメーターの供給圧力データに基づいて「正常」「遮断」「異常発生」の状況を地図上に表示して、ガスインフラの状況を可視化する。地震発生後の安全で効率的な復旧作業を支援する。

eSIM(Embedded SIM:組み込み型SIM)の採用で、最適な通信キャリアの通信網を選択したNB-IoTの接続サービスを一括提供する。ガス会社は通信キャリアとの個別契約不要で、広域かつ安定した通信環境でスマートガスメーターの利用が可能となり、ガスインフラの運用管理やサービス提供に特化できる。
既存のガスメーターに外付けのNB-IoTユニットを組み合わせるだけで、遠隔検針が可能になる。ガスメーターの個別IDと抽出期間を指定すると、クラウドで一括管理されたデータから対象メーターの検針データや異常データを出力する。
今後パナソニックは、同サービスを2021年秋にイタリアから導入を始め、欧州域内で広げていく予定としている。
※ NB-IoT:Narrow Band IoTの略。180kHzと非常に狭い帯域幅を使用し、通信速度は上り62kbps/下り26kbps、狭帯域かつ低速のため消費電力が少なく電池による長時間駆動が可能。
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