インフラ保全、災害対策、交通渋滞解消、環境衛生保全など、街中の映像データを効率的に収集・蓄積することで解決につながる社会課題は数多く存在する。しかし、これらの課題解決に役立つビッグデータとして活用できるほどの膨大な映像データの収集・蓄積をユーザが個々で実現することは、コストや人的リソースの点で現実的ではない。
そこでNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、街中を走行するモビリティから映像データを効率的に収集・蓄積し、そのデータを活用するための映像分散管理プラットフォームサービス「モビスキャ」を、2024年度上期から提供を開始する。また、「モビスキャ」を活用したソリューション「AI道路工事検知ソリューション(仮称)」も同時に提供開始予定だ。
「モビスキャ」は、自動車などのモビリティに搭載したドライブレコーダから取得した街の映像を、効率的に蓄積する映像分散管理プラットフォームサービスだ。
NTT Comが「モビスキャ」を搭載したドライブレコーダをモビリティパートナーに貸与し、タクシー会社やバス会社などのパートナー企業が通常業務としてモビリティを運行させる中で収集されたドライブレコーダからの情報を、ドコモが収集する。
そして、収集した映像に含まれる人物の顔などに対しては、マスク処理を行うなどの個人情報保護処理を施したのちに蓄積し、データ活用パートナーに提供する。

複数のモビリティから街中の映像データを逐次収集するため、データ量が膨大となるが、それらすべてをサーバにて蓄積することはコスト面から難しく、2023年10月に特許を取得した技術を活用し、映像データの分散管理を実施する。
具体的には、複数のモビリティから同じ場所の映像データを受け取った際、それらの中から最適なデータを選び出して保存する。最適なデータは映像を取得した時間帯、ほかのデータ収集地点との距離、気象庁の天候データとの連携などにより選ばれる。
また、エッジAIによる物体検知判定で不必要と判断された映像データも、各ドライブレコーダのSDカードに分散保存され、一定期間保持する。サーバでは、各SDカードにて保持する映像のサマリー情報を一覧で管理することで、期間内にデータ活用パートナーからの新たな要求やニーズが発現した際には、適宜データ提供できる仕組みとなっている。
さらに、地域内を走る複数のモビリティパートナーから映像データ収集を行うことで、より網羅的で高品質な映像データを、複数のデータ活用パートナーが活用できる。
「AI道路工事検知ソリューション(仮称)」では、街中の映像を解析することで、実際の街中を走行して目視確認していた作業を代替することが可能となる。
収集した映像に対しては、2段階でのAI判定を行うことで、AIの精度を担保しながら不必要なデータ通信を抑制する。データ収集時にエッジAIによって、事前に指定した物体が検知された場合のみ、映像をサーバへアップロードする仕様だ。
サーバAIでは、アップロードされた映像を分析・スコア化し、一定以上のスコアに到達した映像のみユーザに提供する。
具体的には、走行するモビリティに搭載したドライブレコーダに搭載したエッジAIで、工事用コーンを検知する。検知時点から前後5秒間の映像をサーバに送信し、サーバでは、受け取った映像を再度AIによって解析することで、工事看板やコーンバーなどをもとに映像をスコア化し、一定のスコアを超えた映像のみをユーザに提供する。
これにより、データ活用パートナーは、UI画面のマップから工事箇所の映像確認が可能だ。

今後は、データ活用パートナーと協業し、「モビスキャ」を活用したさまざまなソリューションや新しいユースケースを検討していく予定だ。例えば、電気業界向けの電柱の破損検知ソリューションや、自治体向けの道路のひび割れ検知ソリューションなど、各業界へ向けたソリューションを展開する予定で、混雑状況の把握、災害対策、開花状況の観測など、幅広い用途に応じた情報提供も検討していく。
そして、モビリティパートナーやデータ活用パートナー、技術パートナーとなるさまざまな企業・団体との協業することで、将来的には、自動車以外のモビリティや個人の端末で取得した映像を収集し、ユーザそれぞれが必要な情報を取得できる大規模な映像プラットフォームを目指すとしている。
なお、2024年1月17日~18日にドコモが開催する「docomo Open House’24」にて、「モビスキャ」を紹介する予定だ。
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