2022年4月、IoTNEWSの会員向けサービスの1つである、「DX事業支援サービス」の会員向け勉強会が開催された。本稿では、その中から東京ガス株式会社 内藤健一郎氏のセッションを紹介する。
製造業をはじめとした多くの産業分野で、現場の「見える化」に向けた取り組みが、注目を集めている。監視・制御、データ取得によって、課題発見・業務効率化を行うことがDXを進める上で重要となる。 そこで、東京ガス株式会社(以下、東京ガス) ソリューション共創部 Joy事業グループ 内藤健一郎氏に、監視システムを容易に構築できる開発ツールである同社のサービス「JoyWatcherSuite」について、事例を交えながらご講演いただいた。
東京ガスのデジタル化の取り組み
東京ガスは、2021年12月28日に日本たばこ産業株式会社(以下、JT)グループのジェイティ エンジニアリング株式会社(以下、JTE)よりJoyWatcherSuiteを含むパッケージソフトウェア製品を事業譲受し、2022年1月より販売を開始した。 JoyWatcherSuiteは、SCADAと呼ばれる産業制御システムである。
※SCADAとは、産業用システムの一種で、施設内の機器の状態を監視・制御し、「見える化」を行う。また、設置されたセンサーによってデータを収集・分析し、一元管理する。
東京ガスのグループ経営ビジョン「Compass2030」で掲げる「価値共創のエコシステム構築」を目指し、JoyWatcherSuiteを通じてエコシステム構築を推進しているのだという。 また、Joy事業グループのミッションとしても「すべての事業者様のデジタル化のきっかけとなるインフラをつくる」ことを掲げており、リーズナブルで扱いやすいソフトウェアであるJoyWatcherSuiteの提供に注力している。
東京ガスの提供するJoyWatcherSuiteの概要

JoyWatcherSuiteは、稼働監視のパッケージソフトウェアで、機械・装置単体から生産工場やプラント、ビル設備など様々な用途・規模で構築することができる。 使用する入出力機器の数であるI/O点数に関しては、膨大な数を網羅しており、I/O点数の非常に多いプラント設備、ビル設備などにも使用できる。小規模から大規模まで様々な監視システムで利用できるのだという。
JoyWatcherSuiteの開発経緯
JoyWatcherSuiteは、他社製品のSCADAに感じた課題感を解決したい、という想いから生まれた製品なのだという。 他社が開発する一般的なSCADAには4つの課題がある。 1つ目は、価格だ。数十万円程度の高価な製品が多く、I/O点数が増すごとに高価になる。 2つ目は、使い勝手だ。プログラミングを習得しないと、システムをカスタマイズすることが難しく使い勝手に課題がある。 3つ目は、サポート対応だ。SCADAは海外製品が多く、不具合や問い合わせへの回答に時間がかかる。 4つ目は、使わない機能が多いことだ。ユーザの要件とマッチしない機能が多く付属しており、オーバースペックとなっている。

上の図のように、従来SCADAのもつ課題を解決し、欲しい機能を備えたSCADAが、JoyWatcherSuiteなのだという。
JoyWatcherSuiteの機能

JoyWatcherSuitreは、監視・制御画面は専用エディタで作成可能で、ノーコードで構築できる。パラメータ形式の設定でほとんど構築できるため使いやすく柔軟なのだという。

グラフィックやアニメーション表示も可能。多彩なグラフィック機能を持ち、流れ線やパイプなどの線種も再現できる。また、用意された600種類以上の工程図部品を流用することもできる。

リアルタイムデータやデータベースに蓄積されたデータを読み込み、様々なグラフを描画することができる。CSVファイルで保存することも可能だ。 その他にも、装置の稼働状況を警報音やメールによって通知するイベント機能や、ログデータをEXCELに転記し日報、月報、年報を作成する帳票作成機能など、様々な機能を備えている。 JoyWatcherSuiteはユーザの機能要望を反映させ、絶えずバージョンアップを行っている。低価格、迅速対応、豊富な標準機能などの特長を持ち、SCADA製品国内シェア55%を誇っているのだという。
※(株)富士キメラ総研「業種別ITソリューション市場 2019年版」SCADA販売本数シェアより
お客さまへの導入事例
東京ガスでは、顧客生産工場のユーティリティ設備監視にJoyWatcherSuiteを使ったシステムを提案している。ルーターを設置し、収集したデータを東京ガスのクラウドにアップロードしてもらうことで、センサー情報を分析し、省エネに繋げる取組みをオプションとして提供することも可能だという。 内藤氏は、「JoyWatcherSuiteを通じて、DXを推進するきっかけを作っている。より多くの事業者様のインフラをつくり、労働集約的で属人的な業務を改善し、生産性向上を実現したい。」と講演を締めくくった。
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大学院卒業後、メーカーに勤務。光学に関する研究開発業務に従事。新規照明技術開発を行う。2021年4月に入社し、DXの可能性について研究中。