LiDARは、レーザー光を対象物に照射し、その反射光を捉えることで対象物までの距離や対象物の形状などを測定する技術だ。測定結果は三次元の座標情報を持つ点群データとなる。
製造現場において、データの蓄積による分析や最適化などにLiDARが活用されているが、データ処理量が大きいため、リアルタイムでデータ収集する場合には有線接続が前提となっている。そのため、クレーンなどの移動体や、山、港などの広域な環境ではLiDARの活用が難しいという課題があった。
こうした中、東京貿易テクノシステム株式会社(以下、TTS)とネットワンシステムズ株式会社は共創プロジェクトを実施し、「ローカル5Gを活用したLiDARレイアウトフリー化」の検証に成功したと発表した。
この検証では、無線によるLiDARでのデータ収集領域のレイアウトフリー化に向け、LiDARを使用した三次元データ作成におけるWi-Fi6とローカル5Gを比較した。
その結果、Wi-Fi6利用時はパケットロスが多発し、データを取得することができなかったが、ローカル5G利用時はパケットロスが発生せず、有線接続と同等の安定したデータ伝送が確認された。
つまり、ローカル5Gを活用することで、LiDARの無線化が実現できるということだ。
そして、この検証結果をもとに、製造現場での活用方法を想定したデモンストレーションを2025年1月から実施しているとのことだ。
このデモでは、LiDARの無線化で収集したデータの活用による侵入検知デモを実施している。
具体的には、ネットワンシステムズのイノベーションセンター「netone valley」内のローカル5G環境で、LiDARから得られる点群データとIPカメラ映像を合成し、デジタルツイン空間モデルを作成。このデジタルツイン空間モデルを使い、三次元侵入検知システムのデモを実施している。
例えば、デジタルツイン空間モデル上で製造現場の危険な場所への人の侵入を検知した際に警報を発し、製造レーンを即時に自動停止させるなどの安全性向上への活用方法を提示している。

三次元侵入検知システムでは、広範囲の監視や、カメラと被写体の間に物体がある場合の監視も可能だ。
また、無線化により、従来では設置が難しかった移動体への取り付け、例えば製造ラインのクレーンでの活用も可能となった。
さらに、人の動線の履歴や検知のデータを蓄積し、製造ラインの改善や生産性向上にも活用する事ができるとのことだ。
今後は、デモを通じてLiDAR活用による安全性向上・省人化の方法を提示するとともに、個別環境での活用の提案や構築の支援を進める計画だ。
加えて、共創活動を進める中で、港湾や水力発電に活用されるダムなどの広域な環境でのニーズがあることが分かったとし、海運業や電力事業においても省人化・生産性向上に貢献していくとしている。
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