レーザー光を物体に反射させ、戻ってくるまでの時間を計測して距離を測る「LiDAR」技術は、周辺環境にある対象物の形状および位置を瞬時かつ高精度に計測することができ、自動運転システムへの活用やインフラ監視への適用に期待が寄せられている。
そうした中株式会社東芝は、2021年に350立方センチメートル体積で計測距離200m、解像度1200×80の性能を有するLiDARの開発に成功した。
しかし、高度な自動運転と高精度なインフラ監視を実現するには、計測距離・画角・解像度・サイズにおいて、さらなる性能が必要だ。
特に、計測距離を伸長するには、レーザー光をより遠くまで届けなければならない一方、JIS規格JIS C 6802で定められているアイセーフに準拠する必要がある。また、レーザー光の強度を増強するには、一定の制約がある。強度を上げるには射出幅を大きくする必要があり、投光器のサイズも大きくなることが課題だったという。
そこで東芝は、LiDARにおいて、計測装置の一部である投光器のサイズを1/4にする実装技術と、計測可能な距離を向上させる投光器制御技術を開発した。
開発した投光器制御技術は、小型化した2台以上の投光器からのレーザー光を高精度に制御することで、人の目に害を与えないレーザー光強度を保つアイセーフ基準に準拠しながら、LiDARの長距離計測性能や広角性能の向上を実現する。
投光器の数や配置を変えることで、用途にあわせて計測範囲をカスタマイズすることが見込めるという。

東芝は今後、LiDARのさらなる高性能化(計測距離の伸長・高解像度化・小型化)を進め、2023年度の実用化に向けて研究開発を進めていくとしている。
また、ロボティクス・ドローンやセキュリティなどの幅広い分野に展開できるよう、ソリッドステート式LiDARの開発も進めていくという。
技術の特長
投光器を小型化する実装技術
小型投光器と新しいモータ制御基板の回路図のレイアウトを工夫することにより、基板の面積を60%低減。さらにモータ制御基板の実装について、筐体設計と連携し、基板が筐体内の各部品の隙間に入るよう高密度にレイアウトしたことで、筐体サイズの小型化に成功している。

また、レンズの配置を工夫し光路を折り曲げることで、従来と同じ光路長を確保しつつも、レンズ郡の体積を小さくした。その結果、投光器1台の体積を71cmにすることができた。

複数投光器内のモータの同期制御技術
レーザー光を複数の投光器から同一方向で同時に射出し、レーザー光を重ね合わせることで、アイセーフに準拠しながらレーザー光の強度を増加させ、計測距離の伸長を実現。今回小型化に成功した71cmサイズの投光器を2台用いることで、計測装置全体の大きさを206立方センチメートルに維持しつつ、解像度1200×84の画質および300mの計測距離が可能となった。

また、独自のモータ制御技術により、回転角度・回転速度・電流を制御する3重制御ループを開発し、複数ポリゴンミラーの同期のずれ(角度)を0.02度以下に抑え、高精度な制御を実現している。
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