経済産業省では、人手不足が深刻化している、施設管理、小売、食品製造の3分野について、ロボットのリーディングユーザーを核に、システムインテグレーター等が集い、ロボットが稼働しやすい環境(ロボットフレンドリー)に向けた検討を行う場として、2019年11月に「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース(TF)」を立ち上げ、その検討結果を2020年3月に取りまとめている。
食品製造分野においては、特に惣菜・お弁当などの中食の盛付工程は自動化の難易度が高く、現在はその工程の大半を人手で行っており、人手不足への対応、労働生産性向上、工場における三密(密閉・密集・密接)回避のためには、盛付工程を自動化し、無人化・省人化を目指すことが必要との結論に至った。
柔軟・不定形の食品を迅速に見栄え良く盛り付けることは、ロボットにとって極めて難易度の高い作業であり、それをロボットで実現することとなれば高度な技術を活用した高価格なものとなり、現場に導入しづらい。
そこで、2021年9月に経済産業省が推進する「令和3年度 革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」にて事業の代表として採択された一般社団法人日本惣菜協会は協力会社とともに、惣菜盛付ロボットシステムの開発と現場導入、量子コンピュータによる惣菜作業者シフト計算の実用化開発を進めてきた。
今般、惣菜の盛付工程を自動化するロボットを現場に導入したことを発表した。また、量子コンピュータを用いたシフト作成システムの現場運用、およびAIによる注文量予測システムに関する取り組みを開始した。
惣菜盛付ロボットシステムの取り組みにおいては、株式会社ア-ルティの惣菜盛付協働ロボット「Foodly」を株式会社ヒライ、藤本食品株式会社、イチビキ株式会社の現場に導入した。さらに、生産性重視の産業用ロボットを使用した惣菜盛付ロボットシステムを株式会社FAプロダクツ、株式会社オフィスエフエイ・コム、日本サポートシステム株式会社、コネクテッドロボティクス株式会社を中心に開発を進め、マックスバリュ東海株式会社の惣菜製造工場の製造現場に2022年3月に実導入した。
今まで、野菜などの不定形物や粘着性の高いポテトサラダのような食材をロボットが扱うのは技術的に難しいとされていた。また少量多品種で、曜日や時間帯によって段取り替えが多い惣菜製造工場では自動化が進んでいないという現実があった。
惣菜盛付ロボットを活用することで、食品コンテナの惣菜を指定されたグラム数で掴んで、製品用トレイに盛り付けることができる。例えば1パック100g~115gのポテトサラダの場合、その所定の重量以内に盛り付けが可能だ。ファミリー向けの大サイズや、一人暮らし向けの小サイズなどサイズ違いの盛り付けも、タッチパネルで指定して変更することができる。また、惣菜製造工場の建て替え等を行わずに、既存の製造工程ラインに導入することが可能になった。
さらに、既存の製造工程ラインのスピードに対応させて、スピーディーに惣菜を生産することができる。ポテトサラダであれば、惣菜盛付ロボット1台で1人分の作業を行うことができる。一般的な惣菜製造工場の1ラインに4台セットすることができ、現状は1時間で1000食分の生産を行う事ができるとのことだ。
また、ロボット1台で複数品種の惣菜盛り付けに対応可能となった。例えば、粘着性の高いポテトサラダとマカロニサラダなど、食材が変わっても品種と重量指定をするだけで切り替えを行う事ができる。多品種製造の現場にも対応すべく、食材に合わせた掴み方やロボットの動かし方で食材の余りが発生しにくいシステムを提供する。
そして、製造工程を担当する現場の作業者が専用アプリで商品を選択すると、商品の切り替えが多い惣菜盛付工程の段取り替え作業をスピーディーに行うことができる。加えて、迅速に段取り替えができるようにハンドの着脱が簡単にできるように工夫されている。惣菜を入れた食品コンテナやハンドは取り外して洗うことができるので、製造工程を清潔に保つことができる。
他方、シフト作成システムと注文量予測システムに関する取り組みでは、株式会社グルーヴノーツが自社のクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」をマックスバリュ東海と株式会社グルメデリカに導入し、シフト作成システムの現場運用を開始した。また、株式会社ニッセーデリカでは、注文量予測モデルの活用に取り組んでいる。
今回の運用にあたり、グルーヴノーツと日本惣菜協会はまず課題に応じてモデル企業を定め、業界に共通する要件の抽出・整理を行った。この共通化・標準化した要件をもとに、量子コンピュータによる月別や日別のシフト最適化モデルとAIによる注文量の予測モデルの構築・改善に取り組んだ。

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