小売業界では、コロナ禍によるネットビジネスの台頭を受け、実店舗ではこれまで以上に特徴ある店作りや顧客体験作りなど、来店理由を創出するための企画が重要性を増している。一方、経営層が抱える課題の上位は「人材確保」「育成対策」となっており、既存従業員のなかで、特にベテラン社員の工数をいかに確保し、教育や指導など高度な業務にシフトするかが、喫緊の課題となっている。
また、従来の機械学習などのAIを活用した予測は、専門家やデータアナリストが分析を行うことが多く、中小企業では大企業に比べ導入が進んでいない現状がある。一方で、中小企業のAI導入による推定経済効果は、2025年までに11兆円と試算されており、AI技術の利活用が進めば、企業の生産性の抜本的改善が期待できると考えられている。
コニカミノルタジャパン株式会社は、小売店が行う在庫管理や発注業務、販促業務の効率化・高度化に向け、AIを活用した需要予測を提供するクラウドサービス「AIsee powered by CJ-DMP」を発売することを発表した。
同サービスは、機械学習の技術を用いて、POSによる購買データや顧客データ、商品データ、販促イベントと気象などの外部データから「在庫予測」「販売予測」「来場者予測」など、顧客の将来の需要を予測することができる。詳しい特長は以下の通り。
- 高度なプログラミング知識なしで、需要予測モデルの利用が可能
- 自社保有データの活用で高度な業務へのシフトを後押し
自動モデル構築により、閲覧したい予測結果を選択するだけの操作となるため、専門スキルがない担当者でもPOSデータや顧客データ、商品データ、販促イベントなどのデータを入れるだけで、簡単に将来の需要予測が利用できる。まずは「在庫予測」「販売予測」「来場者予測」の自動モデルから提供を開始する。順次、顧客からの要望を聞きながら予測モデルを追加していくとのこと。
在庫予測データと販売予測データを組み合わせることで、売れる商品や最適な在庫が把握できより高度な仕入れ判断が可能になる。これにより、機会ロスや廃棄ロスといった在庫ロスの削減を実現する。また、複数店舗全体の在庫を把握することで、各店舗への商品の振替など在庫回転率を上げ、経営の効率化を図る。さらに、来場者数予測を用いれば、最適な人員シフトによる人件費の削減など、データを用いて効率的なコントロールが可能だ。

予測結果に基づいたデータは、店舗内のスタッフ同士で議論が活性化され、様々な利益をもたらす事になる。ただし、データの読み取り方が一定になってしまう可能性がある。そうした不安に対し、同サービスは今後、他の視点での利点やデータの読み方など、データアナリストによる「データ分析」メニューを別途提供していく。
また、データ収集業務は、POS・発注・在庫のデータや、商品などのマスタを整理し、「データ」から価値のある材料としての「情報」に加工する作業をおこなう。こういった業務負荷の高い作業の生産性向上のために、他システム連携機能やデータ加工する機能を用意するとともに、「情報」から役に立つ「知識」へ広がるレポートなども提供する予定としている。
さらに、AI予測は、大量データで解析することが前提になっている。つまり小規模店舗と大規模店舗では、予測結果としては、売れ筋の考え方も異なるということになる。そこで、データをアライアンス化(共有)することによって、地方や中小規模の小売店が個々では実現できなかった総合的なデータ分析により、予測精度向上を図る。
加えて、地域に根差した地元のお祭りや、花火大会などの特性を組み入れる機能も提供していくほか、店舗経営においての経験や知恵・勘をAIに組入れられる仕組みを提供する予定だという。
関連記事:需要予測に関して詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
需要予測とは?基本の手法や目的、製造業で活用できるシステムの種類などを解説
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。