千葉県はニホンナシの産出額、栽培面積ともに全国1位である。二ホンナシは海外からの需要も高まっているため、生産量や品質の向上に期待が寄せられている。一方で、農業全体の課題である高齢化・労働力不足により、その生産量は減少傾向にある。また、気候変動の影響による生育ステージのばらつきにより、作業適期の判断が困難になっており、生産量や品質に影響が生じている。
具体的な課題として、夏季に行う収穫作業は収穫台車を人力で押しながら果実を摘むため、労働強度の高い作業となっている。また、高品質のナシ生産に欠かせない病害虫の薬剤防除について、昨今の気候変動により適期実施するタイミングの判断が難しくなっている。さらには、開花の時期も年々早まっていることから、従来通りの生育予測では農繁期の雇用調整や出荷予測も困難になっている。
株式会社NTTデータ経営研究所と千葉県が代表機関を務めるコンソーシアム(千葉県ナシ栽培スマ農コンソ)では、千葉県市川市および成田市のナシ農園をフィールドに、ロボットやAI、ICTを活用したスマート農業技術の体系化に向けた実証事業を開始した。
同事業では、労働負荷の軽減や気候変動などへの対応のため、「ヒトを自動で追従する運搬ロボット作業車」「ほ場ごとの気象データに基づく病害発生予測と農薬散布適正化ナビゲーション」「ナシ園の棚下から画像を収集し、AIが生育解析を行うシステム」について実証する。
まず、ヒトに自動追従するロボット作業車を導入し、収穫、せん定枝回収・結束のほか、除草剤散布モジュールを搭載し、汎用利用する。また、作業者が装着したウェアラブル端末の心拍変化などから軽労化の効果を検証する。これにより、従来の人力で動かす収穫台車を電動のロボット作業車に代替し、汎用利用することで大幅な省力化を実現する。
これらにより、ほ場ごとの微気象データが自動で収集され、アプリで分かりやすく把握できるほか、微気象データ等から各ほ場に合わせた細やかな黒星病等の発生予測と、防除計画の立案が容易になり、使用する農薬の種類の削減(目標:通常38成分を26成分まで削減)に貢献する。
これにより、自動的に棚下からの画像を収集・分析をすることにより、生産者が感覚的に把握していた生育状況を、より客観的なデータとして把握することが可能となる。また、微気象データを活用した黒星病感染危険度情報や、棚下画像のAI生育解析結果をクラウド上で共有し、リモートで普及員から指導を受けられるほか、生産者同士の情報共有を可能とする。
※ 黒星病:糸状菌と呼ばれるカビが原因で、黒い斑点が広がり裂果が生じる病気。
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