株式会社アシックスと株式会社神戸デジタル・ラボ(以下、KDL)は、神戸市立科学技術高等学校とともに、神戸市立六甲山牧場におけるDXの可能性について検証した。
今回の実証事業では、時間に応じた歩数の記録や、受信機と連動することで、着用者の位置情報を取得できる、重さ約7gの小型BLEセンサ「TUNEGRID-Cube(チューングリッド・キューブ)」を使い、六甲山牧場で乳牛2頭を対象に、2022年8月から2023年1月までの約6カ月にわたり、生態管理に関する調査を行った。
牛は、妊娠・出産を経て、搾乳が可能な乳牛となるため、まず正確な発情期を知ることが重要だ。おおよその発情周期は知られているが、発情期は毎回異なるため、発情期が近づくと飼育員がたびたび確認する必要があった。
そこで、牛が発情期になると歩数が増加する傾向を利用し、乳牛に「TUNEGRID-Cube」を装着。発情期の検知・予測が可能かを検証した。
また、得られたデータは、アシックスおよびKDLの社員が講師となり、科学技術高校の生徒に分析方法をレクチャーして、生徒が主体となって分析・成果を発表するなど、IT教育授業にも活用された。
さらに、乳牛の行動分析目的で設置した受信機などのインフラ設備を活用し、牧場の活性化に向けた新たな活用手段の模索を目的とした、トレイルランニング、ウォーキングのタイム計測などのイベント開催や、場内への出入りを管理することで視覚障がい者や子どもを見守ることが可能かなどの検証も行った。
今回の実証結果から、「TUNEGRID-Cube」を使った乳牛の生態管理の調査では、発情期における歩数増加をとらえることができたほか、日々の歩数変動が少ないなど、異常値による病気の早期発見など、体調管理への有効活用も期待できることが確認された。
データを用いたAIによる予測分析では、予測値と実績値は高い一致を示したが、正確な発情期をAI予測するにはより長期間・多数のデータ収集が必要であることが分かった。
トレイルランニングなどのイベントでは、参加者から「起伏が激しく、コースとしての面白さがある」、「景色が良く、また牛の横を走るといった楽しみがあり、面白かった」などの声があがり、牧場関係者からは遊休地の有効活用や集客効果の向上など、牧場の活性化が期待できるとの評価を得たという。
見守り検証においては、受信機の設置場所を変えることで、見守り可能な範囲を可変させることができるため、屋内外での活用を目指していくとしている。
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